米アマゾン(Amazon)傘下の高級スーパーマーケットチェーン、ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)は、米国内の従業員10万人以上を対象に、今後1年間で総額2億3000万ドル超を投じる大規模な賃上げ・福利厚生拡充を実施すると発表した。記事はアマゾン・ワールドワイド・グロサリー・ストアーズ担当バイスプレジデント兼ホールフーズ・マーケットCEOのジェイソン・ビューケル氏が2026年9月10日付で執筆したもので、同社史上でも有数の規模の従業員投資になるとしている。ビューケル氏は、毎年全米の店舗を訪れ現場従業員の声に直接耳を傾けてきたとし、精肉・鮮魚の専門資格取得を支援する見習い制度でこれまでに2150人以上が資格を取得したことなど、これまでも従業員からの意見をもとに改善を重ねてきたと振り返った上で、今回の投資は「昇給の道筋の明確化」「より手厚い医療保障」「パートタイム向け福利厚生の拡充」という、従業員が長年求めてきた声に応えるものだと説明している。
柱の一つが福利厚生の拡充だ。2027年1月1日付で、米国内の従業員はアマゾンの包括的な福利厚生制度を利用できるようになる。フルタイムの対象従業員は、週5ドルから加入できる医療保険プランを選択でき、プライマリケアや行動医療の自己負担は5ドルに抑えられるほか、追加費用なしで同日診療・オンライン診療が受けられる「ワン・メディカル」の会員資格も付帯する。会社負担の短期・長期障害保険が無料で自動的に適用されるほか、アマゾンの医療プランに加入すると不妊治療・家族形成支援やがん治療のサポート・ナビゲーションも受けられるようになる。出産する従業員には最大20週間、養育・養子縁組を行う従業員には最大6週間の有給育児休暇も拡充される。これらにより、フルタイム従業員が受けられる福利厚生の総価値は75%以上増加するという。さらに全時給制従業員には、年間139ドル相当のアマゾンプライム無料会員資格や、アマゾン・ファーマシーでの低価格処方薬などの特典も新たに付与される。これらは、店舗従業員がすでに利用している業界屈指の水準とされる「店内20%割引」といった既存特典に上乗せされる形となる。週20時間以上勤務するパートタイム従業員約2万人についても、歯科・視力保険と無料の基本生命保険が新たに適用される。小売業界ではパートタイム従業員向けにこうした保障を提供する例は珍しいという。
賃金面では、9月28日付で全ての時給制店舗従業員の報酬が引き上げられる。従来の人事評価に基づく昇給モデルに代わり、勤続年数に応じて毎年予測可能な昇給が受けられる、よりシンプルで安定した仕組みに移行する。今回の投資により、店舗従業員の平均時給は21ドル超に、選択した福利厚生の価値を含めた総報酬は時給換算で29ドル超になるという。
キャリア支援策としては、2027年内にアマゾンの教育支援制度「キャリア・チョイス」の利用も可能になる。同制度は大学の学費や職業訓練、資格取得費用を会社が前払いする仕組みで、2012年の開始以来、30万人超のアマゾン従業員が活用してきた実績がある。ホールフーズ・マーケットでは2025年だけで店舗従業員1万2700人以上が昇進しており、今後数年間でさらに数千の新たなリーダー職ポストを創出する計画だという。
ビューケル氏は、アマゾン傘下入り以降も品質基準を強化し続けており、禁止成分のリストは約80品目から500品目以上に拡大したほか、価格引き下げやセール実施回数の倍増などを進めてきたと説明。店舗数も550店舗以上に達し、さらに100店舗以上が開発中だとしている。創業45年を迎えたホールフーズ・マーケットにとって「これまでで最も良い状態にある」とした上で、成長すればするほど、現場を支える従業員への投資を拡大できると結んでいる。
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