シーイヤー株式会社が開発した空間立体音響スピーカー「Cear pavé」が、株式会社ベイクルーズの運営する店舗に、店舗音響設備として導入された。同社によると、これまでホテルの客室やラウンジでの実績はあったが、アパレル店舗への導入は今回が初めてとなる。
店舗運営の観点で最も注目したいのが、導入にあたっての工事の有無である。
同製品はワイヤレスのため配線工事を必要としない。本体は93×93×87mm、重量496gと小型で、什器や内装を選ばずに置ける。売場のレイアウトを変更する際も、スピーカーの配置をそのまま動かせる。
天井埋め込み型のスピーカーは、一度設置すれば動かせない。売場の構成を変えれば、音の届き方も変わってしまう。アパレルのように季節ごとに什器を組み替える業態では、この制約が無視できない。工事を伴わない機器であれば、その都度の対応ができる。
音の届き方についても説明がある。同社は、天井埋め込み型や据え置き型では音の出どころが特定されてしまい、近くでは音量が大きく、離れると届きにくい状態が生まれると指摘する。これに対し、同社の独自技術はステレオ音源をリアルタイムで空間立体音響に変換し、スピーカーの位置を感じさせない状態を目指すという。
売場で働く側にとっては、接客を妨げない音という評価点も重要になる。スピーカーの近くでも音が突出せず、会話の邪魔にならないとされている。BGMの音量は、雰囲気づくりと接客のしやすさの間で調整が必要な要素であり、その両立が課題になる場面は多い。
売場全体をカバーする仕組みも用意されている。複数台を設置し、独自の連動機能で同期させる形だ。新しい規格のブロードキャストオーディオを使って音源を各台へ届け、それぞれが空間立体音響に最適化する。設置台数は店舗の広さや形状に応じて設定するという。従来のように1台ずつ配線する必要がないため、レイアウトに応じた配置を自由に設計できる。
日々の運用に専門知識を必要としない点や、設置店舗専用のサイトからサポートを受けられる点も挙げられている。店舗のスタッフが機器の操作に時間を取られない設計かどうかは、導入後の定着を左右する。
導入されたのは、京都、福岡、東京の5店舗だ。複数のブランドを展開する企業が音響設備として採用したという事実は、他の事業者にとって判断材料になる。
同社は今後、飲食の場にも広げる考えを示している。単にBGMを流すのではなく、音がその場に息づく体験を生み出せるとして、業態を問わず展開したいとしている。
なお、製品のバッテリーは連続再生約8.5時間で、防水性能も備える。営業時間の長い店舗では、充電の運用をどう組むかが検討事項になりそうだ。