フードテックスタートアップのASTRA FOOD PLAN株式会社は、食品メーカーや外食企業などが抱える「かくれフードロス」の課題解決を一気通貫で支援する総合コンサルティング事業を、2026年8月3日に開始した。工場で発生する未利用素材の可視化から、乾燥による素材評価、商品化、PR活動までをワンストップで支援する内容だ。
同社が「かくれフードロス」と呼ぶのは、公式統計に表れないまま廃棄されている未利用食材のことである。政府が食品ロスとして公表し削減の対象としているのは、コンビニエンスストアや量販店の売れ残り、家庭での食べ残しなど、本来食べられるにもかかわらず廃棄される製品に限られ、その総量は令和6年度で年間約461万トンだ。一方、農業や食品の製造・加工の現場では、規格外・余剰農作物や加工過程で生じる野菜の端材といった未利用素材が年間約2,000万トン発生しているという。一般的な食品ロスのおよそ4倍にあたる。
新事業のサービスは5つのメニューで構成される。1つ目が「かくれフードロス診断」だ。発生している工場を訪問し、発生状況、現在の廃棄方法、種類、量を確認してレポートにまとめる。まとめて廃棄されているために正確な量を把握できていない状態を、数字として見える形にする。あわせて分別の方法や、食材として衛生的に取り扱う方法についても助言する。
2つ目が「JOSENテスト・素材評価」。同社のラボで実際に素材を乾燥させ、加工適性を確認するとともに、栄養価や風味など食品原料としての価値を評価し、活用イメージを提案する。3つ目が「商品化プロデュース」で、乾燥した原料をベースにした加工食品を、レシピ開発から専門パートナーと連携したOEM製造まで伴走支援する。自社にアップサイクル商品を開発するリソースがない企業を想定したメニューだ。
4つ目が「メディア露出支援」で、開発商品や取り組みのPRをサポートする。プレスリリースの作成やイベント開催を支援し、メディア露出につなげる。広報のリソースがない、あるいはアップサイクルの取り組みをどうアピールすればよいか分からないという課題に応えるものだ。そして5つ目が「JOSEN導入サポート」。工場への装置導入に向けて、コストシミュレーションや設置環境の整備についてアドバイスする。設備投資を何年で回収できるか分からないという不安に対し、前段の4メニューの結果から数字を示す構成になっている。
軸となる「JOSEN」は、10秒で食品を乾燥・殺菌する独自開発の装置だ。数百度の高温スチームである過熱水蒸気を用いることで食材の酸化を抑え、栄養価の損失と風味の劣化を防ぐ。食材によっては旨味成分が増加し、ビタミンEやβ-カロテン、葉酸などの栄養価が熱風乾燥と比べて高いことも分かっているという。ボイラーレスの過熱水蒸気発生装置により、エネルギー効率の高い連続式の加工を実現し、従来型乾燥技術のコスト面の課題をクリアしたとしている。
実績としては、吉野家との協業が代表例だ。吉野家の野菜加工センターへの装置導入が決まっており、年間約250トンの玉ねぎ端材のかくれフードロスをゼロにすることを目指している。この玉ねぎ端材から生まれた「タマネギぐるりこ」を軸に、同社は自社ブランドの調味料も展開している。通常の乾燥玉ねぎの約135倍の香りを活かした商品で、公式サイトや小売店舗で販売されている。素材検証は卵の殻から飲料の搾りかすまで200種類以上に及び、素材ごとの乾燥条件や粉末の特性、食品・肥料・飼料といった用途適性のデータを蓄積してきた。
事業拡大の背景について、代表取締役社長の加納千裕氏はコメントのなかで、これまで「いきなり設備導入は難しい」「まずは商品開発から試したい」「リソースや知見が足りない」という要望を数多く受けてきたと述べている。今回のサービスは、そうした課題に対する駆け込み寺として、かくれフードロス削減のための事業を伴走支援するものだという位置づけだ。コンサルティングを起点に、将来的な装置導入による継続的なアップサイクルの仕組みへつなげる狙いも示している。
惣菜やカット野菜を自社で加工している小売や外食にとって、端材の発生は日常的な話だ。廃棄は環境負荷であると同時に処理費用でもある。まず量を数字にするという入口の置き方は、取り組みを始めやすくする設計といえる。