食品価格の上昇、人件費や物流費の増加、人手不足など、食品スーパーを取り巻く事業環境は大きく変化している。
その一方で、積極的な出店やM&A、既存店強化、独自の商品政策などによって売上規模を大きく拡大する企業も少なくない。
では、実際に今、売上を伸ばしている食品スーパーはどこなのか。
Store Guide編集部では、上場・非上場を含む食品スーパー・食品ディスカウントストアなど約50社について、2026年9月20日時点で公表されている最新の通期業績を調査。売上高または営業収益の前年比をもとに「食品スーパー成長率ランキング」を作成した。
※各社の決算期が異なるため、原則として2026年2月期・3月期・5月期・6月期・7月期など最新の確定通期を採用。9月期・10月期など2026年度本決算が未発表の場合は最新の確定通期実績を使用している。売上高と営業収益など会計上の定義が異なる場合があるため、厳密な企業価値比較ではなく「トップラインの成長を見るための参考ランキング」としてご覧いただきたい。
食品スーパー成長率ランキングTOP30
| 順位 | 企業 | 最新売上高・営業収益 | 前年比 | 対象期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | トライアルホールディングス | 1兆3,471億円 | +67.6% | 2026年6月期 |
| 2 | OICグループ/ロピア | 約6,404億円 | 約+22.8% | 2026年2月時点 |
| 3 | マミーマート | 1,937億円 | +20.5% | 2025年9月期 |
| 4 | ヤオコー※ | 7,083億円 | +19.0% | 2025年3月期 |
| 5 | ダイイチ | 586億円 | +13.0% | 2025年9月期 |
| 6 | オーケー | 7,544億円 | +10.0% | 2026年3月期 |
| 7 | ベルク | 4,165億円 | +9.2% | 2026年2月期 |
| 8 | 大黒天物産 | 3,192億円 | +9.0% | 2026年5月期 |
| 9 | イズミ | 5,693億円 | +8.6% | 2026年2月期 |
| 10 | 神戸物産 | 5,517億円 | +8.6% | 2025年10月期 |
| 11 | マルヨシセンター | 約430億円 | 約+8.1% | 2026年2月期 |
| 12 | バローホールディングス | 9,241億円 | +8.2% | 2026年3月期 |
| 13 | イオン北海道 | 3,801億円 | +7.4% | 2026年2月期 |
| 14 | ハローズ | 2,257億円 | +7.1% | 2026年2月期 |
| 15 | JMホールディングス | 1,985億円 | +6.6% | 2026年7月期 |
| 16 | アクシアル リテイリング | 2,955億円 | +4.8% | 2026年3月期 |
| 17 | リテールパートナーズ | 2,782億円 | +4.3% | 2026年2月期 |
| 18 | ライフコーポレーション | 8,813億円 | +3.6% | 2026年2月期 |
| 19 | サンエー | 2,455億円 | +3.5% | 2026年2月期 |
| 20 | アークス | 6,270億円 | +3.1% | 2026年2月期 |
| 21 | イオン九州 | 5,206億円 | +3.0% | 2026年2月期 |
| 22 | サミット | 3,588億円 | +2.9% | 2026年3月期 |
| 23 | ヤマザワ | 1,054億円 | +2.8% | 2026年2月期 |
| 24 | アルビス | 1,010億円 | +2.8% | 2026年3月期 |
| 25 | 平和堂 | 4,560億円 | +2.5% | 2026年2月期 |
| 26 | マックスバリュ東海 | 3,850億円 | +2.0% | 2026年2月期 |
| 27 | 天満屋ストア | 592億円 | +1.0% | 2026年2月期 |
| 28 | オークワ | 2,395億円 | +0.9% | 2026年2月期 |
| 29 | 北雄ラッキー | 372億円 | +0.8% | 2026年2月期 |
| 30 | フジ | 7,843億円 | +0.8% | 2026年2月期 |
※ヤオコーはブルーゾーンホールディングスへの移行前の旧ヤオコー連結ベースの最新比較可能通期。持株会社移行後は企業範囲が変わっており、単純な前年比較が難しいため旧会社の実績を掲載した。
1位はトライアル、売上高は1.3兆円を突破
ランキングで突出した伸びを見せたのがトライアルホールディングスだ。
2026年6月期の売上高は1兆3,471億円となり、前年の8,038億円から67.6%増。営業利益も303億円と43.9%増加した。
ただし、この急成長には西友の子会社化という大型M&Aが大きく影響している。
そのため67.6%という数字を「既存のトライアル店舗だけで伸ばした」と見るべきではない。一方、本体のトライアルについても2026年6月期の全店売上高は前年比110%程度で推移しており、新規出店による成長も続いている。
つまりトライアルは、既存事業の成長+新規出店+M&Aという複数の成長エンジンを同時に動かしている。
ロピアを展開するOICグループは6,000億円を突破
非上場企業の中で特に目を引くのが、ロピアを中核とするOICグループだ。
2025年2月期時点のグループ売上高は5,213億円だったが、2026年2月時点では年商6,404億円、店舗数149店舗まで拡大している。単純比較すると1年間で約23%の伸びとなる。
近年は首都圏だけでなく、関西、九州、北海道、東北、中部など全国へ出店地域を拡大。海外にも進出している。
食品スーパーの成長戦略が「既存商圏で店舗数を積み上げるモデル」から、強いフォーマットを全国展開するモデルへ変化しつつあることを象徴する企業ともいえる。
マミーマート、ヤオコーなど埼玉勢も高成長
首都圏の食品スーパーでは、マミーマートの伸びも大きい。
2025年9月期の売上高は1,937億円。2024年9月期の1,607億円から約20.5%増加している。
また、持株会社化前のヤオコーは2025年3月期に売上高7,083億円となり、前期5,953億円から約19%増加した。
ベルクも2026年2月期に売上高4,165億円、前期比約9.2%増。営業利益は179億円を確保した。
埼玉県を中心とした食品スーパー市場は、全国でも特に競争の激しい地域の一つだが、その競争環境の中から複数の高成長企業が生まれている点は興味深い。
オーケーは7,500億円へ。既存店も6%超成長
新規出店だけでなく、既存店も強い企業として注目したいのがオーケーだ。
2026年3月期の売上高は7,544億円、前年比110.0%。さらに既存店売上高も前年比106.4%だった。
客数は103.9%、客単価も102.4%となっており、「値上げによる客単価上昇だけ」で売上を伸ばしているわけではない。2026年3月期には15店舗を新規出店している。
2027年3月期には、新店売上を含まないベースでも8,297億円の売上予算を掲げており、今後さらに規模を拡大する可能性がある。
大黒天物産は25店舗出店、売上高9%増
「ラ・ムー」「ディオ」などを展開する大黒天物産も成長を続けている。
2026年5月期の売上高は3,192億円で、前年の2,929億円から9.0%増加した。店舗数は251店舗まで拡大している。
2026年5月期には25店舗を新規出店しており、売上成長の大きな原動力となった。一方で営業利益は前年比46%減となっており、建築費、人件費など店舗拡大に伴うコスト増も表面化している。
ここから分かるのは、売上成長率が高い企業=利益成長率も高い企業、とは限らないということだ。
今後食品スーパーを分析するうえでは、売上だけでなく営業利益率やROICなども合わせて見る必要がある。
ハローズも7%成長、2,000億円を突破
中国・四国地方を中心に24時間営業の食品スーパーを展開するハローズも成長企業の一社だ。
2026年2月期の売上高は2,257億円。前年の2,108億円から7.1%増となった。営業利益も124億円を超えている。
全国展開ではなく、一定地域に店舗を集中させるドミナント戦略でも高い成長を実現できることを示している。
売上規模8,800億円のライフも3.6%成長
大手企業の中ではライフコーポレーションも堅調だ。
2026年2月期の売上高は8,813億円。前年の8,505億円から約3.6%増加した。営業利益も260億円となった。
すでに巨大な売上規模を持つ企業が年3~4%成長するインパクトは小さくない。
成長率だけを見ると新興・中堅スーパーに及ばないが、増加額では年間300億円を超える。食品スーパーを見る際には、「成長率」と「売上増加額」の両方を見ることが重要になる。
成長企業に共通する4つのパターン
今回約50社を調査すると、売上を大きく伸ばしている企業には、いくつか共通したパターンが見えてくる。
一つ目は積極出店だ。ロピア、大黒天物産、ベルク、ハローズ、オーケーなど、上位企業の多くが継続的に店舗網を拡大している。
二つ目がM&A・企業統合。トライアルによる西友の子会社化が象徴的で、食品スーパー業界では今後、単独企業の成長だけでなくM&Aによる規模拡大がさらに重要になる可能性がある。
三つ目が価格競争力と商品力だ。オーケー、ロピア、ラ・ムーなど、高い価格競争力を持つ企業が成長ランキング上位に並んだ。一方、ヤオコーや成城石井など、独自の商品・売場づくりを強みにする企業も存在する。
そして四つ目が店舗オペレーションと物流への投資だ。
店舗数が増えるほど、物流、発注、在庫管理、需要予測、人員配置、惣菜製造などの効率化が成長を左右する。
2026年以降、食品スーパーは「再編と二極化」の時代へ
食品スーパー市場そのものが急激に拡大しているわけではない。
それでも、今回のランキングでは10%、20%を超える成長を実現している企業が複数存在した。
これは、業界全体が一様に成長しているのではなく、シェアを獲得する企業と、そうでない企業との差が広がっていることを示唆している。
実際、2025年度決算では総合スーパー・食品スーパー25社中15社が増収増益となった一方、増収減益となった企業も8社あったと報じられている。
売上を増やすだけでなく、人件費、物流費、原材料費などの上昇を吸収しながら、どのように利益を確保するか。
そしてAI、需要予測、自動発注、物流DX、店舗オペレーション改善、惣菜・PB開発などを、どう成長戦略につなげていくか。
食品スーパー各社の競争は、単なる「店舗数」や「売上規模」の競争から、出店力・商品力・価格競争力・テクノロジー・サプライチェーンを組み合わせた総合力の競争へと移りつつある。
今後、今回上位に入った企業が成長を継続するのか。それとも、新たな成長企業が台頭するのか。
Store Guideでは、食品スーパー各社の決算、出店、DX・AI、物流、商品戦略などの動向を引き続き追っていく。