株式会社アドインテは、自社開発のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を大幅に更新し、新サービス「結 -Yui」として提供を開始した。対象はリテール企業などで、同社はリテール企業のメディア化とDX推進を支援するとしている。
同社の事業は流通小売DX支援、リテールメディアの開発・運用、O2O・OMOマーケティングだ。CMSは広告の配信内容を管理するシステムにあたり、小売が自社の店舗やアプリで広告を配信する際の運用基盤になる。
今回の更新では3つの領域が強化された。ログイン認証では2段階認証・多要素認証(MFA)、SSO(シングルサインオン)、IPアドレス制限を組み合わせた多層防御が実装される。AIによる配信条件の自動提案では、過去の配信履歴と政府統計データを解析して条件を設定する。データ連動では天気・気候・POS・在庫の4種類のデータと接続する形だ。
この更新で押さえておきたいのが、在庫データとの連動だ。リテールメディアは店舗やアプリで広告を配信する仕組みで、見た客がその商品を買いに行く形が想定される。ここで在庫がない店舗にも同じ広告が流れていれば、来店した客は商品を見つけられない。広告の費用をかけて客を動かしながら売上につながらない形で、客の側には不満が残る部分がある。取扱店舗リストやリアルタイムの在庫情報と連携する構成であれば、在庫のある店舗に絞って配信できる形だ。広告の運用と在庫の管理は通常は別の部門が扱う領域で、これを1つのシステムでつなぐ構成になる。
天気・気候との連動も売場の動きと対応する。気温が変わると売れる商材が変わる業態で、暖かい日と寒い日で同じ商品を推しても反応が違う部分がある。広告のクリエイティブを手作業で差し替える形では、気温の変化に追いつかない構成になる。前日までに作業を済ませる形であれば、当日の天候が予報と違った場合に対応できない部分がある。気温などの変化に応じて商品クリエイティブを自動で配信提案する形は、この時間差を詰める構成だ。
セキュリティの強化は導入の前提と関わる部分がある。同社は大手流通・リテール企業の厳格なセキュリティ審査をクリアできる水準としている。小売がシステムを導入する際には、機能の評価の前に情報セキュリティの審査が置かれる形が多い。顧客の購買データや会員情報を扱うシステムであれば、審査を通らなければ検討の対象に入らない構成だ。ベンダーの側から見ると、機能の優劣よりも審査の要件を満たすことが受注の条件になる部分がある。
多層防御の3要素はそれぞれ別の経路をふさぐ形だ。2段階認証と多要素認証はパスワードが漏れた場合の侵入を防ぐ構成で、SSOは利用者が複数のシステムで同じ認証を使える形になり、管理の側では権限の一元化につながる。IPアドレス制限は接続元を限定する形で、社外からのアクセスを制御する構成だ。小売の本部では複数のシステムを併用する形が多く、認証の方式が分かれていれば管理の負担が増える部分がある。
政府統計の使い方も特徴になる。AIによる配信条件の提案では、過去の配信履歴とe-Statなどの政府統計データを解析し、予算、配信期間、店舗ごとの商圏データ、ターゲット顧客層に応じた条件を自動で設定する。自社の購買データだけでは、店舗の周辺にどのような人が住んでいるかは分からない部分がある。来店した客のデータは取れるが、来ていない人の情報は社内に存在しない構成だ。政府統計を組み合わせる形であれば、商圏の人口構成を踏まえた判断ができる形になる。
配信の運用の工数も収益に関わる。リテールメディアは小売が広告収益を得る事業にあたり、配信の設定や修正に人手がかかれば、その人件費が収益を削る構成だ。同社は既存CMSの運用知見を活かして新規導入時の設定、修正作業、配信管理を高速化したとしている。広告の出稿が増えれば管理する案件も増える形で、1件あたりの作業時間が収益性を左右する部分がある。
現場の対応体制にも触れられている。同社はトラブルや改善要望への即時対応を想定した開発・運用体制としている。店舗で動くシステムであれば、不具合が生じた場合に売場の運用が止まる部分がある。自社で開発しているCMSであれば修正の判断を社内で下せる構成で、外部の製品を組み合わせる形とは対応の速さが分かれる形になる。
同社の設立は2009年4月で2026年10月時点で17年6か月になる。本社は京都市下京区新町通で、東京都新宿区にも拠点がある。代表取締役は十河慎治氏、資本金は1億円だ。