株式会社飛鳥新社は、『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。〜コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年〜』(村尾信一・著)の重版を決定した。2026年9月30日の発売から13日で決まった。定価は税込1,650円、四六判・並製で256ページだ。
実話に基づく物語で、東京・西麻布のコンビニを舞台にしている。50歳で百貨店を退職した店主・坂本哲郎さん一家と、ネパールや中国から来た留学生たちの23年間を描いた内容だ。留学生たちは後に正社員となり、店長を任されるまで成長したとしている。
この書籍で押さえておきたいのが、書名の由来となった出来事だ。外国人スタッフがパスタに箸をつけて客に怒られたという経験から取られている。
パスタにフォークを添えるという対応は、日本で育った人にとっては説明の要らない慣習にあたる。一方、その区別を知らない人には判断の根拠がない。接客のマニュアルに「パスタにはフォーク」と明記されていなければ、間違いは起こりうる。
この種の問題は、明文化されていない慣習に関わる部分だ。レジの操作や商品の陳列は手順として書き出せる。一方、どの商品にどの備品を添えるか、どの言い方が失礼にあたるかといった判断は、慣習として共有されていることが前提になっている場合が多い。書き出されていなければ、知らない人には伝わらない。
背景として、大手コンビニ3社だけで働く外国人スタッフは8万人を超えると説明されている。3社で割れば1社あたり平均約2.7万人の計算になる。
この規模であれば、個別の店舗の対応だけでは追いつかない部分も出てくる。採用から教育、現場での判断の支援まで、仕組みとして用意するかどうかが問われることになる。
23年という期間も、この本の性格を示している。留学生として働き始めた人が正社員になり、店長を任されるまでの流れを追った内容だ。短期のアルバイトとして雇う形とは異なり、定着して役割が変わっていく過程が記録されている。
人手不足を背景に外国人を採用する場合、短期で辞める前提で組むか、長く働く前提で組むかで必要な準備は変わる。長期の雇用を前提にすれば、日本語の習得や業務の幅を広げる支援が必要になる一方、店長を任せられる人材も育つ。23年分の記録は、その両方を含むことになる。
著者の村尾信一氏は、1995年から2025年までセブン‐イレブン・ジャパンに勤務し、約2,000店の加盟店オーナーと関わった経歴を持つ。2025年に退職し、現在は株式会社Hands UP取締役を務めている。著書に『鈴木敏文の遺言』(ビジネス社)がある。
本部の立場で約2,000店のオーナーに接してきた経験は、個別の店舗の事例を広い範囲と比べて捉える前提になる。1店舗の話として書く場合と、多数の店舗を見た上で書く場合では、何を特徴として扱うかが変わってくる。
推薦はセブン‐イレブン・ジャパン元代表取締役社長の古屋一樹氏が寄せている。
発売から13日での重版決定という点も、題材への関心を示す材料になる。外国人スタッフの受け入れは小売や外食で共通する課題にあたり、業界で働く側の関心と、一般の読者の関心の両方が考えられる。
関連記事として、集英社オンラインの記事3本が紹介されている。