株式会社Preferred Networks(PFN)は、リテールAI・ロボティクスソリューション「MiseMise(ミセミセ)」が2026年度グッドデザイン賞の金賞を受賞したと発表した。

金賞はグッドデザイン・ベスト100から審査カテゴリーごとに最も優れたデザインとして選ばれるもので、2026年度は20カテゴリーから各1件、計20件が選出された。

MiseMiseは店舗運営を支えるプラットフォーム型のソリューションで、品出し、値引き、棚割、お客様案内、店舗調査といった複数の店舗業務を改善・再定義する。業務用アプリケーション、自律移動ロボット、屋内地図を組み合わせた構成だ。業務で得られたデータを次の計画や施策に活かし、業務改善の循環を生み出す仕組みとしている。

この受賞で押さえておきたいのが、審査委員が挙げた評価の内容だ。自律移動ロボットで店舗を丸ごとデジタルツイン化し、担当者の暗黙知に頼っていた業務を見える化した点が評価されている。

対象として挙げられている業務は、いずれも経験に依存する部分が大きい。品出しであれば、どの商品をいつどれだけ出すかという判断になる。値引きは、いつどの程度下げるかの見極めだ。棚割はどこに何を置くかで、売れ方に直接影響する。

これらは手順として書き出しにくい領域にあたる。レジの操作や清掃の手順は文書にできるが、「この時間帯にこの商品を補充する」という判断は、売れ方の傾向や天候、曜日といった複数の要素を踏まえたものになる。ベテランの担当者が蓄積してきた判断が、本人の中に残る形だ。

この状態は、人が入れ替わる場面で問題になる。担当者が異動や退職をすれば、その判断の根拠は引き継がれない。新しく入った人は、同じ経験を積み直すことになる。人手不足のなかで新人が増えれば、この引き継ぎの負荷は大きくなる。

デジタルツイン化という手法は、この領域をデータに置き換える構成にあたる。自律移動ロボットが店舗を巡回して状態を記録すれば、棚の状況が数値として残る。人が見回って判断していた部分が、記録として蓄積される形だ。

記録が残れば、判断の根拠も共有できる。どの時間にどの棚が空いていたか、どの商品がいつ減ったかというデータがあれば、補充の判断を経験に頼らずに組める。業務で得たデータを次の計画に活かすという循環も、記録が前提になる。

開発の進め方についても、評価のなかで触れられている。実際のスーパーでエンジニアが作業したり、売り場をオフィス内に再現して検証を繰り返したりしたことが挙げられている。

開発する側が現場で作業する形は、業務の性質を把握する手段にあたる。品出しや値引きの作業は、話を聞くだけでは手順の表面しか分からない。実際に動いてみれば、どこに時間がかかり、何が判断の分かれ目になるかが見える。売り場をオフィスに再現した点も、現場で試せない検証を繰り返すための構成だ。

導入する側から見ると、この進め方自体が判断の材料になる。店舗の業務に関わる仕組みを入れる場合、作り手が現場をどこまで理解しているかは運用に影響する。実際に作業した経験を踏まえて設計された形であれば、現場で使えない機能が並ぶ余地は減る。

審査委員の評価では、フィジカルAIの一つの将来像を示す取り組みとされている。画面の中だけで完結するものではなく、ロボットが店舗を動いて情報を集め、それをもとに人の作業を変える構成を指す形だ。

PFNは「現実世界を計算可能にし、共に未来を創り出す」をミッションに掲げ、生成AI基盤モデルからスーパーコンピュータ、半導体までを垂直統合している。2014年創業で、AIプロセッサーMN-Core、AI向けクラウドPFCP、国産生成AI基盤モデルPLaMoなどを提供している。

受賞展「G展・2026年度グッドデザイン賞受賞展」は2026年10月31日から11月4日まで、東京ミッドタウン(東京都港区)で開催される。時間は11時から19時までで、11月4日は18時に閉場する。

なお、価格や導入の条件についての記載はない。

出典:株式会社Preferred Networks プレスリリース