熱帯林行動ネットワークを事務局とするNGOネットワーク「プランテーション・ウォッチ」は、パーム油を利用する日本企業の取り組み状況を評価した「企業格付け2025年実績」を2026年8月19日に発表した。10回目となる今回、対象とした77社のうち回答があったのは38社で、全体の49%だった。業界別では、食料品販売、パン、外食サービスの回答率が低く、事務局はパーム油の環境社会問題に対する意識の低さを露呈する結果になったと指摘している。
この評価は2016年から継続的に実施されているもので、調査対象企業へのアンケート結果に基づき、NDPE方針の採択と実施状況を評価する。NDPE方針とは、森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロをサプライヤー企業に求める調達方針のことで、森林破壊や人権侵害に対処するためのグローバル・スタンダードとされている。対象はパーム油を利用する主要8業界の売上上位企業だ。
今回の結果では、NDPE方針を公表していると回答した企業、つまりB-評価以上の企業は昨年から5社増えて21社となり、全体の27%を占めた。搾油工場の一覧であるミルリストを公表していると回答した企業は、昨年から1社増えて13社、全体の17%だった。評価の内訳は、最も高いA-評価が1社、B+評価が2社、B評価が6社、B-評価が12社、C評価が10社、D評価が7社。39社、割合にして51%からは回答がなかった。
業界別に見ると、油脂、総合商社、菓子、インスタント食品が全体として取り組みを進めている一方、食料品販売は11社中2社、パンは8社中1社、外食サービスは8社中3社という回答状況だった。小売と外食が下位に並ぶ形になっている。
10年間の変化としては、前進も確認されている。2016年から2025年の間に、RSPO認証油を取り扱っていると回答した企業は全体の10%から48%へ、NDPE方針を公表していると回答した企業は6%から27%へと増加した。とくにRSPO認証については、2025年の回答企業のうち97%が調達していると答えており、日本におけるスタンダードになりつつある状況だという。
ただし事務局は、認証だけでは不十分だという立場を明確にしている。RSPO認証油とされる原料であっても、その大半はマス・バランス方式によるもので、認証農園に由来しないパーム油が混入している。そのため、認証制度に頼るだけでは生産国で起きている環境・社会問題に十分対応できないとする。必要なのは、NDPEを明記した調達方針を策定し、搾油工場や農園までのサプライチェーンを開示したうえで、製品レベルではなくサプライヤー企業レベルで評価することだという主張だ。
小売や外食にとって、この調査結果の意味は2つある。1つは、回答しなかったこと自体が公表されるという点だ。無回答は39社に上り、その事実が業界別の集計として示されている。取り組みの中身以前に、問い合わせに応じているかどうかが評価対象になっている構図といえる。
もう1つが、パーム油の使われ方の広さである。パーム油は食用油としてだけでなく、菓子、インスタント食品、パン、日用品と幅広い商品に使われている。自社でPB商品を展開している小売にとっては、原料調達の話が直接自社に関わってくる。惣菜や揚げ物を店内調理している場合も同様だ。仕入れる商品の背景まで説明を求められる場面は、今後増える可能性がある。
評価の詳細は、プランテーション・ウォッチのウェブサイトで公開されている。なお同事務局は免責条項として、この評価が2026年1月から3月に実施したアンケートの回答に基づいており、発表時点で企業の取り組みに変化が生じている可能性があると付記している。
調査を行う側が求めているのは、方針を掲げることそのものではない。調達先のサプライヤーに方針の遵守と報告、独立した検証を求め、守られていない事例の情報を集めて是正していくという実践の部分だ。宣言から運用へ、という段階に議論が移っていることが読み取れる。
プランテーション・ウォッチは、熱帯地域での単一作物の大規模栽培が抱える問題について情報提供し、責任ある原料調達を目指す取り組みを支援するNGOネットワークだ。熱帯林行動ネットワークのほか、地球・人間環境フォーラム、ウータン・森と生活を考える会、レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部、国際環境NGO FoE Japan、サラワク・キャンペーン委員会、メコン・ウォッチの7団体が協働している。