JR九州ファーストフーズ株式会社は、ドイツ・ミュンヘンのデリカテッセン・ガストロノミーブランドであるFeinkost Käferとフランチャイズ契約を締結し、日本初出店となるレストラン「Käfer ALPS KITCHEN」を福岡市中央区天神にオープンした。開業日は2026年8月4日で、場所は同日に開業した天神ビジネスセンターⅡの1階。営業時間は8時から22時までとなっている。

同店ではミュンヘンのKäfer本店をベースとしたホスピタリティコンセプトのもと、アルプスの伝統的な食文化を提供する。アルプス料理とは、ドイツのバイエルン地方を中心に、オーストリア、スイス、北イタリアのアルプス地方に広がる伝統的な料理を指す。アルプスの歴史と文化に深く根ざしており、この地域独特の地理的条件と気候条件を反映しているという。

メニューには、オクトーバーフェストで人気を集めるKäfer名物のドイツ版おつまみ盛り合わせ、オリジナル、チリ、マウンテンチーズの3種から選んで組み合わせられるソーセージの盛り合わせが並ぶ。定番フードとして、細かく引いた肉と香味野菜、香辛料を型に入れて焼き上げた伝統料理レバーケーゼをカイザーセメルで挟んだ一品も用意される。オーストリアを代表する料理として、薄く伸ばした豚肉にきめ細やかなパン粉をまとわせて揚げ、コケモモのジャムを添えたものも提供される。

飲料面では、ミュンヘンの6大ブリュワリーの1つで、オクトーバーフェストでもおなじみの醸造所であるパウラーナーのビールを楽しめる。デザートには、オーストリアやバイエルンで親しまれている、パンケーキを小片に分けてラム酒で仕上げたボリュームのある一品が用意されている。

パートナーとなるFeinkost Käferは、1930年にミュンヘンで食品小売業として設立された企業だ。1960年代にガストロノミーとイベントケータリングへ事業を拡大し、現在は中央ヨーロッパで最も有名な美食・ホスピタリティ・高品質の食品ブランドの1つに数えられる。ミュンヘン本店に加え、オクトーバーフェストの専用大型フェスティバルテントや、ベルリンのドイツ連邦議会でのレストラン運営も手掛けている。

出店の座組みという観点で見ると、この事例には注目すべき点がいくつかある。まず、海外ブランドの日本進出をフランチャイズ契約という形で実現していること。ブランド側が直接日本法人を立ち上げるのではなく、国内で店舗運営の実績を持つ企業がライセンスを受けて運営する形だ。JR九州ファーストフーズは1989年にJR九州グループの外食部門として設立され、現在は九州や関東などの地域で11ブランド約240店舗を運営している。ファストフード業界のメガフランチャイジーとして培ってきた運営力を、高価格帯とみられるレストラン業態に振り向けた形になる。

もう1つが、出店先を東京ではなく福岡に選んだ点だ。海外ブランドの日本1号店は東京に置かれることが多いが、今回は運営会社の地元が選ばれている。開業したのが天神の新しいオフィスビルの1階という立地も、朝8時からの営業時間と合わせて考えると、ビジネス街の需要を意識した設計であることがうかがえる。朝から夜まで通しで営業する形は、モーニングからランチ、カフェ利用、そしてディナーまでを1店舗で拾う構成といえる。

店舗づくりについても、本場の再現に力が入っている。報道によれば、ミュンヘンの本店を手掛けたデザイナーと共同で設計し、机や椅子などの調度品や内装の多くをヨーロッパから輸入したという。ブランドカラーであるえんじ色のタイルは、イタリアの工房に特注したとされる。フランチャイズであっても、空間の質までブランド側の水準に合わせるという判断だ。

海外ブランドの導入を検討する事業者にとっては、契約から開業までの時間感覚も参考になる。報道では、同社の社長がミュンヘンの本店を訪れて世界観に感銘を受けたことがきっかけで、コロナ禍による中断を挟みながら足掛け8年近くにわたって協議を重ねてきたとされている。ブランド側の水準を満たす体制を整えるには、それだけの期間が必要になるということでもある。

なお、ドイツ料理やアルプス料理は、日本ではオクトーバーフェストなどのイベントを通じて認知されてきた分野だ。単発の催事ではなく常設の店舗としてどこまで定着するかは、朝から夜までの通し営業をどう埋めていくかにかかってくる。都市部のオフィスビル内で、海外ブランドの飲食業態がどう根付くかという点でも、注目される事例といえる。