改正女性活躍推進法が2026年4月1日に施行され、常時雇用する労働者が101人以上の企業に「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務付けられました。これまで男女間賃金差異の公表義務は301人以上の企業に限られていました。
対象になるのは、パート・アルバイトを含めて常時雇用する労働者が101人以上の企業です。女性パート比率が高いスーパー、ドラッグストア、飲食チェーンでは、男女の賃金の差が大きく出やすく、説明の仕方が重要になります。
この記事では、厚生労働省の資料をもとに、公表項目と時期、賃金差異の計算方法、非正規雇用の多い業態での出し方と説明欄の使い方を整理します。
2026年4月施行の改正内容
厚生労働省によると、今回の改正の主な内容は次のとおりです。
- 男女間賃金差異の公表義務を、301人以上から101人以上の企業に拡大
- 女性管理職比率を、101人以上の企業の公表必須項目に追加
- 女性の健康上の特性への配慮を基本原則に明記し、「えるぼしプラス」認定を新設
- 2026年3月31日までだった法律の有効期限を、2036年3月31日まで10年間延長
- 基本方針にハラスメント対策を位置付け
企業規模別の公表項目
| 企業規模(常時雇用する労働者数) | 公表必須項目 | 選択項目 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異、女性管理職比率 | 「職業生活に関する機会の提供」の7項目から1項目以上、「職業生活と家庭生活との両立」の7項目から1項目以上 |
| 101〜300人 | 男女間賃金差異、女性管理職比率 | 上記14項目から1項目以上 |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 |
選択項目には、採用した労働者に占める女性の割合、男女の平均継続勤務年数の差異、育児休業取得率などがあります。どの項目を選ぶかは企業の判断です。
「常時雇用する労働者」の数え方
常時雇用する労働者とは、雇用形態にかかわらず、期間の定めなく雇用されている人、または有期契約でも過去1年以上引き続き雇用されている人や、雇入れ時から1年以上の雇用が見込まれる人を指します。パート・アルバイトも条件を満たせば含まれます。
正社員が30人でも、長く勤めるパートが80人いれば合計110人となり、公表義務の対象です。店舗数の多い企業は、まず人数を確認しましょう。
公表の時期と方法
初回の公表は、改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に行います。その後は、おおむね年1回以上の更新が必要です。
| 決算期(事業年度) | 初回の対象となる事業年度 | 公表の目安 |
|---|---|---|
| 3月決算(4月〜翌3月) | 2026年4月〜2027年3月 | 2027年6月末ごろまで |
| 12月決算(1月〜12月) | 2026年1月〜2026年12月 | 2027年3月末ごろまで |
| 8月決算(9月〜翌8月) | 2025年9月〜2026年8月 | 2026年11月末ごろまで |
上の表は「施行日(2026年4月1日)以後に最初に終了する事業年度」の考え方に当てはめた目安です。8月決算の企業は、すでに対象事業年度が終わっており、準備を急ぐ必要があります。
公表先は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が最も適切とされています。自社ホームページへの掲載も可能です。
男女間賃金差異の計算方法
基本の計算式
男女間賃金差異は、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(%)で示します。計算の流れは次のとおりです。
- 一つの事業年度の総賃金と人員数を、男女別・雇用区分別に集計する
- 総賃金を人員数で割り、平均年間賃金を出す
- 女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100 で割合を出す
- 小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示する
賃金には、基本給、手当、賞与など労働の対償として支払うすべてのものを含みます。退職手当と通勤手当等は、事業主の判断で除外できます。
「全労働者」「正規」「非正規」の3区分
公表は、全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3区分で行います。正規雇用労働者は期間の定めなくフルタイムで働く人、非正規雇用労働者はパートタイム労働者と有期契約の労働者です。派遣労働者は派遣元で算出し、派遣先の計算には含めません。
計算例(仮の数値)
正社員40人、パート70人、合計110人のスーパーを想定した架空の例です。実際の数値ではなく、計算の流れを示すためのものです。
| 区分 | 男性の平均年間賃金 | 女性の平均年間賃金 | 男女間賃金差異 |
|---|---|---|---|
| 正規雇用(男性30人・女性10人) | 500万円 | 450万円 | 90.0% |
| 非正規雇用(男性10人・女性60人) | 120万円 | 110万円 | 91.7% |
| 全労働者(男性40人・女性70人) | 405万円 | 158.6万円 | 39.2% |
全労働者の男性平均は(500万円×30人+120万円×10人)÷40人=405万円です。女性平均は(450万円×10人+110万円×60人)÷70人≒158.6万円となります。
区分ごとに見ると差異は90%前後ですが、全労働者では39.2%まで下がります。女性の多くが短時間のパートとして働いていることが、全体の数値を大きく押し下げているためです。
パート比率の高い業態での注意点
スーパーの例で考えます。正社員は男性が多く、パートは女性が多い構成だと、全労働者の賃金差異は低い数字になりやすくなります。これは、同じ職務の男女で賃金が違うことより、雇用区分の男女構成の違いが大きく影響するためです。
短時間で働くパートの平均年間賃金は、フルタイムより低くなります。そのため厚生労働省の解説資料では、パート労働者の人員数を、正規雇用労働者の所定労働時間などを参考に換算してもよいとしています。換算した場合は、その旨を説明欄に記載する必要があります。
| パートの人員数の数え方 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 実人数で数える | 集計が簡単 | 短時間勤務が多いほど、平均年間賃金が低く出る |
| 所定労働時間で換算する | 働いた時間の違いの影響を抑えられる | 換算した旨を説明欄に記載する。男女で異なる数え方はしない |
また、初回の公表以降は、同じ方法で継続して公表することが求められています。途中で数え方を変えると、年ごとの比較ができなくなるためです。
説明欄の活用と女性管理職比率
説明欄に書くとよい内容
公表は数値だけでも義務を果たせますが、厚生労働省は、要因や課題の分析結果など、補足情報を任意で公表できるとしています。数値だけでは伝わらない実情を示すことで、求職者や取引先の誤解を防げます。
- 雇用区分ごとの男女構成(例:非正規雇用労働者に占める女性の割合)
- パートの人員数を換算したかどうかと、その方法
- 役職別・職務別の賃金差異(例:店長層、主任層)
- パートから正社員・店長への登用実績と、今後の取り組み
- 前年からの変化と、その理由
パートの就業調整の動向は賃金差異にも影響します。関連する制度変更は、ストアガイドの「106万円の壁撤廃」「2026年度最低賃金」の記事もあわせて確認してください。
女性管理職比率の定義
女性管理職比率は、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計に占める女性の割合です。店長やエリアマネージャーを課長級として扱うかは、社内の職位制度に照らして判断します。ここでも、一度決めた基準を継続して使うことが大切です。
小売・外食では、売場や厨房で女性が多く働いていても、店長以上の層では女性が少ないという構成がよく見られます。女性管理職比率を上げるには、パートから契約社員・正社員への登用ルート、短時間正社員の店長、複数店舗を担当するエリア職の働き方の見直しなどが検討材料になります。
公表した数値は、求職者が応募先を選ぶ際の判断材料にもなります。説明欄で、店長候補の育成研修や登用の実績を具体的に示すことで、採用面での印象も変わります。
公表に向けた実務チェックリスト
- □ パート・アルバイトを含めた常時雇用する労働者の数を確認した
- □ 自社の事業年度と、初回公表の期限を確認した
- □ 選択項目から公表する項目を決めた(101〜300人は1項目以上)
- □ 正規・非正規の区分を、雇用契約の内容に基づいて整理した
- □ 賃金に含める範囲と、退職手当・通勤手当を除外するかを決めた
- □ パートの人員数を換算するかどうかを決め、方法を文書化した
- □ 店長・エリアマネージャーが課長級に当たるかを整理した
- □ 説明欄に記載する補足情報の案を作成した
- □ 女性の活躍推進企業データベースへの登録手順を確認した
- □ 行動計画の目標と、公表数値との整合を確認した
よくある質問
Q. 101人以上かどうかは、いつの時点で判断しますか。
A. 常時雇用する労働者の数で判断します。パート・アルバイトも、期間の定めがない場合や1年以上の雇用実績・見込みがある場合は含まれます。人数が増減しやすい業態では、管轄の労働局に確認すると確実です。
Q. 賃金差異の数字が低いと、罰則はありますか。
A. 数値の水準そのものに基準は設けられていません。求められているのは、定められた方法で算出して公表することです。数値が低い場合は、説明欄で要因と取り組みを示すことが有効です。
Q. パートの人員数換算は必ず行う必要がありますか。
A. 換算は任意です。換算した場合は、その旨を説明欄に記載する必要があります。
Q. 厚生労働省の分析ツールはありますか。
A. 厚生労働省は「男女間賃金差異分析ツール」(Excel)と活用パンフレットを公開しています。賃金データを入力して、差異の要因分析に使えます。
Q. 100人以下の企業は何もしなくてよいのですか。
A. 100人以下の企業は、情報公表が努力義務です。採用活動で職場の実情を伝える材料になるため、将来の人数増加に備えて集計の仕組みだけでも整えておくと安心です。
まとめ
2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の企業に、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務付けられました。初回の公表は、施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度開始後おおむね3か月以内に行います。
パート比率が高い小売・外食では、全労働者の数値だけを見ると実態以上に差が大きく見えることがあります。正規・非正規の区分ごとの数値と、説明欄での補足を組み合わせて、自社の状況と取り組みを伝えましょう。