米スターバックス(Starbucks)は、同社が完全に自社設計した初のコーヒー抽出機「クローバー・バーティカ(Clover Vertica)」が、店舗でのコーヒー体験をどのように変えつつあるかを紹介した。同機は2022年から店舗への導入が始まり、現在では米国内のスターバックス直営店の90%以上に設置されているという。

クローバー・バーティカは、ライト・ミディアム・ダークの各ロースト、デカフェを含む6種類の豆から選び、注文後わずか30秒でフレンチプレス品質の淹れたてコーヒーを提供できる仕組み。従来はバッチ方式で大量に抽出したコーヒーを保温しておく必要があり、淹れたてを飲むには抽出が終わるのを待たなければならなかったが、この機械の導入により、来店客は一杯ごとに淹れたてのコーヒーをすぐに受け取れるようになった。1990年代からスターバックスに通うという常連客グレッグ・ハンター氏は、「淹れたてのコーヒーを飲んで朝を始めるのが好きで、目の前で淹れてもらえることが来店理由の一つだ。より熱くて新鮮だから」と話している。太平洋岸北西部で店舗責任者を務める勤続29年近くのパートナー、カイル氏も、「クローバー・バーティカが提供する味わいとバリエーションを、お客様に楽しんでいただけている」とし、抽出サイクルを細かく管理する必要がなくなったことで、より多くの時間を接客に充てられるようになったと述べている。

同機の開発は2008年、スターバックスがシアトルを拠点とするコーヒー・イクイップメント・カンパニーと、同社が持つ真空プレス式の抽出技術「クローバー」を買収したことにさかのぼる。もともとのクローバーは1杯ずつ抽出する仕組みだったが、開発チームはこの方式を土台に、現代の忙しい店舗の速度・量・複雑さに対応できる抽出機の開発に挑んだ。プロジェクトに携わったエンジニアのジョー・ゴームリー氏は、「コーヒーの品質という点でフレンチプレスに近いものを目指した。淹れたてのコーヒーを、その場で抽出して提供したかった」と振り返る。開発初期のバージョンは数杯分を淹れるとすぐに再加熱が必要になるなど、忙しい朝の時間帯に対応できなかったため、ゴームリー氏は「2〜3杯しか淹れられないのでは、忙しい朝を乗り切れない。何か違うものを考える必要があった」と振り返る。チームは性能やサイズ、保守性を一から見直し、最終的に2つの抽出タワーが独立して稼働できるモジュール設計を採用した。これにより、一方のタワーをメンテナンスしている間も、もう一方は稼働を続けられるという。最終的なデザインの完成には、エンジニアリングやコーヒー、店舗運営、工業デザイン、機器サービスなど、部門を横断した従業員の知見が反映されており、ゴームリー氏は「スターバックスではあらゆることが共同作業で行われる。一人だけで何かが生み出されることはない」と述べている。

スターバックスの設備在庫部門で流通業務を統括し、勤続31年のジェフ・ワトソン氏は、歴代の抽出機を記録・保存してきた人物で、1995年入社当時は「アメリカン・メタルウェアP-400」、その後「バン・デジタル・ブリューワー」を経て、現在のクローバー・バーティカに至ったと振り返る。同氏は2010年に初期の試作機を見た際にはまだ課題が多いと感じたというが、後の試作機を見て、この技術が機構的にも見た目にも店舗にふさわしいものへと仕上げられる自信を持ったと話す。「豆がホッパーに入っていた30秒前の状態から、淹れたての一杯としてお渡しできる。ほかにこんなことができる機械があるだろうか」とワトソン氏は語り、この抽出機がスターバックスのコーヒーへのこだわりを体現するものだと評価している。

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