年末だけの短期アルバイトでも、雇い入れる以上は労働条件の書面明示が必要で、社会保険・雇用保険・労災保険・源泉徴収はそれぞれ別の基準で判断します。「短期だから保険も契約書も不要」とは限らないため、契約期間と週の所定労働時間を決めた段階で加入判断を済ませておくことが大切です。

この記事は、11月から1月にかけて短期スタッフを採用する小売店・飲食店の経営者、店長、人事・労務担当の方に向けたものです。初めて短期採用をする店舗だけでなく、スキマバイトのアプリを使い始めた店舗も想定しています。

以下では、雇用契約で明示すべき事項、社会保険と雇用保険の加入判断、労災保険、源泉徴収とマイナンバー、学生・留学生・高校生の注意点、スキマバイト利用時の留意点、契約の途中解約までを順に解説します。

短期でも必要な雇用契約と労働条件の明示

アルバイトを雇うときも、使用者は労働条件を明示する義務があります。契約期間、契約更新のきまり、仕事の場所と内容、勤務時間・休日、賃金、退職のきまりは、書面を交付して示すことになっています。

2024年4月からは明示事項が追加されました。すべての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」を、有期契約の労働者に対しては「更新上限の有無と内容」を、契約の締結時・更新時に明示する必要があります。

短期契約で特に書いておきたいこと

短期契約では「契約更新のきまり」の書き方が、社会保険の加入判断に直結します。「更新しない」「更新する場合がある」のどちらにするかを、採用前に店舗として決めておきましょう。

あわせて、年末年始の勤務日、深夜帯の有無、休憩時間、交通費の扱いも具体的に記載します。年末は勤務日の変更が起きやすいため、シフトの決め方と変更時の連絡方法を書いておくとトラブルを防げます。

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入判断

2か月以内の期間を定めて使用される人は、原則として社会保険の被保険者になりません。ただし、2022年10月からは、当初の契約期間が2か月以内でも、その期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、契約の当初から被保険者となる扱いになっています。

2か月以内の契約でも当初から加入となるケース

日本年金機構の資料では、次のいずれかに当てはまる場合に、2か月以内の契約でも当初から加入するとされています。

  • 就業規則や雇用契約書などに、契約が「更新される旨」または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
  • 同じ事業所で同様の雇用契約により雇われた人が、更新などにより最初の契約期間を超えて雇用された実績がある場合

たとえば12月1日から1月31日までの2か月契約で、契約書に「更新する場合がある」と書いた場合は、12月1日から加入の対象になります。毎年「年末の短期スタッフを2月以降も継続雇用している」店舗は、後者の実績に当たる可能性がある点にも注意してください。

週の労働時間と企業規模の要件

契約期間の要件を満たす場合でも、加入するのは、労働時間・日数が通常の労働者の4分の3以上の人か、短時間労働者の要件を満たす人です。短時間労働者の主な要件は、従業員数51人以上の企業(2027年9月まで)、週の所定労働時間20時間以上、学生でないこと、2か月を超える雇用見込みがあることです。

所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件は、2026年10月に撤廃予定と厚生労働省が案内しています。企業規模要件も2027年10月から段階的に縮小されるため、最新の要件を確認してください。

契約の例(週20時間以上・学生以外)社会保険雇用保険
12月1日〜12月28日(28日間)、更新なしと明示原則対象外(2か月以内)対象外(31日以上の雇用見込みなし)
12月1日〜12月31日(31日間)、更新なしと明示原則対象外(2か月以内)対象(31日以上の雇用見込みあり)
12月1日〜1月31日(2か月)、「更新する場合がある」と明示当初から対象(ほかの要件を満たす場合)対象
12月1日〜2月28日(3か月)当初から対象(ほかの要件を満たす場合)対象

上の表は、契約期間以外の要件をすべて満たすと仮定した整理です。実際の判断は、労働時間や企業規模、学生かどうかを含めて個別に行ってください。

雇用保険・労災保険の加入判断

雇用保険は「31日以上」と「週20時間以上」

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者が原則として被保険者になります。本人の希望や雇用形態にかかわらず、要件に当てはまれば加入が必要です。

1か月の契約の場合、31日ある月(12月など)は、契約更新条項の有無にかかわらず31日以上の雇用見込みがあるとされ、雇い入れ日から加入が必要です。12月いっぱいの契約で週20時間以上働く人は、加入対象になると考えておきましょう。

なお、2028年10月1日からは、週の所定労働時間の要件が「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられる予定です。来年以降の短期採用の設計にも影響するため、施行時期を確認しておきましょう。

昼間学生は原則として対象外

大学や高校などに通う昼間学生は、雇用保険の被保険者にならないのが原則です。夜間学部などに通う学生は昼間学生に当たらず、週20時間以上・31日以上の見込みを満たせば加入します。原則には例外もあるため、在学状況は採用時に確認し、判断に迷う場合はハローワークに相談してください。

労災保険は1日だけの勤務でも対象

労災保険は、正社員かアルバイトかを問わず、1日だけなど短期間のアルバイトも対象です。保険料は全額会社が負担し、仕事中のけがだけでなく通勤中の事故も対象になります。

年末の繁忙期は、慣れない短期スタッフの転倒や切り傷、重い荷物による腰の負傷が起きやすい時期です。初日に作業手順と危険箇所を説明し、けがが起きたときの連絡先を伝えておきましょう。

源泉徴収とマイナンバーの取得

甲欄・乙欄・丙欄の使い分け

区分対象使う税額表
甲欄「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人月額表または日額表
乙欄扶養控除等申告書を提出していない人(ほかの勤務先が主たる給与の人など)月額表または日額表
丙欄日給・時給で、あらかじめ定めた雇用契約の期間が2か月以内の人、または日々雇い入れて継続して2か月を超えて支払わない人日額表のみ

年末だけの2か月以内の契約で時給を支払う場合は、日額表の丙欄を使うことになります。ただし、契約を延長したり再雇用したりして2か月を超えた場合は、その日から丙欄は使えません。

延長後は、扶養控除等申告書の提出の有無に応じて甲欄か乙欄に切り替えます。1月以降も継続しそうなスタッフには、早めに扶養控除等申告書の提出を案内しておくと処理がスムーズです。

マイナンバーの取得

短期のスタッフでも、給与所得の源泉徴収票や、社会保険・雇用保険の資格取得届などにマイナンバーを記載する場面があります。取得する際は、利用目的を本人に伝え、マイナンバーカードなどで本人確認を行います。

取得した番号は鍵のかかる場所で保管し、扱う担当者を決めておきます。保存期間を過ぎて不要になったら、復元できない方法で廃棄してください。

学生・留学生・高校生、スキマバイト利用時の注意点

外国人留学生は週28時間以内

在留資格「留学」の人が資格外活動許可を受けて働ける時間は、原則として1週28時間以内です。教育機関の長期休業期間中は、1日8時間以内まで認められます。

年末年始が学校の定める長期休業期間に当たるかは学校ごとに異なります。在留カードと資格外活動許可を確認したうえで、ほかのアルバイト先との掛け持ちを含めて時間を超えないよう本人と確認しましょう。

高校生など18歳未満は深夜と残業ができない

18歳未満の労働者には、深夜労働(午後10時から午前5時まで)も、1日8時間を超える残業もさせることができません。年末の閉店作業や大晦日の深夜営業に、18歳未満のスタッフを入れないようシフトを組んでください。

スキマバイト(スポットワーク)アプリを使う場合

厚生労働省は2025年7月4日、いわゆるスポットワークの留意事項をまとめたリーフレットを公表しました。アプリで求人を掲載し、働き手と労働契約を結ぶ事業主に向けて、労働関係法令の適用に関する注意点を示しています。

リーフレットでは、面接なしで先着順に決まる求人は、別段の合意がなければ応募した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられるとしています。契約成立後に事業主の都合でキャンセルしたり早上がりさせたりする場合は、休業手当の支払いが必要になるとされています。

アプリ経由でも、労働条件の明示や労働時間の管理、賃金の支払いの責任をどこが負うかは、利用規約と契約内容を確認したうえで把握しておく必要があります。不明な点は、アプリ運営会社や労働基準監督署に確認してください。

短期契約の途中解約と採用時のチェックリスト

期間途中の解雇は「やむを得ない事由」が必要

期間の定めのある労働契約では、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で解雇できません(労働契約法第17条)。「思ったより客が少ないので年内で終わりにしたい」といった理由は、やむを得ない事由とは認められにくいと考えてください。

解雇する場合は、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。短期契約の終了時期は、契約書の期間で区切るのが基本です。

採用時のチェックリスト

  • □ 契約期間と「更新する・しない・する場合がある」を決めて書面に記載した
  • □ 就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無を明示した
  • □ 週の所定労働時間を確定し、20時間以上かどうかを確認した
  • □ 社会保険(2か月超の見込み、企業規模、学生かどうか)を判断した
  • □ 雇用保険(31日以上の見込み、週20時間以上、昼間学生かどうか)を判断した
  • □ 源泉徴収の区分(甲欄・乙欄・丙欄)を決めた
  • □ マイナンバーの利用目的を伝え、本人確認を行った
  • □ 留学生の在留カードと資格外活動許可、週28時間以内を確認した
  • □ 18歳未満のスタッフを深夜帯・8時間超のシフトに入れていない
  • □ スキマバイト利用時の契約成立時期とキャンセルの扱いを確認した

よくある質問

Q. 12月の1か月だけ、週25時間で働く大学生を雇います。保険の加入は必要ですか。

A. 労災保険は対象です。雇用保険は、昼間学生であれば原則として対象外です。社会保険は2か月以内の契約で更新の予定がなければ原則対象外ですが、契約書に「更新する場合がある」と書く場合は判断が変わります。

Q. 2か月契約で始めたスタッフを、1月以降も延長することになりました。

A. 社会保険は、契約が2か月を超えることになった時点から加入要件を確認します。源泉徴収は、契約期間が2か月を超えた日から丙欄が使えなくなり、甲欄か乙欄に切り替えます。

Q. スキマバイトで来たスタッフにも労災保険は適用されますか。

A. 店舗と労働契約を結んで働く人であれば、1日だけの勤務でも労災保険の対象です。誰が雇用主にあたるかは、アプリの仕組みと契約内容によるため、利用規約で確認してください。

Q. 短期スタッフにも労働条件通知書は必要ですか。

A. 必要です。期間の長短にかかわらず、契約期間や賃金、勤務時間などは書面で明示する義務があります。

まとめ

年末の短期アルバイトでも、労働条件の書面明示は必須です。社会保険は「2か月を超える見込み」、雇用保険は「31日以上の見込みと週20時間以上」、労災保険は1日だけでも対象と、制度ごとに基準が異なります。

契約書の更新条項の書き方ひとつで社会保険の加入時期が変わるため、採用前に方針を決めておきましょう。源泉徴収の区分、マイナンバー、留学生・高校生の時間制限、スキマバイトのキャンセル時の休業手当もあわせて確認してください。

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