大丸心斎橋店は、「-防災を文化に-ソナエルストリート」を2026年9月25日から27日まで開催する。大阪市消防局中央消防署と江崎グリコ株式会社を共創パートナーに迎え、日常のなかで備えることを身近に感じてもらう機会を提供するという。

百貨店の催事という観点で見ると、この企画は2つの点で参考になる。防災という切り口の立て方と、店舗の外部空間の使い方だ。

まず切り口について。同社は江戸時代の町火消との関わりを企画の土台に据えている。幾度の大火から店を守ってきた町火消は発足から300年余りが経ち、大丸はその活動を支えてきたという。開業300周年を機に地域とのつながりを振り返るという位置づけだ。

防災をテーマにした売場や催事は、9月に多くの小売業が実施する。ただ、多くは商品の陳列にとどまる。自社の歴史と結びつけることで、なぜこの店がこの企画をやるのかという説明が生まれる。周年という節目を、単なる記念セールではなく地域との関係を語る機会に使っている構成といえる。

もう1つが会場の使い方だ。館内の1階イベントスペースでは、江崎グリコの長期保存食など防災関連商品の紹介と販売、同社の歴史資料の展示を行う。あわせて、江戸時代の町火消衣裳など貴重な史料も並べる。会期は3日間、各日10時から20時までだ。

一方、9月26日と27日には、御堂筋玄関前の歩道空間で消防署による体験イベントを実施する。起震車や煙体験テントのほか、ミニ消防車や防火衣を着用しての記念撮影も用意される。時間は各日11時から16時までとなる。

屋外の歩道空間を使うという判断は、集客の観点で意味を持つ。消防車両や起震車は館内に入れられない。一方で、通りに面した場所にあれば、来店を予定していなかった人の目にも入る。百貨店に用事のない通行人が足を止め、そこから館内へ入るという流れを作れる。

体験型の内容という点も、この企画の性格を示している。防災グッズは、必要性は理解していても購入が後回しになりやすい商材だ。起震車で揺れを体験したり、煙のなかを歩いたりすれば、備えの必要性が実感として残る。その直後に館内で商品を買えるという導線になっている。

食の備えという切り口も打ち出されている。非常時に備えて普段から食べ慣れた味を用意することの大切さなど、日常からできる備えを知る機会を提供するという。長期保存食を特別なものとして扱うのではなく、日常の延長線上に置く考え方だ。食品売場を持つ小売にとっては、通常の商品と防災を結びつける提案として応用が利く。

行政機関と企業を共創パートナーに迎える形も、催事の作り方として押さえておきたい。消防署は体験コンテンツと車両を、メーカーは商品と歴史資料を提供する。百貨店は場所と集客を担う。それぞれが持ち寄ることで、単独では実現できない規模の企画になっている。