イートインとテイクアウトの税率は、商品を提供する時点で、顧客がその場で飲食するか持ち帰るかを確認して判定します。店内飲食(外食)は10%、持ち帰りは軽減税率の8%で、後から顧客の行動が変わっても、原則として販売時の判定が基準になります。
この記事は、イートインスペースのあるコンビニ・スーパー・ベーカリー、テイクアウトを扱う飲食店、フードコートや屋台で営業する事業者と、そのレジ運用や経理を担当する方に向けたものです。
国税庁の「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」をもとに、判定の基準と「飲食設備」の考え方、迷いやすいケース、意思確認の方法と掲示例文、レシートの記載、2027年4月から予定されている飲食料品1%への引下げで税率差が広がる点を説明します。
判定の基本:「外食」かどうかで決まる
外食とケータリングは10%
軽減税率(8%)の対象は、酒類を除く飲食料品の譲渡です。ただし、飲食店業等を営む事業者が、飲食に用いられる設備がある場所で行う「食事の提供」(外食)は対象外で、10%になります。
顧客が指定した場所で加熱・調理・給仕などの役務を伴って飲食料品を提供する「ケータリング等」も、同じく10%です。一方、テイクアウトや出前・宅配のように、飲食料品を単に販売したり届けたりするだけなら8%です。
判定は提供時点の意思確認で行う
国税庁Q&A(問58)は、店内飲食と持ち帰りの両方ができる店では、飲食料品を提供した時点で、その場で飲食するのか持ち帰るのかを相手方に意思確認するなどの方法で判定するとしています。
つまり、同じ商品でも顧客の申し出によって税率が変わります。レジでの確認と、その結果をPOSに正しく入力する運用が判定の中心です。
「飲食設備」の考え方
飲食設備とは、テーブル、椅子、カウンターなど飲食に用いられる設備をいいます。セルフサービスの店でも、顧客にテーブルや椅子を使わせて飲食させていれば外食になります(問50)。
スーパーの休憩スペースのように、本来は休憩用の設備でも、実際に飲食に使わせていれば飲食設備に当たります。逆に「飲食はお控えください」と掲示し、実態として飲食させていない場合は飲食設備に当たらないとされています(問53)。
迷いやすいケースの判定一覧
国税庁Q&A(個別事例編)で示されている主なケースを、店舗で迷いやすい順にまとめました。カッコ内は同Q&Aの問番号です。
| ケース | 税率 | 考え方 |
|---|---|---|
| コンビニのイートインスペースで食べる弁当・ホットスナック(問52) | 店内飲食は10%、持ち帰りは8% | 顧客に意思確認して判定。持ち帰り前提の店では掲示による確認でもよい |
| フードコートでの飲食(問65) | 10% | テーブル等をショッピングセンターが設置していても、テナントとの合意等に基づき顧客に使わせていれば食事の提供 |
| 屋台・フードイベント(問51) | 設備の有無で異なる | テーブル・椅子等を設置または利用させれば10%。設備がなければ8% |
| 公園のベンチの近くで移動販売(問66) | 8% | 誰でも自由に使えるベンチは飲食設備に当たらない |
| 店内で食べ残した料理の持ち帰り(問59) | 10% | その場で飲食するために提供した時点で食事の提供になる |
| ハンバーガーとドリンクのセットで、ドリンクだけ店内で飲む(問60) | セット全体が10% | 一の商品の一部をその場で飲食させるため、セット全体が食事の提供 |
| 回転寿司店の持ち帰り用パック(問61) | 8% | 持ち帰り用として注文を受けてパック詰めしたものは飲食料品の譲渡 |
| 飲食店で缶・ペットボトルのまま出す飲料(問63) | 10% | 店内で飲食させるものとして提供しているため |
| 飲食店のレジ前で売る菓子(問62) | 8% | 単に飲食料品を販売するもの |
| 出張料理・ケータリング(問75) | 10% | 顧客の指定した場所での調理等の役務を伴う提供 |
| そばの出前・宅配ピザ(問77) | 8% | 指定場所に単に届けるだけなので飲食料品の譲渡 |
| 酒類、酒類に当たるみりん・料理酒(問14) | 10% | 酒類は軽減税率の対象外。みりん風調味料は酒類に当たらず8% |
| ノンアルコールビール・甘酒(問15) | 8% | アルコール分1度未満で酒類に当たらないもの |
| ウォーターサーバーの水とレンタル料(問10) | 水は8%、レンタル料は10% | サーバーの貸付けは飲食料品の譲渡ではない |
セット商品と一体資産
おもちゃ付き菓子のように、食品と食品以外があらかじめ一体となり、1つの価格で売られる「一体資産」は、税抜価額が1万円以下で、食品部分の価額が全体の3分の2以上であれば全体が8%になります。どちらかを満たさなければ全体が10%です。
顧客が組み合わせを選べるセットは一体資産に当たらず、個々の商品ごとに合理的に価格を分けて税率を適用します。仕入れた商品をそのまま売る小売店は、仕入先が適用した税率をそのまま使える取扱いも示されています。
持ち帰りと言った後に店内で食べた場合
Q&Aには、持ち帰りと申し出た顧客が後から店内で食べた場合を直接扱う問はありません。判定はあくまで提供時点の意思確認によるため、店舗としては販売時に確認を適切に行っていることが重要です。
政府の答弁書(2018年12月)では、営業の実態と消費税の申告内容が著しく乖離するような状態にあれば、必要に応じて税務当局が事業者に指導等を行うとしています。顧客が飲食前に店内飲食へ変更を申し出た場合の差額精算など、店舗としての対応ルールを決めておくと現場が迷いません。
意思確認の方法と掲示例
業態に合わせた確認方法
Q&A(問52)は、大半の商品が持ち帰り前提のコンビニでは、全ての顧客に質問する必要はなく、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示をして意思確認を行うなど、営業の実態に応じた方法でよいとしています。
一方、ファストフード店のように店内飲食が多い業態では、レジで「店内でお召し上がりですか」と口頭で確認するのが基本です。スーパーで飲食できる商品を飲み物とパンに限定し、その旨を掲示して実態としてほかの商品を飲食させていない場合は、それ以外の商品の意思確認は不要とされています(問56)。
掲示例文
以下は、国税庁Q&Aの考え方をもとにした掲示の例です。店舗の実態に合わせて調整してください。
| 場面 | 掲示例 |
|---|---|
| レジ前(コンビニ・ベーカリー) | イートインコーナーをご利用の場合は、お会計時にお申し出ください。店内でお召し上がりの場合は消費税率10%となります。 |
| イートインスペース入口 | こちらは店内飲食用のスペースです。ご利用のお客様はお会計時にお申し出ください。 |
| 飲食できる商品を限定する場合 | イートインスペースでお召し上がりいただけるのは、お飲み物とベーカリーコーナーのパンのみです。 |
| 休憩用ベンチ | こちらのベンチでのご飲食はご遠慮ください。 |
掲示をしていても、実態として飲食が行われていれば外食と判断される可能性があります。掲示は見やすい位置に置き、スタッフが声をかけるなど実態と合わせることが大切です。
レシートの記載
小売業や飲食店業は、記載事項を一部省略した「適格簡易請求書」(簡易インボイス)を交付できます。主な記載事項は次のとおりで、適用税率と税率ごとの消費税額等はどちらか一方の記載で足ります。
- 発行者の氏名・名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額
- 適用税率、または税率ごとに区分した消費税額等
同じ商品でも店内飲食とテイクアウトで税率が変わるため、POSでは「店内」「持ち帰り」の切替えで税率が正しく変わるか、軽減税率の対象品目に「※」などの印が付くかを確認してください。
2027年4月予定の食品1%で税率差は9ポイントに
政府は飲食料品の消費税率を2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、8%から1%に引き下げる方針で、国税庁も「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」を公表しています。ただし、2026年10月1日時点で関連法案は成立しておらず、Q&Aも法案が成立した場合の内容です。
同Q&Aによると、1%の対象となる飲食料品の範囲は現在の8%の範囲と同じで、外食・酒類・ケータリング等は10%のままです。テイクアウトや出前・宅配は1%の対象になります。
| 税抜1,000円の弁当 | 現在 | 引下げ後(予定) |
|---|---|---|
| 持ち帰り | 1,080円(8%) | 1,010円(1%) |
| 店内飲食 | 1,100円(10%) | 1,100円(10%) |
| 税込価格の差 | 20円(2ポイント) | 90円(9ポイント) |
税率差が広がると、顧客が持ち帰りを選ぶ動機が強くなり、意思確認の精度がこれまで以上に問われます。レシートやインボイスも1%・8%・10%を区分して記載する形になるため、POSの設定変更の時期を早めに確認してください。制度の詳細は関連記事「食品の消費税1%」で解説しています。
店舗の運用チェックリスト
- □ 店内にテーブル・椅子・カウンターなどの飲食設備があるかを整理した
- □ 業態に合った意思確認の方法(口頭確認か掲示か)を決めた
- □ レジ前とイートインスペースに掲示を出した
- □ 飲食させない場所には「飲食はご遠慮ください」と掲示し、実態も合わせている
- □ セット商品の一部を店内で飲食する場合の扱いをスタッフに共有した
- □ 持ち帰りから店内飲食への変更を申し出られたときの精算ルールを決めた
- □ POSの「店内」「持ち帰り」切替えとレシートの税率表示を確認した
- □ 2027年4月予定の1%引下げに向けたPOS・値札の変更計画を立てた
よくある質問
Q. 全てのお客様に「店内ですか、持ち帰りですか」と聞く必要がありますか。
A. 大半の商品が持ち帰り前提のコンビニなどでは、全ての顧客に質問する必要はなく、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示で意思確認してもよいとされています(問52)。店内飲食が多い業態では口頭で確認するのが基本です。
Q. 店内で食べた料理の残りを持ち帰る場合、8%に変わりますか。
A. 変わりません。その場で飲食するために提供した時点で「食事の提供」に当たるため、後から持ち帰っても10%のままです(問59)。
Q. テイクアウト専門店ですが、店の前にベンチを置いても8%で販売できますか。
A. 店舗がベンチを設置して顧客に飲食させる場合は飲食設備に当たり、そこで食べる顧客への提供は10%になります。誰でも自由に使える公共のベンチ(問66)とは扱いが異なるため、置く場合は意思確認の方法を決めておきましょう。
Q. フードコートのテナントで、テーブルは施設側の設置です。それでも10%ですか。
A. はい。施設の設置者とテナントの間の合意等に基づいて顧客にテーブル等を使わせている場合は、食事の提供として10%になります(問65)。持ち帰りの申し出があった分は8%です。
まとめ
イートインとテイクアウトの税率は、飲食設備のある場所での「食事の提供」かどうかを、提供時点の意思確認で判定します。セット商品の一部を店内で飲食する場合や食べ残しの持ち帰り、フードコートなど、迷いやすいケースは国税庁Q&Aに沿って店舗のルールにしておくと現場の判断がぶれません。
2027年4月に予定されている飲食料品1%への引下げが実施されると、店内飲食との税率差は9ポイントに広がります。掲示とPOS設定を早めに見直し、法案の状況を確認しながら準備を進めましょう。