飲食店の開業資金は、日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」で開業費用の平均値が975万円、中央値が600万円です。この調査は飲食店を含む全業種の数字ですが、開業費用の相場をつかむ目安として広く使われています。実際の金額は、物件の家賃や居抜きかどうか、席数、業態によって大きく変わります。

この記事は、これから飲食店やカフェを開業したい個人の方や、2店舗目の出店を検討している経営者の方に向けたものです。「自己資金はいくら用意すればよいか」「どこから借りられるか」を判断する材料をまとめました。

前半で公的調査の平均額と開業資金の内訳、居抜き物件とスケルトン物件の違いを説明します。後半では自己資金の目安、日本政策金融公庫・制度融資・補助金・リースといった調達方法、20席の個人店を仮定した計算例、準備のチェックリストを紹介します。

飲食店の開業資金の平均はいくら?公的調査のデータ

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(調査時点2025年8月、回答2,165社)によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。同調査では、開業費用は長期的にみると少額化の傾向にあるとされています。

開業費用の分布をみると、「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、500万円未満が合わせて4割以上を占めます。平均値が中央値より大きいのは、一部の高額な開業が平均を押し上げているためです。

項目数値補足
開業費用の平均値975万円全業種の平均
開業費用の中央値600万円真ん中の値で、実感に近い目安
500万円未満の割合41.8%250万円未満20.1%+250万〜500万円未満21.7%
資金調達額の平均1,219万円開業費用より多く調達している
うち金融機関等からの借り入れ827万円調達額の67.9%
うち自己資金279万円調達額の22.9%

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」。対象は公庫国民生活事業が2024年4〜9月に融資した開業企業で、飲食店だけの数字ではありません。

調査対象が公庫から融資を受けた企業であるため、借入を使わずに開業した店舗は含まれていない点にも注意が必要です。厨房設備や内装が必要な飲食店は、業態によっては全業種平均より高くなることがあります。

飲食店の開業費用の内訳は?主な項目一覧

中小企業基盤整備機構のJ-Net21では、飲食業の開業資金を「設備資金」と「諸費用」に分けて考え、店舗取得費・内外装費・厨房機器などは「最大」「最小」「その中間」の複数パターンで検討することを勧めています。ここでは、開業前に見積もるべき主な項目を整理します。

区分主な項目金額の考え方
物件取得費保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃家賃の何か月分かで決まることが多く、物件により大きく異なる
内外装工事内装、外装・看板、給排水・ガス・電気・空調・換気工事居抜きかスケルトンかで大きく変わる。複数社の見積もりで比較する
厨房機器・什器冷蔵庫、コンロ、製氷機、食器洗浄機、テーブル・椅子、食器、レジ新品・中古・リースで初期費用が変わる
運転資金人件費、家賃、原材料費、水道光熱費、通信費、借入返済J-Net21では開業時に2〜3か月分あると安心としている
広告・採用チラシ、Webサイト、予約・グルメサイト、求人広告集客方法と採用人数により異なる
許認可・保険・諸費用飲食店営業許可の申請手数料、食品衛生責任者講習、火災保険・賠償責任保険、開業前の仕込み・消耗品J-Net21では飲食店営業の申請手数料は20,000円弱のケースが多いとしている

金額はいずれも目安として物件や地域により大きく異なるため、必ず見積もりを取って積み上げてください。内装工事費は「かけようと思えばいくらでもかけられる」とJ-Net21も指摘しており、上限を先に決めておくことが大切です。

居抜き物件とスケルトン物件の違い

居抜き物件は、前の店舗の内装や厨房設備が残った状態で借りる物件です。J-Net21でも、居抜き物件なら内装工事を簡単に済ませられるとしており、初期費用と工期を抑えやすいのが利点です。

一方、スケルトン物件は内装や設備がない状態の物件で、レイアウトやデザインを自由に決められます。その代わり、給排水やガス、換気などの工事から必要になり、内外装工事費は高くなりやすい傾向です。

居抜きの場合も、残置設備の故障や老朽化、造作譲渡料の有無、前の店の業態と合うかを確認しましょう。設備が使えずに買い替えると、結果的にスケルトンと変わらない費用になることもあります。

自己資金はいくら必要?目安と考え方

日本政策金融公庫の「新規開業資金」(現在の制度名は「新規開業・スタートアップ支援資金」)は、2024年度の拡充で自己資金要件が「なし」になりました。それ以前は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金などが求められていました。

ただし、要件がなくなったことと、自己資金ゼロで借りやすいことは別の話です。一般に融資の審査では、計画的に資金を準備してきたか、事業が想定どおりにいかなかったときに耐えられるかが見られ、自己資金の額や割合はその判断材料の一つになります。

目安としては、前述の調査で資金調達額に占める自己資金の割合が平均22.9%(279万円)でした。開業資金の2〜3割程度を自己資金で用意できると、借入額と毎月の返済額を抑えやすくなります。

開業資金の調達方法は?主な4つの選択肢

日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金)

新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方が対象の融資制度です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。担保・保証人は相談のうえ決める形になっています。

制度融資(自治体・信用保証協会・金融機関)

制度融資は、都道府県や市区町村が融資条件を定め、信用保証協会が保証し、金融機関が融資する仕組みです。自治体によっては利子や保証料の一部または全部を負担する制度があり、創業者向けのメニューを用意していることもあります。

信用保証協会の保証には、金利とは別に保証料がかかります。審査は保証協会と金融機関の両方で行われるため、事業計画書の準備が欠かせません。

補助金(持続化補助金・省力化投資補助金など)

小規模事業者持続化補助金や中小企業省力化投資補助金などは、販路開拓や設備導入の費用の一部を補助する制度です。ミラサポplusの解説のとおり、補助金は「後払い(精算払い)」が原則で、事業者が経費をいったん全額立て替える必要があります。

また、交付決定の前に発注・契約した経費は補助対象外です。開業資金の穴埋めには使えないため、融資と組み合わせて資金繰りを考えましょう。

リース・中古品の活用

厨房機器や什器はリースにすると、支払総額は高くなるものの初期費用を抑えられます。J-Net21でも、新品は高額になるため中古品の活用が大きなコストダウンになるとしています。

【計算例】20席の個人店の開業資金(仮定)

以下は、家賃月25万円の物件を居抜きで借りて20席の個人店を開く場合の仮定の計算例です。実在の店舗のデータではなく、金額はすべて説明用の仮定です。

項目仮定の内容金額(仮定)
保証金家賃25万円×10か月250万円
仲介手数料家賃1か月分+消費税10%27.5万円
前家賃1か月分25万円
内外装工事居抜きの改装・看板300万円
厨房機器・什器一部入れ替え・食器・レジ200万円
広告・採用Web・チラシ・求人30万円
許認可・保険・諸費用営業許可・保険・消耗品など20万円
運転資金月110万円×3か月330万円
合計-1,182.5万円

運転資金の月110万円は、家賃25万円、人件費60万円、水道光熱費15万円、その他10万円の合計という仮定です。物件取得費は250+27.5+25=302.5万円、全体は302.5+300+200+30+20+330=1,182.5万円になります。

この場合、自己資金を350万円用意すると自己資金比率は約30%(350÷1,182.5≒29.6%)で、残り832.5万円を融資で調達する計算です。スケルトン物件なら内外装工事費がさらに増える可能性があります。

開業資金の準備チェックリスト

  • □ 業態・席数・客単価のコンセプトを決めた
  • □ 物件の保証金・礼金・仲介手数料・前家賃を確認した
  • □ 居抜きの場合、残置設備の状態と造作譲渡料を確認した
  • □ 内外装工事は複数社から見積もりを取った
  • □ 厨房機器の新品・中古・リースを比較した
  • □ 運転資金を少なくとも2〜3か月分見込んだ
  • □ 営業許可・食品衛生責任者・保険の費用と日程を確認した
  • □ 自己資金の額と、その準備の経緯を説明できる
  • □ 公庫・制度融資の条件を比較し、事業計画書を作成した
  • □ 補助金は後払いであることを前提に資金繰りを組んだ

よくある質問

Q. 飲食店は自己資金ゼロでも開業できますか?

A. 日本政策金融公庫の新規開業資金は2024年度から自己資金要件がなくなっています。ただし審査では返済能力や準備状況が総合的に見られるため、自己資金がある方が計画の説得力は高まります。

Q. カフェの開業資金はいくらくらいですか?

A. カフェだけに絞った公的な平均額は本記事では確認できていません。全業種では平均975万円・中央値600万円が目安で、カフェは席数、物件、提供メニュー(調理の有無)によって必要な厨房設備が変わるため、見積もりの積み上げで判断してください。

Q. 運転資金は何か月分用意すればよいですか?

A. J-Net21では、開業時点で運転資金の2〜3か月分があると安心としています。開業直後は売上が安定しにくいため、借入金の返済も含めて見積もりましょう。

Q. 補助金を開業資金に充てられますか?

A. 補助金は原則として後払いで、交付決定前に発注した経費は対象外です。開業時の支払いにはそのまま使えないため、融資や自己資金で立て替える前提で計画してください。

Q. 公庫の融資と制度融資はどちらがよいですか?

A. 金利、保証料、自治体の補助の有無、審査期間が異なります。両方の条件を比較し、窓口や商工会議所・商工会に相談して選ぶのが確実です。

まとめ

飲食店の開業資金は、公的調査では全業種の開業費用の平均値が975万円、中央値が600万円です。実際の金額は物件取得費と内外装工事費で大きく変わるため、居抜きかスケルトンかを含めて複数パターンで見積もりましょう。

自己資金は公庫の要件ではなくなりましたが、調査では調達額の約2割強を自己資金が占めています。公庫・制度融資を軸に、補助金は後払いであることを踏まえて資金繰りを組み立ててください。

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