22時から翌5時までの深夜に働かせた場合は、通常の賃金の25%以上の深夜割増賃金を支払う必要があります。閉店が遅い飲食店では、深夜割増と時間外割増が重なる場面が日常的に発生します。

この記事は、飲食店や深夜営業のある小売店の経営者、店長、勤怠・給与の担当者に向けたものです。パート・アルバイトにも同じルールが適用されるため、シフトを組む立場の人ほど押さえておきたい内容です。

割増賃金の種類と率、深夜と時間外が重なる場合の計算例、休憩と休日のルール、法定休日と所定休日の違い、労働時間の端数処理、閉店後作業の扱いを順に解説します。計算例には、2026年10月1日発効の東京都最低賃金1,280円を使います。

1. 割増賃金の種類と割増率

労働基準法では、法定労働時間を超える労働、法定休日の労働、深夜の労働に対して、割増賃金の支払いを義務づけています。主な割増率は次のとおりです。

労働の種類条件割増率(以上)
時間外労働1日8時間・週40時間を超えた労働25%
時間外労働(月60時間超)1か月の時間外労働が60時間を超えた部分50%
休日労働法定休日の労働35%
深夜労働22時〜翌5時の労働25%
時間外+深夜時間外労働が深夜に及んだ部分50%
休日+深夜法定休日の労働が深夜に及んだ部分60%

月60時間を超える時間外労働の50%は、大企業では以前から適用されていましたが、中小企業にも2023年4月1日から適用されています。飲食店も企業規模にかかわらず対象です。

なお、商業や接客娯楽業(飲食店を含む)で、常時10人未満の労働者を使用する事業場は「特例措置対象事業場」として、法定労働時間が1日8時間・週44時間になります。規模は会社全体ではなく、店舗など個々の事業場ごとに判断します。

1時間当たりの賃金の出し方

時給制の人は時給がそのまま基礎になります。月給制の人は、月給額を1か月の所定労働時間数で割って1時間当たりの賃金を出し、そこに割増率を掛けます。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当などは、割増賃金の基礎から除外できる賃金とされています。

2. 深夜と時間外が重なる場合の計算例

時給1,280円(東京都の2026年度最低賃金)のアルバイトを例に、各割増の時給を計算すると次のようになります。

区分計算式1時間当たりの賃金
通常の労働1,280円×1.001,280円
深夜のみ(所定内)1,280円×1.251,600円
時間外のみ1,280円×1.251,600円
時間外+深夜1,280円×1.501,920円
法定休日1,280円×1.351,728円
法定休日+深夜1,280円×1.602,048円

例:14時〜24時のシフト(休憩1時間)

14時出勤、18時〜19時に休憩1時間、24時退勤のシフトで考えます。実労働時間は9時間です。その週の労働時間は、この日の8時間までは週40時間の範囲内に収まっている前提とします。

  • 14時〜18時、19時〜22時:7時間(通常) 1,280円×7時間=8,960円
  • 22時〜23時:1時間(8時間目・深夜のみ) 1,600円×1時間=1,600円
  • 23時〜24時:1時間(9時間目・時間外+深夜) 1,920円×1時間=1,920円

この日の賃金は、8,960円+1,600円+1,920円=12,480円です。深夜の2時間を一律に1.25倍で計算すると、23時〜24時の分が320円少なくなってしまうため、注意が必要です。

例:月の時間外労働が65時間になった場合

同じ時給1,280円の人が、1か月に深夜にかからない時間外労働を65時間した場合を考えます。60時間までは25%、60時間を超えた5時間は50%で計算します。

  • 60時間分:1,600円×60時間=96,000円
  • 超過5時間分:1,920円×5時間=9,600円

時間外労働の賃金は合計105,600円です。月60時間を超える長時間の時間外労働は36協定の上限規制にも関わるため、そもそも発生させないシフト設計が重要です。

2026年10月から東京都の最低賃金は1,226円から1,280円に上がりました。最低賃金ぎりぎりの時給で設定している店舗は、基本時給と割増の基礎となる時給の両方を見直してください。最低賃金の詳細は関連記事「2026年度最低賃金」で、時間外労働の上限は「36協定と残業の上限規制」で解説しています。

3. 休憩時間のルール

与える時間の長さ

労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。6時間ちょうどなら休憩なしでも法律上は問題ありませんが、少しでも超えれば45分以上が必要です。

1日の労働時間必要な休憩
6時間以下法律上の義務なし
6時間超〜8時間以下45分以上
8時間超1時間以上

45分休憩のシフトで残業が発生し8時間を超えた場合は、追加で15分以上の休憩が必要になります。残業が出やすい店舗では、最初から1時間の休憩を設定しておくと管理が楽です。

休憩の3原則と飲食店の例外

休憩には「労働時間の途中に与える」「一斉に与える」「自由に利用させる」という3つの原則があります。ただし一斉付与については、商業や接客娯楽業など一部の業種が例外とされているため、飲食店や小売店は交替で休憩を取らせることができます。

注意したいのは自由利用の原則です。休憩中に電話番や来客対応をさせると、その時間は休憩ではなく労働時間と判断される可能性があります。客席で待機させながら「休憩」と扱う運用は避けましょう。

4. 休日のルールと法定休日・所定休日の違い

使用者は、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。この法律で義務づけられた休日を「法定休日」と呼びます。これに対し、会社が就業規則などで独自に定めた、法定休日以外の休日が「所定休日(法定外休日)」です。

たとえば週休2日制で日曜を法定休日、土曜を所定休日としている場合、日曜に働かせると35%の休日割増、土曜に働かせた分は週40時間を超えれば25%の時間外割増になります。所定休日の労働は「休日労働」ではない点を押さえておきましょう。

また、法定休日の労働は時間外労働として扱われないため、法定休日に8時間を超えて働かせても、割増率は休日労働の35%です(深夜に及べば60%)。どの曜日を法定休日とするかを就業規則で明確にしておくと、計算の誤りを防げます。

  • 法定休日:週1日または4週4日。労働させると35%以上の割増
  • 所定休日:会社が独自に定める休日。労働させると、週40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えた部分に25%以上の割増

5. 労働時間の端数処理と閉店後作業

端数処理は「1分単位」が原則

労働時間は1分単位で把握し、毎日の労働時間を15分単位や30分単位で切り捨てることは法違反になります。労働局には、残業を15分単位で切り捨てる、始業前の準備作業を記録しないといった相談が寄せられています。

認められている端数処理は、次のような月単位の処理です。

  • 1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれの合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる
  • 1時間当たりの賃金や割増賃金額に円未満の端数がある場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる
  • 1か月の割増賃金の総額に円未満の端数がある場合も、同じく50銭を境に処理する

閉店後の片付け・清掃は労働時間

厚生労働省のガイドラインでは、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間に当たるとされています。業務終了後に事業場内で行う清掃や後始末、着用を義務づけられた制服への着替え、すぐ対応できるよう待機している手待時間も労働時間です。

飲食店では「打刻後にレジ締めや清掃をする」「閉店時刻で一律に退勤扱いにする」といった運用が起こりがちです。閉店後の作業が22時以降に及べば深夜割増の対象にもなるため、作業が終わった時刻で打刻する運用にしてください。

実務チェックリスト

  • □ 22時〜5時の労働に25%以上の深夜割増を支払っている
  • □ 1日8時間を超えた深夜の時間は50%以上で計算している
  • □ 月60時間を超える時間外労働に50%以上を適用している
  • □ 就業規則で法定休日の曜日を特定している
  • □ 6時間超で45分、8時間超で1時間の休憩を確保している
  • □ 休憩中に電話番や接客をさせていない
  • □ 労働時間を1分単位で記録し、日々の切り捨てをしていない
  • □ 閉店後の清掃・レジ締めを労働時間として打刻させている
  • □ 2026年10月以降の最低賃金を下回る時給がない

よくある質問

Q. 深夜割増は、深夜専門で雇ったアルバイトにも必要ですか。

A. 必要です。深夜割増は22時〜翌5時に働いた時間に対して発生するもので、深夜帯の勤務を前提に雇った人でも25%以上の割増が必要です。

Q. 1日7時間のシフトなら、休憩は45分でよいですか。

A. はい、6時間超8時間以下なので45分以上で足ります。ただし当日に残業して8時間を超えた場合は、合計1時間以上になるよう休憩を追加する必要があります。

Q. 毎日の勤怠を15分単位で丸めてもよいですか。

A. 切り捨ての方向に丸めることは認められません。端数処理として認められているのは、1か月の時間外・休日・深夜の合計時間について30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げる方法などです。

Q. 土曜と日曜のどちらに働かせると35%になりますか。

A. 就業規則で法定休日と定めた日の労働が35%の対象です。特定していない場合の扱いは解釈が分かれる場面があるため、法定休日の曜日をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

まとめ

飲食店では、深夜(22時〜5時)の25%、時間外の25%、両方が重なる部分の50%を正しく分けて計算することが基本です。月60時間超の時間外は中小企業でも50%で、2026年10月からは東京都で時給1,280円を基礎に計算する店舗も多くなります。

休憩は6時間超で45分、8時間超で1時間を、交替制でも自由に使える形で与えます。法定休日の曜日を特定し、労働時間を1分単位で記録して、閉店後作業も含めて正しく打刻する体制を整えましょう。

出典