米ウォルマート(Walmart)は、医療従事者の不足に直面する農村部の顧客の健康づくりを支えるため、薬剤師が担う新たな役割「ヘルスアンバサダー」を、6カ月間の試験導入として始めると発表した。処方薬の受け取り、栄養バランスのとれた食事の計画、新しい薬に関する質問、検診の予約、通院の合間の相談といった日常の行動が、農村部では取りにくくなっているという課題意識から生まれた取り組みで、より身近で個人に寄り添った、暮らしに結びついた支援を目指す。
背景には、同社の店舗網の広さがある。米国民の約90%がウォルマートの店舗またはサムズクラブの10マイル(約16キロ)圏内に住み、全米約4,000店は医療サービスが十分に行き届いていない地域にある。日常の買い物で訪れる場所と、薬剤師が地域で築いてきた信頼関係を生かし、健康・ウェルネスの資源を顧客の生活圏で届ける狙いだ。
試験導入の対象は、テネシー州レキシントン、ミシガン州カロ、バージニア州フランクリン、カンザス州フォートスコット、アーカンソー州シアーシーなど、農村地域の店舗。各店では、地域をよく知る研修済みの薬剤師がヘルスアンバサダーを務め、調剤カウンターの外で顧客と向き合う専用の時間を確保する。顧客の健康上の目標を理解したうえで、関連するサービスや資源につなぐ役割を担う。
具体的には、対面の会話と個別のコーチングを通じて、栄養、運動、睡眠、ストレス管理に関する実践的な行動を一緒に考える。顧客のニーズに応じて、薬局の臨床サービス、予防接種、検診、視力ケア、服薬支援、同社の遠隔医療マーケットプレイス「ベター・ケア・サービス」による仮想診療、栄養に関する資源、処方薬の配送、「ウォルマート+」などのデジタルツールも案内する。売り場での会話から始まり、予約制または飛び込みのコーチング、より健康的な食品選びや買い物リストづくり、市販薬の相談、次のステップの手配まで対応する想定だ。地域の教室やイベントの支援、農村の団体との連携にも時間を充てる。
試験導入では、当初、多くの米国の家庭に影響する3つの領域に焦点を当てる。糖尿病、体重管理、母子保健だ。糖尿病や健康的な体重を目指す人には、食品の置き換え、運動、健康状態の確認、服薬、継続的な励ましなどが必要になる。妊娠中や出産後の母親には、栄養面の支援、食品の提案、セルフケア用品、予防サービスなどが求められる。ヘルスアンバサダーは、こうした個々のニーズを整理し、関連するウォルマートのサービスや地域の資源を見つけ、目標に合った次のステップにつなぐ。顧客がそれぞれの要素を一人でたどらなくて済むよう、身近な案内役を務める。
ウォルマート米国事業の最高医療責任者、エミリー・アーロンソン医師は、「健康は一か所で生まれるものではなく、一度の診察にきれいに収まることも少ない。顧客はすでに、手頃な価格の食品や日用品、便利なサービス、そして信頼する薬剤師を求めてウォルマートを訪れている。薬剤師に、耳を傾け、コーチングし、関連する支援につなぐための専用の時間を与えることで、この試験は、身近で信頼される場が、農村部の人々にとって健康の資源をいかに利用しやすく、実践的で、行動につなげやすいものにできるかを学ぶ助けになる」と述べている。
同社は、農村部の顧客が暮らし、買い物をする場所により個別化された支援を近づけることで、ケアのギャップを埋め、健康成果の改善につなげたいとしている。6カ月の試験を通じて、何が有効か、どこに追加の支援が必要か、専任のヘルスアンバサダーが健康の道のりの各要素をどうつなげられるかを見極め、今後のより利用しやすく連携した健康・ウェルネス体験づくりに生かす方針だ。
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