経営陣がやるべきことは、利益が出る仕組みをつくることだ––––。
経営において大切なことについて、こう話す株式会社ガーデン代表取締役・川島賢氏のまなざしは真剣だ。従業員への思いを語るにつれ、その言葉に熱がこもっていく。
現在、外食業界は原材料費や人件費、光熱費などの上昇に直面し、利益を確保する難しさが増している。一方で、人手不足も深刻だ。人材を採用し、長く働いてもらうためには、賃上げや労働環境の改善は避けて通れない。利益を確保しながら、従業員への還元をどう進めるか。多くの外食企業が、この相反する課題への対応に頭を抱えている。だからこそ、現場の努力を成果につなげる仕組みは経営陣がつくる、という川島氏の言葉は力強く響く。
川島氏の率いるガーデンは、横浜家系ラーメン「壱角家」や讃岐うどん「山下本気うどん」などを展開しており、2024年11月22日には東京証券取引所スタンダード市場へ新規上場している。現在は、既存店舗に油そばを組み合わせる「ダブル看板戦略」を推進。導入店舗は100店舗を超え、既存の設備や店舗を生かしながら、新たな需要の取り込みを進めている。
話し手:川島 賢 氏(株式会社ガーデン 代表取締役社長)
聞き手:三輪 大輔(外食ビジネスアナリスト)
「社員の幸せ」が、顧客満足につながる
こうした仕組みを現場で動かし、顧客へのサービスにつなげるのが、最前線で活躍するスタッフたちだ。同社は、その力を引き出すため、賃上げや福利厚生の充実など、待遇改善にも積極的に取り組んできた。川島氏によれば、賞与は従来の2倍以上となり、離職率も低下しているという。なぜ、ここまで従業員の待遇改善に力を入れるのか。川島氏は、その理由をこう話す。
「従来の外食業界では、お客様を大事にするために、まずは自分たち社員、従業員が犠牲になりましょうという考え方が、はびこっていました。僕はカラオケ事業から外食業界に参入しています。だからこそ、そこはちょっと違うなと思い、自分たちの労働環境や給与が良くなって、同時にお客様も喜ぶ環境にするのがいいのではないかと考え始めました。
実際、当社は理念の中の価値観に『社員の幸せこそが重要』と掲げています。理念を共有し、頑張る社員をとことん応援するという考え方です。お客様を大切にしようと頑張っていても、自分の環境が良くならなければ、社員も疲弊してしまうでしょう。
社員が主体性を持って働き、お客様に喜んでいただくためにも、まずは社員自身の労働環境や給与が良くなることが大切です。自分の環境が良くなってくると、なぜ良くなったのかを考えるようになります。お客様に来ていただいて利益が上がるから、自分の環境が良くなる。自分のチームや周りにいる皆さんが、チームとして働いてくれることで、自分の環境が良くなる。そこに気づいてもらえると、その人自身が主体性を持って働くようになる。どうやってお客様を喜ばせようかなと考えるようになります」
現場の頑張りを成果に変える、経営陣の役割
ただし、従業員に還元し続けるには、その原資となる利益が必要だ。そこで重要になるのが、冒頭の「利益が出る仕組み」である。利益が出る仕組みをつくれない経営陣の下では、現場がいくら頑張っても成果は出ない。経営陣がその仕組みをつくって初めて、現場で働く社員の頑張りが利益や成果につながる環境が生まれる。
しかし、コストの上昇が続く中、その仕組みをつくることは容易ではない。そこでガーデンが取り組む具体策の一つが、ダブル看板戦略だ。新店を一からつくるのではなく、既存資産を活用して投資を抑え、収益機会を増やす。機械化やDXにも取り組み、従業員が接客や商品の品質向上に集中できる環境を整えている。
厳しい環境の中でも利益を生み出し、従業員への還元につなげる。その姿勢について、川島氏はこう話す。
「環境が悪い、原材料高だから売上が下がった、利益が上がらないと、経営陣はいくらでも言い訳ができます。しかし、これらはすべて他責です。そうではなく、何事に関しても自分が関わっている以上は、その中において自分がやれることを考える。それを大切にしています。
当社は、利益を最優先にします。これは誤解されることも多いのですが、利益が出ないと投資もできないですし、従業員の労働環境も良くできないし、成長もできません。ただ、利益だけを目指すのではなく、利益と同時にいろいろなこともやっていきましょうと。誰も犠牲になる必要はないですよね、というのが当社の考え方です」
約束を守り、信用を積み重ねる
もう一つ、川島氏が大切にしているのが、従業員との約束だ。経営陣が自ら約束を守ることが、組織の信用を築く土台になる。
「経営陣が毎回、行動指針は守りましょう、ルールは守りましょうと言っていても、経営陣や店長、マネジャーが約束を守らない組織になると、誰も言うことを聞きません。だから僕らは、約束を守ろうということを一番大切にしています。コロナ禍でも給与や賞与を下げないと従業員に約束し、守り続けたこともその一つです。その約束を守ることが、信用につながります。企業の組織というのは、信用がないと誰も動かないと僕は考えています」
川島氏は、2030年代に外食企業で時価総額トップになるという目標を掲げる。一方、足元については「踊り場が続いている」とも語る。施策が予定どおりに進まないときも、計画を見直し、次の手を考え続ける。それも従業員や投資家との約束を果たすための、経営陣の責任だ。
「一気に外食企業トップになろうと、僕らは思ったことは一回もありません。日々のこと、今年できること、今月できることを一つ一つ積み上げていきましょう。今週できることをやりましょう。今日できることをやりましょうと。それが、外食企業のトップになるという目標の実現につながります」
利益を生む仕組みをつくり、従業員に還元する。約束を守ることで信用を積み重ね、現場の主体性につなげていく。ガーデンが目指す成長は、その日々の実践の先にある。
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