高機能バイオ炭「宙炭」を手掛ける株式会社TOWINGは、東京都中央卸売市場・大田市場を拠点に青果物仲卸を営む株式会社大治と共同で進めている環境負荷低減野菜『サスベジ』のテストマーケティングについて、2026年8月28日に進捗を公表した。2025年の秋冬作で付加価値の向上という成果を確認したことを受け、2026年の春夏作では栽培エリアと品目を拡大して市場調査を続けている。本取り組みは、東京都の吸収・除去系カーボンクレジット創出促進事業に令和7年度の農業分野として採択された実証事業の一環だ。

サスベジは、TOWINGの高機能バイオ炭である宙炭を用いて栽培した「東京野菜」を、環境負荷低減野菜として販売するものである。宙炭は、同社独自のバイオ炭前処理技術と微生物培養技術に農研機構の技術を融合させた農業資材で、バイオ炭に厳選した土壌微生物群を担持させている。土壌の健康状態を高めることで、化学肥料の削減や有機への転換を促しながら、作物の品質と収量を向上させる狙いを持つ。バイオ炭の農地施用はJ-クレジットの方法論としてCO2削減効果が認められており、カーボンクレジット創出の対象にもなる。

パートナーの大治は1949年の創業以来、東京都中央卸売市場を拠点に青果物仲卸を営み、約30年前から地場野菜のブランド化に取り組んできた。2016年に東京野菜普及協会を設立し、2017年には地場野菜のブランドとして「東京野菜」を商標登録している。自社物流網による直接納品体制や、低温物流センターでの品質管理により、高品質・高価格帯の商品供給を実現してきた実績を持つ。TOWINGは2022年から同社と業務提携し、都内農地への宙炭導入を進めてきた。

取り組みの経緯を追うと、2025年8月の事業採択を受け、東京都清瀬市のJA出荷者などへの説明を皮切りに生産者への普及活動が始まった。同年12月には清瀬市で水菜、小松菜、チンゲン菜の栽培を開始。2026年2月から3月にかけて都内のスーパーマーケットと飲食店で販売と提供がスタートし、同時期から5月にかけて栽培エリアが東京都東村山市、調布市、三鷹市、国立市へと広がった。6月以降はピーマン、ナス、枝豆といった夏野菜の出荷も始まっている。

実証の成果として示された数字は、小売にとって示唆が多い。2025年8月から2026年3月までの秋冬作では、販売数量が水菜1,584パック、小松菜390パック、チンゲン菜1,420パックとなり、生産者の手取りは通常品と比べて水菜が16%増、小松菜が20%増、チンゲン菜が15%増となった。店頭価格でも通常品比で水菜が39%高、小松菜が46%高、チンゲン菜が7%高で推移している。加えて、宙炭を施用した農地では従来の農地に比べて1.3倍から1.4倍の収量向上も確認された。環境負荷低減という付加価値が、実際の売価と生産者の収益の両方に反映された形だ。

続く2026年3月から6月の春夏作では、販売数量が大きく伸びている。水菜は12,421パックと秋冬作の8倍近くに達し、小松菜715パック、チンゲン菜2,620パック、ピーマン258パック、ナス1,688パック、レタス60パックとなった。品目の広がりと数量の伸びが同時に進んでいることが分かる。現在の取り扱いは、スーパーサカガミ清瀬店をはじめとする小売と外食だ。

背景にあるのは、地産地消による輸送距離の短縮と、バイオ炭による排出削減を組み合わせて付加価値を高めるという考え方である。実際に多くの取引で、他産地品を上回る価格での取引が成立しているという。両社は、環境負荷低減の取り組みを付加価値に変え、それに応じた取引価格で出荷できる環境をつくることで、生産者が安心してサステナブルな栽培に挑戦できる体制の構築を目指すとしている。

今後については、栽培エリアと品目の拡大を継続し、店舗での恒常的な取り扱いや、多品目展開による売場面積の拡大も視野に入れる。都内の小売・外食チェーンへの通年供給体制の構築が目標だ。あわせて、宙炭導入による生産者の収益向上効果の検証も進めていく。売場側から見れば、環境配慮を打ち出した青果が実際に高い売価で動いた事例として、今後の数字の積み上がりが注目される取り組みといえる。品目が葉物から果菜類へ広がったことで、季節をまたいだ棚の確保にも現実味が出てきた。単発の企画ではなく定番として置けるかどうかは、通年供給の体制が整うかにかかっている。