キャンプ女子株式会社が手掛ける福岡発の無添加お香ブランド「CRYSTAL INSENCE」は、2026年8月26日から9月8日まで、博多阪急8階の催事スペースで同店初となるポップアップストアを開催した。同社が終了後のレポートを公表している。

催事を受け入れる側から見ると、この事例には示唆がある。オンライン販売が中心のブランドにとって、百貨店の催事スペースが何を提供できるかがはっきり示されているためだ。

同ブランドのお香は天然素材100%の無添加で、手作りのため一度に大量生産できない。季節や気温、湿度にも左右されるため、公式オンラインショップで10種類の香りが同時に並ぶことはほとんどないという。今回は定番品と限定品を含む最大10種類を用意した。これほど多くの香りを一堂に並べたのは、ブランドとして初めてだとしている。

在庫の制約でECでは実現できない品揃えを、会期を区切った催事でなら用意できるという構図だ。生産量の限られる作り手にとって、催事は総力を投入できる場になる。

来場者から寄せられた声も、対面の価値を示している。オンラインでしか販売していなかったので実物を見たかった、香りを確かめてから選べてよかった、作り手である香司の話を聞けてよかった、日本の手仕事に興味が湧いた、といった内容だ。Instagramでも、来場者による投稿が見られたという。

香りという商材は、画面では伝わらない典型例にあたる。写真と説明文だけで選ぶことになるECでは、購入をためらう層が必ず残る。試せる場所を用意することは、その層を動かす手段になる。百貨店が催事で扱う商材を選ぶ際の判断軸としても、体験が必要かどうかは分かりやすい基準といえる。

作り手が会場に立っている点も見逃せない。商品の説明だけでなく、なぜ作っているのかという背景を直接伝えられる。これは店舗のスタッフによる接客では代替しにくい要素であり、催事ならではの価値になる。

同社は催事に来られなかった人へ向けて、ブランドムービーも公開した。忙しさの中で自分を後回しにしてしまう女性が、子どもが眠った後にお香とともに過ごす15分間を描いた作品で、後半では作り手が手仕事に込める思いを語る内容だという。催事で得た反応を、その後の発信に転用する流れになっている。

なお博多阪急での出店は終了しており、現在は公式オンラインショップと常時取扱店で購入できる。取扱店は福岡市中央区と東京都渋谷区の2店舗だ。

同ブランドは2024年の誕生で、原料には水車を使った伝統製法で挽いた無農薬のつなぎ粉と、国産天然水晶の微粒子を使用している。広告を出さず、SNSでの口コミのみで、2026年3月時点の累計は25万本に達したという。