パート・アルバイトでも、雇い入れから6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば、年次有給休暇(以下、有給)を与えなければなりません。週の所定労働日数が少ない人には、日数に応じて少なめに付与する「比例付与」が適用されます。
この記事は、パート・アルバイトを多く雇う小売店・飲食店の経営者、店長、シフト管理の担当者に向けたものです。「週3日勤務の人は何日か」「シフトで日数が毎月変わる人はどう判定するか」といった、現場で迷いやすい点を中心に整理しました。
付与要件、通常付与と比例付与の日数表、シフト制の場合の判定方法、年5日取得義務、管理簿と罰則、有給の賃金計算、時季変更権・退職時・計画的付与まで順に解説します。数字は厚生労働省と労働局の資料で確認したものです。
1. 有給休暇が発生する2つの要件
有給は、正社員だけの制度ではありません。雇用形態にかかわらず、次の2つを満たした労働者に発生します。
- 雇い入れの日から6か月間、継続して勤務していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤していること
その後は、最初の付与日(基準日)から1年ごとに、前の1年間の出勤率が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。付与された有給の時効は2年なので、使い切れなかった分は翌年度まで繰り越せます。
出勤率の計算で「出勤したもの」とみなす期間
8割の計算では、休んでいても出勤したものとして扱わなければならない期間があります。労働局の解説では、次の期間が挙げられています。
- 業務上のけがや病気の療養のために休業した期間
- 育児休業・介護休業の期間
- 産前産後休業の期間(労働基準法第65条によるもの)
これらを欠勤として扱うと、本来付与すべき有給が付与されないことになります。勤怠システムの区分設定を一度確認しておくと安心です。
2. 付与日数の表(通常付与と比例付与)
通常付与(週30時間以上、または週5日以上の人)
正社員のほか、パート・アルバイトでも週の所定労働時間が30時間以上の人、または週5日以上勤務する人は、次の表の日数が付与されます。
| 継続勤務期間 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
比例付与(週4日以下かつ週30時間未満の人)
比例付与の対象は、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下(週以外の期間で日数を定めている場合は年間216日以下)の人です。週4日以下でも、週30時間以上働く人は比例付与ではなく通常付与になります。
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
たとえば、週3日・1日5時間(週15時間)で働くアルバイトは、6か月経過時に5日、1年6か月経過時に6日が付与されます。週4日・1日8時間(週32時間)の人は週30時間以上なので、通常付与の10日です。
3. シフト制で週の日数が変わる人の判定
シフト制では「週何日勤務か」が決まっていないことがよくあります。週ではなく月や年単位で労働日数を定めている場合は、表の「1年間の所定労働日数」の欄で判定します。たとえば年間の所定労働日数が150日なら、週3日の行(121〜168日)を使います。
基準日の時点で所定労働日数そのものを算出しにくい場合について、厚生労働省は2026年6月19日に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を改正し、取扱いを示しました。概要は次のとおりです。
- 雇い入れ6か月経過後の付与:雇い入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数で判定できる
- 雇い入れ1年6か月経過後以降の付与:前年の労働日数の実績で判定できる
- 労働契約で「目安となる労働日数」を定めている場合の扱いにも留意点がある
- 所定労働日数が定まっていないことだけを理由に、有給を与えないことはできない
たとえば、最初の6か月で実際に70日勤務した人は、70日×2=140日として、年間121〜168日の区分(6か月時点で5日)で判定する考え方です。目安日数を定めている場合の細かな扱いは、留意事項の原文で確認してください。
4. 年5日の取得義務と時季指定
対象になる人
2019年4月から、使用者は、年10日以上の有給が付与される労働者に対し、付与日から1年以内に5日を確実に取得させることが義務になりました。対象は「法定の付与日数が10日以上」の人で、前年度からの繰越分は数えません。
パート・アルバイトも対象になり得ます。比例付与の表で10日以上になるのは、週4日勤務の人は勤続3年6か月以降、週3日勤務の人は5年6か月以降です。週2日以下の人は、表の上では10日に届きません。
時季指定のやり方
本人が自分で取得した日数や、計画的付与で取得した日数は、5日から差し引けます。たとえば本人が3日取得し、計画的付与で2日取得していれば、使用者による時季指定は不要です。
5日に届かない場合は、使用者が取得日を指定します。その際は本人の意見を聴き、できる限り希望に沿うよう努めなければなりません。時季指定の対象となる労働者の範囲と指定の方法は、就業規則に記載する必要があります。
半日単位の有給は、本人が取得した場合に0.5日として5日から差し引けます。一方、時間単位の有給は、本人が取得しても5日から差し引くことはできません。
年次有給休暇管理簿
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作り、時季(取得日)、日数、基準日を記録します。保存期間は、厚生労働省の解説で3年間とされています。東京都の資料では、労働者名簿や賃金台帳などの帳簿類と同様に「3年間(経過措置。本則は5年)」と説明されています。
5. 罰則と違反しやすい場面
| 違反内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 年5日の有給を取得させなかった | 労働基準法第39条第7項(罰則は第120条) | 30万円以下の罰金 |
| 時季指定について就業規則に記載していない | 労働基準法第89条(罰則は第120条) | 30万円以下の罰金 |
| 労働者が請求した時季に有給を与えなかった | 労働基準法第39条(罰則は第119条) | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
小売・外食の現場では、「人手が足りないから」という理由で申請を断ったり、パートには有給がないと説明したりするケースが問題になりやすいです。また、有給を取った人の賃金を減らしたり、評価を下げたりする不利益な取扱いをしないことも求められています。
6. 有給の賃金計算・時季変更権・退職時・計画的付与
有給を取った日の賃金
有給を取った日に支払う賃金は、次の3つのうちいずれかで、就業規則などに定めた方法によります。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険の標準報酬日額に相当する金額(労使協定が必要)
時給制のアルバイトで「通常の賃金」を選んでいる場合、時給1,280円で所定労働時間が5時間の日に有給を取れば、1,280円×5時間=6,400円です。日によって所定労働時間が違う人は、その日のシフトの時間で計算します。
時季変更権
有給は、原則として労働者が希望した日に与えます。ただし、事業の正常な運営が妨げられる場合に限り、使用者は別の日に変更してもらうことができます(時季変更権)。「忙しい時期だから」という漠然とした理由だけでは足りないと考えておくべきです。
退職時の消化
退職予定者がまとめて有給を申請した場合、退職日を超えて時季を変更することはできません。有給は退職日以降に取ることができないためです。引き継ぎが必要なら、早めに退職日と消化日程を本人と話し合うことが現実的な対応です。
計画的付与
労使協定を結べば、あらかじめ決めた日に有給を計画的に割り振ることができます。ただし対象は、付与日数のうち5日を超える部分に限られます。たとえば10日付与の人なら、計画的付与にできるのは最大5日です。店舗の閑散期や棚卸日に合わせて設定すると、年5日の取得義務の達成にもつながります。
実務チェックリスト
- □ パート・アルバイト全員の入社日と基準日を一覧にしている
- □ 週の所定労働時間30時間以上かどうかで、通常付与と比例付与を分けている
- □ シフト制の人の年間所定労働日数(または実績)を基準日ごとに確認している
- □ 出勤率の計算で、業務上の休業・育児休業・産前産後休業を出勤扱いにしている
- □ 年10日以上付与される人を抽出し、取得日数を毎月確認している
- □ 時季指定の対象範囲と方法を就業規則に記載している
- □ 年次有給休暇管理簿を労働者ごとに作成・保存している
- □ 有給の賃金計算方法を就業規則に定めている
よくある質問
Q. 週1日だけ働く学生アルバイトにも有給はありますか。
A. あります。週1日(年間48〜72日)勤務で6か月継続勤務し、8割以上出勤していれば、1日が付与されます。年間の所定労働日数が48日未満の場合は、比例付与の表の対象外です。
Q. 契約更新を繰り返している有期契約のパートは、勤続年数をどう数えますか。
A. 継続勤務かどうかは、実態で判断されます。短期契約を更新して働き続けている場合も、付与日数の対象となる考え方が労働局から示されています。契約の切れ目ごとに勤続をリセットする運用は避けるべきです。
Q. 年5日の取得義務は、週3日勤務のパートにも関係しますか。
A. 勤続5年6か月以上で10日以上付与されるようになると対象です。それ未満の付与日数(9日以下)の間は、取得義務の対象ではありません。
Q. 有給を取った日の賃金に、深夜手当は含めますか。
A. 「通常の賃金」で支払う場合の具体的な範囲は、就業規則の定め方や勤務の実態によって変わります。深夜帯のシフトが多い人の扱いは、労働基準監督署や社会保険労務士に確認することをおすすめします。
まとめ
パート・アルバイトでも、6か月継続勤務と8割以上の出勤で有給が発生します。週30時間未満かつ週4日以下(年216日以下)なら比例付与の表を使い、シフト制で日数を決めにくい人は2026年6月改正の留意事項に沿って実績から判定できます。
年10日以上付与される人は、パートでも年5日の取得義務の対象です。基準日・付与日数・取得日数を管理簿で一元管理し、就業規則の記載と賃金計算の方法をあわせて整えておきましょう。