生活協同組合コープぐんまは、組合員の家庭で発生した使用済み食用油の回収・リサイクル事業を、2026年10月より全7店舗に拡大して実施する。環境保全活動の一環という位置づけだ。
これまでは前橋市の昭和店、高崎市の寺尾店とみさと店の3店舗で回収を行ってきた。ここに、桐生市の東久方店、太田市の新井店、伊勢崎市の宮子店、藤岡市の藤岡店の4店舗が加わり、全7店舗での実施となる。
取り組みの背景として示されている数字が具体的だ。群馬県では年間で約1,700トンの家庭系廃食油が発生している一方、そのほとんどが可燃ごみとして廃棄されている。廃食油はバイオマス燃料をはじめ、インク溶剤や石鹸などの原料としても活用できる資源であり、回収とリサイクルを通じて脱炭素と循環型社会の実現に貢献できるという考え方だ。
回収した廃食油の行き先も明示されている。株式会社吉川油脂が収集し、田中鉄工株式会社のアスファルトプラントにおいて、合材製造における重油代替のバイオマス燃料として活用される。回収した資源がどこで何に使われるかが具体的に示されている点は、参加する側にとって分かりやすい。
アスファルトの合材製造という用途は、一般にはなじみが薄いかもしれない。道路舗装用の材料を作る際には高温で骨材を加熱する必要があり、その燃料として重油が使われてきた。そこを廃食油に置き換えることで、化石燃料の使用量を減らすという仕組みだ。家庭から出た油が道路の材料づくりに使われるという流れは、説明すれば伝わりやすい。
店頭回収という手法は、資源循環の取り組みのなかでも比較的取り組みやすい部類にある。回収ボックスを設置し、提携先の業者に引き取ってもらうという構成で、大がかりな設備投資を必要としない。一方で、設置場所の確保、回収頻度の管理、油という性質上の漏れや臭いへの配慮といった実務は発生する。今回の事例では、まず3店舗で運用したうえで4店舗を追加するという段階を踏んでおり、いきなり全店に広げていない点は現実的な進め方といえる。
来店動機という観点でも意味がある。食用油は容器に入れて持ち運ぶ必要があるため、ついでに持っていくというより、持っていくために来店するという行動になりやすい。そして油を持参する人は、日常的に揚げ物を作る家庭である可能性が高く、食品の買い物ニーズも大きい。回収の受け皿を用意することが、そのまま来店の頻度に効いてくる構造だ。
油の回収には、他の資源にはない条件もある。液体であるため容器が必要で、こぼれれば周辺が汚れる。回収ボックスの構造や設置場所、回収の頻度は、トレーやペットボトルより慎重に設計する必要がある。3店舗で運用した経験が、拡大にあたっての土台になっているはずだ。
食品を扱う小売にとっては、扱う商品と回収するものが直結している点も特徴になる。食用油を売っている店が、使い終わった油を引き取るという形は、消費者から見て筋が通っている。トレーやペットボトルの回収と同様に、売った商品の後始末まで担うという姿勢を示すことにもなる。
年間1,700トンという発生量に対して、7店舗での回収がどれだけの割合を占めるかは示されていないが、可燃ごみとして処理されている現状を考えれば、受け皿そのものが不足している状況といえる。自治体の回収が整っていない地域では、小売店の回収ボックスが実質的な受け皿になる場面もある。
生活協同組合という業態の特性も、この取り組みとは相性がよい。組合員という継続的な関係を持つ顧客基盤があるため、取り組みの周知がしやすく、参加も定着しやすい。一般の小売店が同じことを行う場合は、告知の方法や参加の呼びかけをどう設計するかが課題になるだろう。
また、回収を始める時期を10月としている点も実務的だ。揚げ物の需要が増える秋から冬にかけて、家庭で発生する廃食油も増える。回収の受け皿を用意するタイミングとしては理にかなっている。
コープぐんまは、廃油回収業者である吉川油脂と田中鉄工と連携し、今後もこの事業を推進していくとしている。