株式会社AOKIは、同社が運営する「ジャケジョ研究所」の情報発信として、選択にかかる負担に関する調査結果を公表した。調査は2026年8月にインターネットで実施し、ジャケットを着用する機会のある20代から50代の女性1,000件の回答を得た。調査機関は株式会社クロスマーケティングに委託している。
この調査で押さえておきたいのが、選択肢の多さが負担として認識されている点だ。
商品やサービスを選ぶ際に心のエネルギーの低下を感じることが「頻繁にある」「時々ある」と答えた人は61.7%(頻繁にある14.2%、時々ある47.5%)だった。
選ぶ際の負担(複数回答)では、「選択肢が多すぎる」が30.5%で最も高く、「失敗を避けたく決めるのに時間がかかる」が28.7%、「比較情報が多すぎる」が26.8%と続く。
1位と3位がいずれも「多すぎる」という内容になる。選択肢の数と比較の情報が、判断の負担として挙げられている形だ。
売場の側から見ると、この結果は品揃えの考え方と関わってくる。品揃えを増やせば客の選択肢は広がり、求めるものが見つかる確率も上がる。一方で、選ぶ作業そのものが負担になる場合、数が多いことが買わない理由になりうる。
比較の情報についても同じ構造がある。素材や機能、価格の違いを示せば判断の材料は増えるが、情報が多いほど比べる作業も増える形だ。
選択に疲れた後の影響も示されている。「予定より時間がかかった」が25.4%、「その後の行動が面倒になった」が21.2%、「気分が下がった・やる気がなくなった」が20.2%だった。
選ぶ作業の負担が、その場の判断だけでなく後の行動にも及ぶ形になる。店内で長く迷った客が、別の売場に向かう意欲を失う構造も含まれる。
朝の場面に関する数値も出ている。出社日の朝に負担を感じることでは、「着る服を選ぶこと」が32.2%で最も高く、「メイクや髪型を決めること」が26.9%で続く。差は5.3ポイントだ。
服選びで迷う理由は、「天気や気温に合わせること」が29.3%、「今日着る服を決めること」が28.1%、「コーディネートを考えること」が24.5%となる。
天気と気温への対応が1位に来る点は、服という商材の性質にあたる。同じ服でも気温によって着られるかどうかが変わるため、前日に決めておいても朝に見直すことになる。
新しい服を買う際に面倒と感じることでは、「手持ちの服と合わせやすいかの判断」が22.6%、「手入れのしやすさの確認」が15.6%だった。
手持ちの服と合うかという判断は、店頭ではできない部分になる。客は自分のクローゼットの中身を記憶に頼って思い出しながら、買う商品が合うかを考えることになる。試着して似合うかは鏡で分かるが、家にある服との組み合わせは確認できない。
この負担に対応する形が、手間を減らす工夫として挙げられている。「マルチウェイ・着回し力」が34.4%で最も高く、「セットアップ化」が26.6%、「機能性」が21.8%と続く。
上位2つは、いずれも選択の回数を減らす商品の形になる。マルチウェイは1着で複数の着方ができる形で、着回し力があれば手持ちの服との組み合わせが広がる。セットアップは上下が組になっているため、組み合わせを考える作業が不要になる。
この2つを合わせると61.0%に達する。売場での提案という面では、商品の点数を増やすのではなく、1点で複数の場面に対応できる商品を示す形が対応になる。
選択の負担を減らしたいという意向も数字に出ている。選択の効率化を高めたいと思う人は68.5%(非常にそう思う19.6%、まあまあそう思う48.9%)、それが改善すると心のエネルギーが高まると思う人は70.0%(非常にそう思う18.0%、まあまあそう思う52.0%)だった。
得られるメリットとしては、「精神的ストレスの軽減」が37.0%、「本当にやりたいことに時間を使える」が26.5%、「失敗のリスクが減る」が23.8%と挙げられている。
判断の際に信頼する情報源・サービスでは、「友人・家族の口コミ」が28.5%、「信頼するブランド・メーカー」が27.8%、「AIによるパーソナル提案」が24.6%となった。
上位2つの差は0.7ポイントでほぼ同率だ。ブランドへの信頼が口コミと同じ水準に並ぶ形は、売る側の立場に関わる部分になる。商品ごとの比較ではなく、ブランドで選ぶ形であれば、客の判断にかかる負担は減る。
AIによる提案が24.6%で3位に入る点も、選択の方法の変化を示している。約4分の1が判断の材料として挙げる水準だ。
負担を減らすために実際に行っている工夫では、「前日までに予定や身支度を決めておく」が25.4%、「自分なりの判断基準やマイルールを決める」が24.9%だった。
このほか、脳研究者で東京大学薬学部教授の池谷裕二氏(ジャケジョ研究所の特任研究員)がインタビューに登場している。選択は比較や天秤にかける作業で脳への負荷が高く、負荷が続くと冷静な判断が難しくなる「自我消耗」が起きると説明している。
朝は脳の立ち上がりが十分でない時間帯で、服選びは複雑な判断にあたるため負担になりやすいとした。脳はパターン化や自動化が得意なため、マイルールやセットアップで選択の回数を減らすことは理にかなっているとしている。
AIの活用については、能力の退化ではなく、AIが示す選択肢から最適なものを見抜く判断力が問われるようになると述べている。