小売業界において、「CX(Customer Experience=顧客体験)」の重要性が高まっています。

消費者と小売企業との接点は、実店舗だけではありません。EC、スマートフォンアプリ、LINE、SNS、メール、カスタマーサポートなどへ広がり、商品を知ってから購入し、その後再び店舗やブランドを利用するまでの「体験全体」が、企業を選ぶ理由の一つになっています。

こうしたなか、小売企業ではCDP・CRMによる顧客データ活用、アプリ・OMO、パーソナライゼーション、VoC、コミュニティ、店内行動分析など、さまざまなテクノロジーを活用したCX改革が進んでいます。

本記事では、単にCX関連サービスを網羅するのではなく、小売企業への導入・活用実績が公開情報から確認できるソリューションを厳選しました。

各サービスについて「サービス概要」「小売企業の実名事例」「具体的な取り組み」「確認できる成果」の4つの視点から紹介します。

小売業界におけるCXとは

CXとは「Customer Experience」の略で、日本語では「顧客体験」と訳されます。

店舗での接客だけではなく、商品を知る、Webサイトで調べる、ECで比較する、アプリで在庫を確認する、店舗を訪れる、商品を探す、購入する、問い合わせる、再購入するといった、顧客と企業・ブランドとの一連の接点から生まれる体験全体を指します。

特に小売業界では、店舗とデジタルを切り離して考えることが難しくなっています。

ECで調べて店舗で購入する。店舗で商品を確認してECで購入する。アプリで在庫や売場を確認する。購入後はメールやアプリ、コミュニティでブランドとつながる。

こうした顧客行動に合わせ、オンラインとオフラインを横断したCXを設計することが重要になっています。

小売CXで注目したい7つの領域

小売業界におけるCXソリューションは、大きく「顧客データ・CDP」「パーソナライゼーション」「CRM・カスタマーエンゲージメント」「アプリ・OMO」「リアル店舗体験」「VoC・顧客理解」「コミュニティ・ロイヤルティ」の7領域に整理できます。

重要なのは、これらを個別のITツールとして考えるのではなく、「顧客にどのような体験を提供するのか」という視点から組み合わせることです。

顧客データ・パーソナライゼーション

1.KARTE|プレイド

サービス概要

KARTEは、Webサイトやアプリを利用する顧客の行動をリアルタイムに解析し、一人ひとりの状況に合わせた体験を提供するCXプラットフォームです。

顧客行動分析、Web・アプリ接客、メッセージ配信、データ統合などを組み合わせ、顧客理解から施策実行までを支援します。

小売企業の実名事例

ワールド、丸井、アーバンリサーチ、PLAZAなど、小売・アパレル企業の導入事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

ワールドでは、KARTEで解析した行動データをMA配信メールのレコメンドに活用。従来の施策と比較して約2割の効果向上が確認されています。

また、メール、LINE、アプリなど複数の顧客接点での配信をKARTE Messageへ集約し、施策の立案から運用、改善までを社内で一貫して行える環境を構築しています。

アーバンリサーチでも、店舗・ECを横断したデータ活用を推進。顧客データと商品データを組み合わせたEC改善では、売上高前年比11%増、粗利額16%増という成果も公開されています。

単なるWeb接客ツールではなく、顧客データを中心にオンラインと店舗をつなぐCX基盤として活用されている点が特徴です。

2.Treasure Data CDP|Treasure Data

サービス概要

Treasure Data CDPは、店舗、EC、Web、アプリ、会員など複数の顧客接点に分散するデータを統合し、一人ひとりの顧客を理解するためのデータ基盤を構築するCDPです。

統合したデータをCRM、広告、分析、パーソナライゼーションなどさまざまな施策へ活用できます。

小売企業の実名事例

ユナイテッドアローズ、パルコ、カインズ、TSIなど、小売・アパレル企業のデータ活用事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

ユナイテッドアローズでは、店舗会員とEC会員、ブランドサイトとECサイトなどの統合を進めるなかでCDPを活用。店舗とオンラインにまたがる顧客データ活用の高度化を進めています。

また、Treasure Data CDPとAIを組み合わせたEC不正購入対策では、不正購入被害を10分の1以下に抑えた事例も公開されています。

パルコではアプリを顧客接点として組み込み、データに基づいて顧客コミュニケーションを改善。TSIでも店舗とECを融合したユニファイドコマースの基盤として活用されています。

「誰が、どのチャネルで、どのような行動をしているか」を統合的に把握する、小売CXのデータ基盤として代表的なサービスです。

3.b→dash|データX

サービス概要

b→dashは、企業内に分散する顧客データを取り込み、統合・加工・分析し、メール、LINE、Web接客などのマーケティング施策まで実行できるデータマーケティングプラットフォームです。

複雑なデータ処理をノーコードで行えることを特徴としています。

小売企業の実名事例

阪急阪神百貨店、オカダヤ、生活協同組合コープこうべ、サカゼン、ナノ・ユニバース、セブンネットショッピング、鎌倉シャツなど、多数の小売・EC企業の導入事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

小売企業では、店舗やEC、会員データなどを統合し、顧客属性や購買行動に応じてメールやLINE、Web接客などを出し分けるマーケティングに活用されています。

小売におけるCXでは、顧客データを集めるだけではなく、「集めたデータを実際の顧客コミュニケーションへどうつなげるか」が重要です。

b→dashはデータ統合から施策実行までを一つの環境で行えるため、CDP・MA・Web接客を横断したCX改善を進めたい小売企業の選択肢となります。

4.Rtoaster|ブレインパッド

サービス概要

Rtoasterは、顧客データを活用し、WebサイトやECなどで一人ひとりに合わせたレコメンドやパーソナライゼーションを実現するデータビジネスプラットフォームです。

店舗とECの購買履歴やオンライン行動を統合し、OMO施策にも活用できます。

小売企業の実名事例

高島屋オンラインストア、セシール、セブン&アイ・ネットメディア、バロックジャパンリミテッドなど、小売・通販領域での導入実績が公開されています。

具体的な取り組み・成果

店舗での購買履歴とオンラインの行動データを統合することで、顧客の状態に合わせたWebレコメンド、LINEメッセージ、プッシュ通知、店舗への来店促進などに活用できます。

小売企業では「ECでは顧客の行動が分かるが、店舗での購買とつながっていない」という課題が少なくありません。

Rtoasterはオンラインとオフラインを横断して顧客を理解し、「誰に、何を、いつ提案するか」を最適化することで、一貫した買い物体験の実現を支援します。

CRM・カスタマーエンゲージメント

5.Braze|Braze

サービス概要

Brazeは、アプリ、メール、Web、プッシュ通知など複数のチャネルを横断して、顧客の行動や属性に応じたコミュニケーションを実現するカスタマーエンゲージメントプラットフォームです。

小売企業の実名事例

国内小売では、北海道を中心にドラッグストアを展開するサッポロドラッグストアー(サツドラ)などの活用事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

サツドラでは、POS、位置情報、購買履歴、歩数、チェックインなどのデータとBrazeを連携。

従来の一斉配信型マーケティングから、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションへ転換しました。

購買データから抽出したロイヤル顧客へ特典を配信した施策では、対象ユーザーの1人当たり購買金額が20%以上向上。来店頻度と位置情報を組み合わせたターゲティング施策でも購買金額が15%向上しています。

今後はECにも活用を広げ、リアル店舗とオンラインを横断したOMOマーケティングを目指しています。

6.MicoCloud|Micoworks

サービス概要

MicoCloudは、LINEを中心に顧客データを蓄積・分析し、顧客ごとにコミュニケーションを最適化するマーケティングプラットフォームです。

LINE公式アカウントを単なる情報配信チャネルではなく、顧客理解やCRMの接点として活用できる点が特徴です。

小売企業の実名事例

家電量販店、家具・インテリア、百貨店など、小売企業での活用実績が公開されています。

具体的な取り組み・成果

店舗を持つ小売企業にとってLINEは、専用アプリとは異なる「日常的な顧客接点」として活用できます。

友だち登録したユーザーの属性や行動を把握し、興味関心に応じてコンテンツやクーポンなどを出し分けることで、一斉配信からパーソナライズされたコミュニケーションへ移行できます。

アプリを新たにダウンロードしてもらうハードルを設けずに、既存のLINE接点から会員化、店舗送客、EC利用などへつなげられる点は、OMOを進める小売企業にとって大きなメリットです。

アプリ・OMO

7.ModuleApps2.0|DearOne

サービス概要

ModuleApps2.0は、小売・流通企業などの公式アプリ開発・運用を支援するサービスです。

会員証、クーポン、店舗検索、プッシュ通知、商品・在庫検索などを組み合わせ、アプリを中心とした店舗と顧客との継続的な接点を構築できます。

小売企業の実名事例

ウエルシア薬局、ジーフット「ASBee」、JR東日本クロスステーション「NewDays」、タワーレコードなどの事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

ウエルシア薬局では公式アプリをリニューアルし、Tポイントに加えてWAON POINT、PayPayなどとの連携を実現。

リニューアル後8カ月で100万ダウンロードを突破し、その後650万ダウンロードを記録。MAUも約192%伸長しています。

NewDaysでは、JRE POINTやSuicaとアプリを連携。アプリ登録会員の売上は非会員の約3倍となり、来店頻度の向上にもつながっています。

アプリを「クーポン配信ツール」から「個客との継続的な接点」へ変えている点が特徴です。

8.APPBOX|アイリッジ

サービス概要

APPBOXは、新規アプリ開発や既存アプリへの機能追加を支援するアプリビジネスプラットフォームです。

会員証、クーポン、プッシュ通知など、小売アプリに求められるさまざまな機能を組み合わせることができます。

小売企業の実名事例

ファミリーマートの「ファミペイ」、BOOKOFF、京王百貨店など、小売・流通企業のアプリ開発・運用実績があります。

具体的な取り組み・成果

小売アプリでは、店舗検索や会員証を提供するだけでなく、購買データや会員データを活用し、顧客との継続的な関係を構築することが重要になっています。

APPBOXでは既存システムと連携しながら必要な機能を追加できるため、アプリ全体を作り直すことなくCX改善を進めることも可能です。

店舗を中心とする企業がアプリをCRM・OMOの中核へ発展させるための基盤として活用されています。

9.LINEミニアプリ|LINEヤフー

サービス概要

LINEミニアプリは、LINE上で会員証、店舗サービス、予約、順番待ちなどを提供できる仕組みです。

顧客に新しいアプリをダウンロードしてもらう必要がなく、普段利用しているLINEから店舗のデジタルサービスへアクセスしてもらえる点が特徴です。

小売企業の実名事例

小売・専門店では、店舗会員証や会員化、CRMなどを目的とした活用が広がっています。

AKOMEYA TOKYOではLINEミニアプリを活用したOMOプロジェクトを展開しています。

具体的な取り組み・成果

AKOMEYA TOKYOでは、店舗レジ横のQRコードからLINEミニアプリへ誘導し、顧客の会員化を促進。

店舗・ECの累計購入金額に応じて次回利用できるクーポンを発行するロイヤルティプログラムを構築しました。

店舗オペレーションや顧客負担を抑えながら会員化を進め、店舗・EC双方の購買行動を把握できるデータ基盤を整備しています。

「アプリをダウンロードしてもらう」こと自体を顧客体験上のハードルにしない、新しい店舗CXの選択肢です。

10.Repro|Repro

サービス概要

Reproは、スマートフォンアプリやWebサイトの顧客行動を分析し、プッシュ通知やアプリ内メッセージ、UI改善などを通じて利用促進や収益向上を支援するマーケティングソリューションです。

実名事例

B-R サーティワン アイスクリームの公式アプリ「31Club」など、店舗型ビジネスでの活用事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

31Clubでは、アプリ会員登録後に初回購入へ至らないユーザーが多いことを課題としていました。

そこでReproのアプリ収益最大化サービスを導入し、コミュニケーション設計や各種施策を実施。

導入後3カ月で、会員登録後の初月購入率が前年比約25%改善しました。

アプリのダウンロード数だけではなく、「実際に店舗で購入してもらえるか」という顧客行動までをKPIとして改善している点がCX施策として注目できます。

リアル店舗のCX

11.NaviCX|ソニー

サービス概要

NaviCXは、スマートフォンのセンサーやビーコンなどを利用し、店舗内の位置、滞在時間、動線、向きなどを取得・分析する屋内行動分析プラットフォームです。

店内での商品探索支援と、店舗内行動の分析の両方に利用できます。

小売企業の実名事例

ホームセンターのカインズなどで導入事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

カインズでは公式アプリとNaviCXを組み合わせ、顧客の現在地と目的の商品がある売場との位置関係を店舗マップ上に表示しています。

商品が「どの売場のどの棚にあるか」をアプリから確認できるようにすることで、大型店舗で商品を探し回るストレスを軽減します。

2022年に6店舗で実証実験を開始し、その後全店舗への展開を進め、2025年1月時点で223店舗に導入。

さらに店内の回遊動線や滞在時間を分析し、売場づくりや販促改善にも活用しています。

VoC・顧客理解

12.Qualtrics Customer Experience|Qualtrics

サービス概要

Qualtrics Customer Experienceは、アンケートやNPSなどを通じて顧客の声を収集・分析し、顧客体験の改善につなげるCXプラットフォームです。

小売企業の実名事例

全国に店舗を展開する眼鏡専門店のパリミキなどで導入事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

パリミキでは、店舗だけでなくECなどへ顧客接点が広がるなか、それぞれの地域や店舗形態に応じた顧客ニーズを理解するためQualtricsを導入しています。

NPSを計測し、商品購入者から接客・接遇についての評価を収集。

結果を迅速に各店舗へ展開し、店舗ごとの改善活動に活用しています。

また「顧客満足推進部」を設置し、顧客の声を理解して優先課題へ取り組む体制も構築しています。

単にアンケートを取るのではなく、「顧客の声→課題発見→店舗改善」というCX改善サイクルを回している事例です。

13.Contentsquare|Contentsquare

サービス概要

Contentsquareは、Webサイトやアプリ上で顧客がどこをクリックし、どこで迷い、どこで離脱しているのかを分析するデジタル体験分析プラットフォームです。

小売企業の実名事例

楽天、The North Face、Clarksなど、EC・小売領域で活用事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

楽天の事例では、顧客行動データを分析した結果、1ページにまとめられた長いチェックアウトプロセスが顧客の負担になっている可能性を発見。

購入プロセスを「開始」「配送」「支払い」「注文確認」の複数ステップへ分割しました。

その結果、チェックアウト開始から配送ステップへ進むコンバージョン率が10%改善しています。

ECにおけるCXでは「顧客がなぜ購入しなかったのか」を理解することが重要であり、その原因を行動データから発見するためのサービスです。

コミュニティ・ロイヤルティ

14.Commune|コミューン

サービス概要

Communeは、企業と顧客、顧客同士が継続的につながるオンラインコミュニティの構築・運営や、顧客理解、VoC活用を支援するプラットフォームです。

小売企業の実名事例

ビームス、大丸松坂屋百貨店など、小売・店舗企業の事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

ビームスでは、店舗へ来店していない時間にも顧客とコミュニケーションを取り、関係性を強めるオンラインの場としてコミュニティを活用。

顧客同士、顧客とスタッフが交流できる環境をつくっています。

大丸松坂屋百貨店でも、コミュニティ内の投稿をきっかけにオンライン上の交流がリアルな顧客行動へ波及する取り組みが行われています。

「購入してもらう」だけではなく、「購入後も顧客との関係を続ける」というCXを実現するサービスとして注目できます。

15.coorum|Asobica

サービス概要

coorumは、顧客コミュニティやVoC、UGCなどを通じて顧客の本音を収集・分析し、商品開発、マーケティング、ブランド戦略などに活用するプラットフォームです。

小売企業の実名事例

成城石井をはじめ、小売企業での導入が公開されています。

具体的な取り組み・成果

小売企業が持つPOSデータからは、「何を買ったか」は分かっても「なぜ買ったか」「なぜブランドを好きなのか」といった顧客心理までは把握しにくいという課題があります。

coorumではコミュニティ内で生まれる投稿や顧客の声を収集し、顧客インサイトを把握。

その情報をマーケティングや商品開発、ブランド戦略へフィードバックすることで、「企業が売りたい商品」ではなく「顧客が求めている商品・体験」を起点とした事業づくりを支援します。

EC・OMO・商品体験

16.ecbeing|ecbeing

サービス概要

ecbeingは、ECサイト構築を中心に、店舗在庫連携、店舗受取、CRM、CDP、レビュー、動画・UGCなどを組み合わせたEC・OMO基盤を提供しています。

小売企業の実名事例

PLAZA、コーナン商事、ワークマン、中川政七商店など、多数の小売企業の事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

PLAZAでは、店舗利用者が顧客の大半を占めるという特徴を踏まえ、ECを店舗と顧客をつなぐ「体験のハブ」としてリニューアル。

店舗受取のUI・UXや運用を改善するとともに、店舗とECを連携しました。

リニューアル後半年でEC売上は1.5倍、アクセス数1.6倍、月平均購買件数は約2,000件増加。アクセス集中によるサイトダウンや売り越しもゼロになっています。

コーナン商事でも、店舗在庫・販売価格をECと連携し、店舗受取受注数がリニューアル後2カ月で約1.5倍となっています。

17.ReviCo|ReviCo

サービス概要

ReviCoは、ECサイトで商品レビューを収集・掲載し、購入を検討する顧客の商品選びを支援するレビュー・UGCソリューションです。

購入者へレビュー投稿を促す仕組みや、属性情報を含むレビュー収集などを通じて、EC上の商品理解を深めます。

小売企業の実名事例

THE BODY SHOPなど、化粧品・小売領域での導入事例が公開されています。

具体的な取り組み・成果

THE BODY SHOPオンラインショップではReviCoを導入し、レビュー収集を強化。

導入後約1カ月で、1日当たりの平均レビュー投稿数が導入前と比較して11.83倍になりました。

さらにレビュー平均評価も約4.3から4.6へ上昇。

肌質など顧客属性をレビュー項目へ追加することで、単なる「星の数」ではなく、購入検討者が自分に近い顧客の声を参考にできる環境を構築しています。

店舗でスタッフに相談するような「商品選びの安心感」をEC上で補完するCX施策といえます。

18.visumo|visumo

サービス概要

visumoは、InstagramなどのUGC、店舗スタッフの投稿、動画コンテンツなどをECサイトへ掲載し、商品発見や購入を支援するビジュアルマーケティングプラットフォームです。

小売企業の実名事例

アパレル、雑貨、ライフスタイル領域を中心に多数の小売・EC企業で導入されています。

具体的な取り組み・成果

小売店舗では、スタッフがコーディネートや商品の使い方を提案することがCXの重要な要素になっています。

visumoでは、こうした店舗スタッフの知識や接客力をデジタルコンテンツとしてECへ展開できます。

また、Instagramなどに投稿された顧客のUGCをECへ掲載することで、企業側が用意した商品画像だけでは伝わらない「実際に使ったときのイメージ」を提供できます。

ECを単なる商品カタログではなく、「商品と出会い、使い方を知り、購入したくなる場所」へ変えるためのCXソリューションです。

顧客データ×ロイヤルティ

19.Sechstant CRM・CDP|ecbeing

サービス概要

Sechstant CRM・CDPは、ECや店舗から得られる顧客・購買データを活用し、CRM施策の実行や顧客分析を支援するソリューションです。

小売企業の実名事例

食品・生活雑貨を展開するAKOMEYA TOKYOで、LINEミニアプリ、ecbeing、ReviCoなどと組み合わせたOMO基盤として導入されています。

具体的な取り組み・成果

AKOMEYA TOKYOでは、店舗数の増加によって顧客像が見えにくくなったことを背景にOMOプロジェクトを開始。

LINEミニアプリから店舗顧客を会員化し、Sechstant CRMによって店舗・EC共通のクーポンを自動発行。CDPでは店舗ごとの会員証提示率や店舗・EC併用率などを分析できる環境を構築しています。

運用開始後は想定以上の会員証提示があり、顧客データが順調に蓄積。店舗購入者からもレビューを取得できるようになり、レビューの集まり方も従来の倍以上になっています。

商品提案・在庫データ×CX

20.FULL KAITEN|フルカイテン

サービス概要

FULL KAITENは、EC・店舗・倉庫の在庫データや販売データをAIなどで分析し、売上・粗利の向上と在庫最適化を支援するクラウドサービスです。

一見すると在庫DXのサービスですが、商品データと顧客データを組み合わせることで、「誰に何を提案するか」というCX・パーソナライゼーションにも活用できます。

小売企業の実名事例

アーバンリサーチをはじめ、アパレル、雑貨、眼鏡、靴、スポーツ用品など200以上のブランドで導入されています。

具体的な取り組み・成果

アーバンリサーチでは、FULL KAITENで「販促を強化すれば値引きせずに売れる商品」を抽出し、その商品データをKARTEへ連携。

KARTEが持つ顧客データと組み合わせ、「誰に」「何を提案するか」を最適化しました。

PoCでは通常のレコメンド施策と比較して、購入金額119%、粗利率115%、CVR131%、平均来訪単価160%という成果を確認。

顧客が欲しい商品を提案することと、小売企業が適正な在庫を販売することを両立する、CXとマーチャンダイジングをつなぐ事例として注目できます。

小売CXの先進事例から見える5つの変化

今回紹介した20サービスの事例を見ると、小売業界におけるCX改革は大きく5つの方向へ進んでいることが分かります。

1.「顧客データを集める」から「顧客を理解する」へ

店舗、EC、アプリ、Webなどから大量のデータを収集するだけではCXは改善しません。

Treasure Data CDPやKARTE、b→dashなどを活用し、「この顧客は何に興味を持ち、どのチャネルを利用し、どのような商品を購入しているのか」を一人の顧客として理解することが重要になっています。

2.一斉販促から「一人ひとりに合わせた提案」へ

同じメールやクーポンをすべての顧客へ送るマーケティングから、顧客の行動や購買履歴に応じてコミュニケーションを変える方向へ移行しています。

サツドラのBraze活用やワールドのKARTE活用は、その代表的な事例です。

「何を伝えるか」だけではなく、「誰に、いつ、どのチャネルで伝えるか」がCXを左右するようになっています。

3.店舗とECを分けない

小売企業にとって店舗とECは、別々のチャネルではなくなりつつあります。

ECで商品を調べて店舗で購入する。店舗で商品を確認してECで注文する。ECで注文して店舗で受け取る。

PLAZAやコーナン商事、AKOMEYA TOKYOなどの事例からも、「店舗かECか」ではなく、顧客が好きな方法で買える環境をつくることがCX向上につながっていることが分かります。

4.リアル店舗そのものをデジタルで改善する

CXのデジタル化はECやアプリだけの話ではありません。

カインズではNaviCXを利用し、大型店舗の中で目的の商品を探すという顧客の負担を軽減しています。

さらに店内の行動データを分析し、売場づくりや販促へ反映。

リアル店舗で起きている「探しにくい」「分かりにくい」「待たされる」といった摩擦をテクノロジーで減らすことも、重要なCX改革です。

5.「買ってもらう」から「長く付き合ってもらう」へ

これからの小売CXで特に重要になるのが、購入後の関係です。

Communeやcoorumなどを利用して顧客コミュニティをつくり、ブランドと顧客、顧客同士が継続的につながる企業も増えています。

従来の販促は「次の商品を買ってもらうこと」が中心でした。

これからは、顧客の声を聞き、商品開発へ反映し、店舗スタッフと交流し、ブランドについて語ってもらう。

こうした長期的な関係そのものがCXになります。

CXソリューションを選ぶ際のポイント

小売企業がCXソリューションを導入する際に重要なのは、「高機能なツールを導入すること」を目的にしないことです。

まず考えたいのは、顧客が現在どこで不便や不満を感じているのかということです。

店舗で商品が見つからないのであれば店舗CX、店舗とECの会員情報が分断しているのであればCDP・OMO、アプリをダウンロードしても利用されないのであればアプリマーケティング、顧客の本音が分からないのであればVoCやコミュニティが解決策になります。

そのうえで、POSやEC、会員基盤との連携、店舗スタッフが運用できるか、データを分析するだけでなく施策へつなげられるかなどを確認することが重要です。

生成AI・AIエージェントで小売CXはどう変わるか

今後のCX領域では、生成AIやAIエージェントの活用も重要なテーマになります。

これまでのパーソナライゼーションでは、「30代女性」「直近3カ月以内に購入」「特定の商品を閲覧」といった条件によって顧客をセグメント化し、施策を出し分ける方法が一般的でした。

AI活用が進めば、購買履歴、Web行動、問い合わせ、VoC、店舗行動など大量の情報から顧客の意図を理解し、「今、この顧客が必要としているもの」を推測して提案する方向へ進む可能性があります。

さらに、AIエージェントが商品検索、比較、問い合わせ、購入後サポートまで担うようになれば、小売企業と顧客との接点そのものが大きく変わります。

CXは「顧客をセグメントとして理解する」段階から、「一人ひとりを継続的に理解する」段階へ進もうとしています。

まとめ|顧客との信頼が、次の成長をつくる

小売企業にとってCXは、単なる接客改善やデジタルマーケティングではありません。

店舗で商品を探す体験、ECで商品を比較する体験、アプリを使う体験、商品を受け取る体験、問い合わせる体験、そして購入後もブランドとつながる体験。

そのすべてがCXです。

今回紹介した企業の事例を見ると、成果を上げている企業に共通しているのは、テクノロジーそのものを目的にしていないことです。

「顧客をもっと理解したい」

「商品を探しやすくしたい」

「店舗とECを自由に行き来できるようにしたい」

「一人ひとりに合った情報を届けたい」

「購入後も顧客との関係を続けたい」

こうした顧客起点の課題に対して、CDP、CRM、アプリ、AI、VoC、コミュニティなどのテクノロジーを活用しています。

商品や価格だけでは差別化が難しくなるなか、「この店をまた利用したい」「このブランドから買いたい」と感じてもらえる体験をつくれるか。

顧客との信頼を積み重ねることが、小売企業の次の成長をつくります。