川辺株式会社は、ヴァン クリーフ&アーペルの初のフレグランス「ファースト」を2026年10月23日に発売した。「レ クラシック ファースト オーデパルファム」は100mlで44,990円(税込)、「レ クラシック ファースト オーデトワレ」は100mlで39,490円(税込)となる。
「ファースト」は1976年、創業者の甥であるピエール・アーペルの指揮のもとで誕生した。調香はジャン=クロード・エレナが担当している。日本での再登場にあたる。
この商品で押さえておきたいのが、50年前に作られた商品を再び出す構成だ。
1976年の発売から2026年までは50年になる。新しい香りを開発する形であれば、調香の設計から容器の仕様までを一から決めることになる。既存の商品を再登場させる形では、その部分が済んでいる。
ブランドの歴史を資産として使う構成でもある。「初のフレグランス」という位置づけは、後から作れるものではない。同社が1906年にパリのヴァンドーム広場で創業してから70年を経て出された香りという経緯が、商品の説明に組み込まれる形だ。
売場の側から見ると、復刻の商品は新商品とは説明の仕方が変わる。新しい香りであれば、どういう香りかを伝えることになる。50年前の商品であれば、その時代に作られたものという文脈が加わる。当時を知る客と、初めて手に取る客の双方が対象になる形だ。
2種類の構成も見ておきたい。オーデパルファムとオーデトワレで、香料の組み立てが異なる。
オーデパルファムは、トップにベルガモット、マンダリン、ブラックカラント、ミドルにジャスミン、ナルシス、ターキッシュローズ、イランイラン、ベースにサンダルウッド、バニラ、ムスク、トンカビーン、アンバーを置く。
オーデトワレは、トップにヒヤシンス、ピーチ、ラズベリー、ミドルにチュベローズ、ベースにオークモス、ハニー、シベットという構成で、より軽やかな仕上がりとされる。
オーデパルファムとオーデトワレは、一般には同じ香りの濃度が異なるものとして扱われる。賦香率の違いで、香りの持続時間や強さが変わる形だ。
この商品では、使われる香料そのものが異なっている。トップもミドルもベースも別の素材で組まれているため、濃度の違いではなく2つの異なる香りになる。
売場では、この違いが説明の対象になる。濃度違いであれば「濃いか薄いか」で選べるが、構成が違う場合は両方を試す形になる。同じ名前の商品で2つの香りを提案することになり、どちらを選ぶかは好みに委ねられる。
価格の差は5,500円で、オーデパルファムがオーデトワレの約1.14倍にあたる。1mlあたりではオーデパルファムが約450円、オーデトワレが約395円になる。
いずれも100mlで4万円前後という価格帯だ。香水の売場では高い水準に入る。1本を長く使う商材であるため、1回の購入額は大きくなる。
ボトルのデザインにも経緯がある。留め具から吊るされたペンダントを思わせるデザインで、後の「ヴァランシエンヌ」イヤリングや現行の「スノーフレイク」コレクションに受け継がれたとされる。
ジュエリーのブランドが香水を出す場合、通常はジュエリーのデザインを香水の容器に反映する形になる。この商品では順序が逆で、香水のボトルのデザインが後のジュエリーに引き継がれている。
ピエール・アーペルは「私は、私たちのジュエリーを映し出すような香水を夢見ていました」と語っている。ジュエリーを起点に香水を作り、その容器のデザインがジュエリーに戻る形になる。
香りの系統は、白い花のブーケ(ジャスミン、ローズ、チュベローズなど)を中心に、アルデヒドとウッディ系を組み合わせた構成とされている。
1976年という年代は、香水の傾向が現在とは異なる時期にあたる。当時の処方を再現する形であれば、現在の新作とは違う系統の香りが売場に並ぶことになる。
ヴァン クリーフ&アーペルは1906年の創業で、2026年までで120年になる。