3月決算の法人は、3月31日の棚卸しから5月31日の申告・納付まで、約2か月で決算と税金の手続きを終える必要があります。法人税・地方法人税・消費税・法人住民税・事業税は、いずれも原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内が期限です。延長の特例はありますが、延長した期間には利子税や延滞金がかかる点に注意が必要です。

この記事は、小売店や飲食店を運営する法人の経営者、経理担当者、本部で決算を取りまとめる方に向けたものです。初めて決算を担当する方でも、何をいつまでに終えればよいかがわかるように整理しました。

3月31日の実地棚卸、決算整理、税目ごとの申告期限、延長の特例、中間申告、電子申告の義務、株主総会との関係、会計事務所と共有するスケジュール表の作り方まで順に解説します。

3月決算法人の年間スケジュールの全体像

3月決算法人の場合、決算日は3月31日、申告・納付の期限は原則5月31日です。2027年5月31日は月曜日なので、2027年3月期の期限は5月31日(月)になります。提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限になります。

決算日の前後でやることを大きく分けると、次の表のとおりです。日付は目安で、会社の規模や会計事務所との分担によって前後します。

時期主な作業担当の例
2月〜3月中旬決算前対策の検討、棚卸しの段取り、会計事務所との日程調整経営者・経理
3月31日全店舗・倉庫での実地棚卸、現金の実査店長・店舗スタッフ
4月上旬〜中旬棚卸表の集計、請求書・領収書の回収、月次の締め経理・本部
4月中旬〜下旬決算整理(減価償却、未払・前払、引当金など)経理・会計事務所
5月上旬〜中旬決算書・申告書の作成、納税額の確定、資金繰りの確認会計事務所・経営者
5月31日まで各税目の申告書提出と納付(延長特例がない場合)経理・会計事務所

あわせて、11月には法人税と消費税の中間申告が必要になる場合があります。中間申告については後の章で説明します。

3月31日の棚卸し|実地棚卸と評価方法

店舗ごとの実地棚卸の進め方

小売業や飲食業では、期末の在庫金額が売上原価と利益を直接左右します。帳簿上の在庫ではなく、3月31日時点で実際にある商品や食材を数える「実地棚卸」を行い、その数量を基に在庫金額を計算します。

店舗が複数ある場合は、本部が棚卸表の様式と数え方を統一してから各店に配布します。数え漏れや二重カウントを防ぐため、次の点をあらかじめ決めておきます。

  • □ 棚卸しの開始時刻(閉店後か翌朝の開店前か)と担当者
  • □ 売場・バックヤード・冷蔵庫・冷凍庫・倉庫などエリアごとの担当割り
  • □ 2人1組で「数える人」と「記録する人」を分ける
  • □ 開封済みの調味料や仕掛品(仕込み済みの食材)の扱い
  • □ 返品予定品、破損品、期限切れ品の区分
  • □ 預かり品や委託品など、自社の在庫ではないものの除外
  • □ 3月31日に着いた仕入品と、未着の仕入品の扱い

棚卸表には、日付、店舗名、担当者名を記入して保存します。POSや在庫管理システムの帳簿数と差がある場合は、差異の理由を確認しておくと翌期の在庫管理にも役立ちます。

棚卸資産の評価方法と届出

数えた数量に単価を掛けて在庫金額を出す方法を「評価方法」といいます。法人税の評価方法には、原価法として個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法があり、これらに基づく低価法もあります。

評価方法は「棚卸資産の評価方法の届出書」で選びます。普通法人を設立した場合の提出期限は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。届出をしなかった場合は、最終仕入原価法が適用されます。

評価方法は、事業の種類ごと・資産の区分ごとに選ぶほか、事業所別に異なる方法を選ぶこともできます。方法を変更したいときは、新しい方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を出し、承認を受ける必要があります。3月決算法人であれば、翌期から変えたい場合は3月31日が期限の目安です。

決算整理でやること

棚卸しが終わったら、帳簿を決算用に整える「決算整理」を行います。店舗ビジネスでよく出てくる項目は次のとおりです。

項目内容店舗での例
減価償却固定資産の取得価額を使用期間に応じて費用にする内装工事、厨房設備、レジ、冷蔵ケース
未払費用・未払金3月分の費用で、支払いが4月以降になるものを計上する3月分のアルバイト給与、水道光熱費、カード手数料
前払費用翌期分を先に支払った費用を資産に振り替える前払いの家賃、年払いの保険料やシステム利用料
貸倒れの処理回収できない債権を確認して処理する法人顧客の売掛金、未回収のテナント関連債権
賞与の未払計上支給額や支給対象者が確定している賞与の扱いを確認する夏季賞与の支給額を期末までに通知している場合

減価償却では、期中に開店・改装した店舗の資産がすべて固定資産台帳に登録されているかを確認します。賞与や貸倒れは、税務上損金にできる要件が細かく決まっているため、計上してよいかどうかを会計事務所に確認してから処理してください。

あわせて、レジ現金と預金残高が帳簿と一致しているか、ポイントや商品券の残高をどう処理しているかも確認します。決算整理の資料がそろうほど、会計事務所の作業も早く進みます。

税目ごとの申告期限と延長の特例

原則の申告期限

3月決算法人が5月31日までに申告・納付する主な税目は次のとおりです。延長の特例を受けている場合の期限も並べました。

税目提出先原則の期限延長の特例
法人税・地方法人税税務署事業年度終了の日の翌日から2か月以内定款の定め等による延長特例(原則1か月)
消費税・地方消費税税務署課税期間終了の日の翌日から2か月以内法人税の延長特例を受け、届出をした法人は1か月延長
法人住民税(道府県民税・市町村民税)都道府県・市町村事業年度終了後2か月以内法人税の延長を受けた後、届出書を提出
法人事業税・特別法人事業税都道府県事業年度終了後2か月以内届出書・承認申請書を提出(原則1か月)

地方税の手続きは自治体ごとに様式や窓口が異なります。複数の都道府県に店舗がある場合は、主たる事務所の所在地だけでなく、各自治体への申告も必要になる点に注意してください。

法人税の申告期限の延長特例

定款等の定めにより、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に定時総会が開かれない常況にある法人などは、「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を出すことで、申告期限を原則1か月延長できます。会計監査人を置いている場合などは、指定を受けた月数の延長も認められています。

申請書の提出時期は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までです。3月決算法人なら、その期の3月31日までに出しておく必要があります。

注意したいのは、延長されるのは申告書の提出期限で、延長期間に納付する法人税には利子税がかかることです。利子税の負担を避けたい場合は、本来の期限である5月31日までに見込額を納付する方法もあるため、会計事務所と相談して決めてください。

消費税の申告期限の延長特例

法人税の申告期限の延長特例を受けている法人は、「消費税申告期限延長届出書」を提出すると、消費税の確定申告の期限が1か月延長されます。届出書は、適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までに提出します。

消費税も、延長された期間に係る利子税をあわせて納付する必要があります。法人税の延長だけを受けて消費税の届出を出していないと、消費税は5月31日が期限のままなので注意してください。

法人住民税・事業税の延長

大阪府の案内では、法人府民税は法人税の取扱いに準じるため、まず税務署で延長の特例を受け、そのうえで都道府県知事に「申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認申請書」を出すとされています。法人事業税も同じ様式で承認を受け、延長期間は原則1か月です。延長された期間には延滞金がかかります。

中間申告・電子申告・株主総会の確認ポイント

中間申告

法人税は、前事業年度の法人税額を前事業年度の月数で割り、6を掛けた金額が10万円を超える場合に中間申告が必要です。前期が12か月であれば、前期の法人税額が20万円を超えると対象になります。3月決算法人の中間申告の期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内、つまり11月末が目安です。

消費税の中間申告の回数は、直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を除く国税部分)で決まります。

  • 48万円以下:原則不要(任意の中間申告制度あり)
  • 48万円超400万円以下:年1回
  • 400万円超4,800万円以下:年3回
  • 4,800万円超:年11回

電子申告の義務

事業年度開始の時の資本金の額等が1億円を超える法人などは、令和2年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税・地方法人税・消費税・地方消費税の申告をe-Taxで行う必要があります。地方税の法人住民税・法人事業税も電子申告が義務化されています。資本金が1億円以下の法人でもe-Taxは利用できます。

株主総会と計算書類

株式会社では、決算書(計算書類)を株主総会で承認してから申告するのが基本の流れです。申告期限から逆算して、計算書類の完成日、取締役会の日、定時株主総会の日を決めておきます。5月31日までに総会を開くのが難しい場合は、延長特例の要件に当たるかどうかを会計事務所に確認してください。

会計事務所と共有するスケジュール表の作り方

決算をスムーズに進めるには、会計事務所と「誰が・いつまでに・何を渡すか」を1枚の表で共有するのが効果的です。前期の実績を基に、2月中に作っておくと安心です。

  • □ 棚卸表の提出日(店舗→本部、本部→会計事務所)
  • □ 3月分の請求書・領収書・給与データの締め日
  • □ 固定資産の取得・除却リストの提出日
  • □ 決算書ドラフトの完成日と、経営者による確認日
  • □ 取締役会・定時株主総会の開催日
  • □ 納税額の確定日と、納付資金の準備日
  • □ 申告書の提出日と、納付方法(振替納税・ダイレクト納付など)
  • □ 延長特例の申請書・届出書を出しているかどうか

決算日の前にできる節税策は、決算日を過ぎると選べなくなるものがほとんどです。2月から3月にかけての検討内容は、関連記事「決算前にできる店舗の節税」で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 5月31日が土曜日や日曜日の場合、期限はいつになりますか。

A. 提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限になります。2027年5月31日は月曜日なので、2027年3月期の原則の期限は5月31日です。

Q. 延長の特例を受ければ、納付も6月末でよいですか。

A. 延長後の期限までに納付することはできますが、延長期間に係る利子税(地方税は延滞金)がかかります。負担を避けたい場合は、5月31日までに見込額を納付する方法を会計事務所と相談してください。

Q. 棚卸しの評価方法の届出を出した記憶がありません。

A. 届出をしていない場合は、最終仕入原価法が適用されます。別の方法に変えたい場合は、採用したい事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を提出する必要があります。

Q. 店舗が複数の都道府県にある場合、地方税はどこに申告しますか。

A. 事務所や店舗がある都道府県・市町村ごとに申告が必要です。延長の届出も自治体ごとの手続きになるため、各自治体の案内を確認してください。

まとめ

3月決算法人は、3月31日の実地棚卸から5月31日の申告・納付まで、決算と税務の手続きを約2か月で終えます。法人税・地方法人税・消費税・法人住民税・事業税の期限は、いずれも原則として事業年度終了後2か月以内です。

延長の特例を使うには、法人税は事業年度終了の日まで、消費税は課税期間の末日までに手続きが必要で、延長期間には利子税や延滞金がかかります。中間申告や電子申告の義務、株主総会の日程も含めて、会計事務所とスケジュール表を共有しておくと安心です。

出典