株式会社ユニクロは、グローバルブランドアンバサダーを務める錦織圭選手が、現役として出場する最後の大会で着用するゲームウェアのデザインを採用したポロシャツを、2026年9月18日よりオンラインストアで販売する。価格は税込2,990円、サイズ展開はSからXL、色柄は1種類となる。大会は9月28日の開幕が予定されている。
小売の視点で注目したいのが、販売チャネルの設定だ。同社はこの商品をオンラインストア限定とし、店舗での販売は行わないと明記している。
全国に多数の店舗を持つ企業が、話題性の高い商品をあえて店舗に置かないという判断には、いくつかの理由が考えられる。1つは、在庫を1か所に集約できることだ。どの店にどれだけ配分するかという判断が不要になり、売れ残りと欠品の両方を抑えられる。もう1つは、店頭の混乱を避けられる点だ。引退という一回性の高い出来事に紐づく商品は、発売直後に購入が集中しやすい。
一方で、店舗を持つ強みを使わないという選択でもある。実際に手に取って試着できることは、衣料品を扱う店舗の最大の利点だ。サイズ展開が4つに絞られていることを考えると、試着の必要性は比較的低いという判断もあったのかもしれない。
商品そのものの設計も見ておきたい。デザインは、選手が世界各地の大会で見てきた空を、グラデーションプリントで表現したものだという。深みのあるネイビーから鮮やかなブルーへ移り変わる配色で、襟と袖をネイビーで引き締めている。素材には速乾性を備えた同社の機能素材を採用し、スポーツの場面から日常まで着られるとした。
選手本人のコメントも掲載されている。ネイビーとブルーのグラデーションを見て、これまで各地の大会で見上げてきた空の景色が思い浮かび、積み重ねてきた経験を思い出したという趣旨の言葉が寄せられた。動いたときにグラデーションが映える点も気に入っていると述べている。
価格が2,990円という点も、この商品の性格を示している。競技用のウェアとして開発されたデザインでありながら、専門ブランドの試合用ウェアと比べれば手に取りやすい水準だ。応援の気持ちで買う層と、実際にテニスで着る層の両方を想定できる価格帯といえる。
アンバサダー契約を通じた商品展開は、同社が継続して行っている取り組みだ。世界をリードするアスリートを迎え、そのパフォーマンスを支えると同時に、そこで得た視点を普段着の開発に生かすという考え方を掲げている。今回のように、選手のキャリアの節目に合わせて商品を出す形は、契約期間を通じた物語の締めくくりにもあたる。
スポーツ選手との契約を持つブランドにとって、引退はひとつの区切りであり、同時に商機でもある。その扱い方をどう設計するかは、ブランドの姿勢が表れる部分といえる。