総合販促代理店の株式会社ディー・エム広告社は、雨天時の来店促進を目的とした新サービス「アメチャン」の提供を2026年8月31日に開始した。晴れている間は何も見えないサインボードに、雨が降ると二次元コードが浮かび上がる仕組みで、小売店や商業施設、飲食店、イベント会場などでの活用を想定している。
サービス開発の背景として同社が挙げるのは、雨天が来店客数や売上の減少につながるという、店舗運営では避けがたい課題だ。ただし同社は、雨の日に需要そのものが消えているわけではないと指摘する。本質的な課題は外出する理由がないことにあるとして、雨という自然現象を来店動機に変える販促手法として開発したのが今回のサービスとなる。
仕組みはこうだ。晴天時には何も表示されていないサインボードに、雨が降ると二次元コードが出現する。来店者がスマートフォンで読み取るとキャンペーンページにアクセスし、その場で抽選結果を確認できる。獲得した特典を店舗スタッフに提示することで、クーポンや景品を受け取れる流れになっている。サービス名は「雨」と「チャンス」を組み合わせたものだ。
この仕組みを支えているのが、株式会社SO-KENが開発した特殊印刷技術「ハイドロプリント」である。印刷面を水で濡らすと発色し、乾くと消色する技術で、乾燥している状態では見えない情報が、水に濡れたときだけ浮かび上がる。この特性を使うことで、雨の日にしか出現しない二次元コードが実現した。
同社が挙げるサービスの特長は3点だ。1つ目は、天候を集客のトリガーに変えること。雨天時の客足減少を、そのまま来店動機へと転換する。2つ目が不正参加の防止設計で、現地に設置した物と店頭での引き換えを組み合わせることで、安全な運用を実現するという。3つ目がSNSでの拡散を促す構造だ。コードが拡散されても不正参加にはつながりにくいため、話題化を自然に促せるとしている。
この2点目と3点目は、販促キャンペーンを運用する側から見ると実務的に大きい。二次元コードを使ったキャンペーンでは、コードの画像がSNSで拡散され、来店していない人まで参加できてしまう問題が起こりやすい。アメチャンでは、コードが現れるのは現地に設置したボードが雨に濡れたときだけで、特典の引き換えも店頭で行う。参加するには実際に雨の日に足を運ぶ必要があるため、拡散されても仕組みが崩れにくい。話題として広がることが、そのまま来店の呼びかけになる構造といえる。
活用シーンとしては、小売店では雨の日の来店促進施策、商業施設では館内の回遊促進施策、飲食店ではアイドルタイムの集客施策、イベント会場では参加型の演出コンテンツが挙げられている。期待される効果には、雨天日の来店者数の増加、店舗滞在時間の向上、SNS投稿数の増加、ブランド体験価値の向上が並ぶ。
天候対策という切り口は、これまで販促の主戦場になりにくい領域だった。雨の日は売れないという前提を受け入れたうえで、晴天日の売上でならすという考え方が一般的だったからだ。雨の日を狙って施策を打つという発想は、その前提を裏返している。梅雨や台風シーズンなど、雨天が続く時期に何もできないという状態を減らせるかどうかが、導入を検討する際の判断軸になりそうだ。
一方で、効果を左右するのはサインボードを置く場所だろう。雨に濡れる位置に設置しなければコードは現れないため、屋外の店頭や、屋根のないアプローチ部分などが対象になる。逆にいえば、傘をさして歩いている人の目に入る場所に置ければ、通りがかりの人にも届く可能性がある。商業施設の館内回遊施策として使う場合は、入口付近での接触をどう館内へつなげるかという設計が必要になりそうだ。
飲食店のアイドルタイム集客という使い方も挙がっているが、雨天と閑散時間帯が重なる場面は現場感覚としても納得しやすい。天気が悪く客足が鈍い時間に、たまたま前を通った人へ特典を提示できれば、その1組が入るかどうかで時間帯の売上は変わる。特典の内容と、店内での引き換えオペレーションをどこまで簡素にできるかが、実際の運用では効いてきそうだ。
なお、リリースには導入費用や提供形態、実績についての記載はない。検討する場合は同社への問い合わせが必要になる。同社は本サービスを通じて、企業や店舗の天候による機会損失を新たな顧客接点へと変える支援を行うとしている。