厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」は、令和8年度(2026年度)の交付申請期限が2026年11月30日(月)17:00です。勤怠管理システムなどの導入費用の3/4(条件を満たせば4/5)が、成果目標に応じた上限額の範囲で助成されます。
対象は、残業を減らしたい、有給休暇を取りやすくしたいと考えている中小企業です。シフト制で働く人が多い飲食店や小売店では、勤怠・シフト管理のデジタル化や、POSレジなど作業を効率化する機器の導入に活用できる可能性があります。
この記事では、令和8年度のコース一覧、労働時間短縮・年休促進支援コースの成果目標・助成額・賃上げ加算、対象経費と対象外経費、申請の流れと注意点、店舗での活用例を整理します。金額や要件は必ず最新の交付要綱・支給要領で確認してください。
令和8年度のコース一覧
働き方改革推進支援助成金は、令和8年度は5つのコースで構成されています。飲食店・小売店が主に使うのは、労働時間短縮・年休促進支援コースと勤務間インターバル導入コースです。
| コース | 概要 |
|---|---|
| 労働時間短縮・年休促進支援コース | 時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に取り組む中小企業を支援 |
| 勤務間インターバル導入コース | 終業から次の始業までの休息時間(勤務間インターバル)の導入に取り組む中小企業を支援 |
| 業種別課題対応コース | 運送業等、建設業、病院等、情報通信業・宿泊業、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)が対象 |
| 団体推進支援コース | 事業主団体が傘下の事業主の労働条件改善に取り組む場合に支援 |
| 取引環境改善コース(令和8年度新設) | 荷主・倉庫事業者等が運送事業者と集団をつくり、荷待ち・荷役時間の短縮に取り組む場合に支援 |
以下では、店舗で使いやすい労働時間短縮・年休促進支援コースを中心に解説します。
労働時間短縮・年休促進支援コースの成果目標と助成額
対象となる事業主
労災保険の適用を受ける中小企業事業主が対象です。中小企業の範囲は業種ごとに決まっており、小売業(飲食店を含む)は資本金5,000万円以下または常時使用する労働者50人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または100人以下のいずれかを満たせば該当します。
あわせて、すべての対象事業場で年次有給休暇管理簿を作成していることなど、年5日の年休取得に向けた就業規則等の整備が必要です。常時10人以上の事業場では、年休の時季指定に関する定めを含む就業規則を労働基準監督署に届け出ている必要があります。
成果目標(1つ以上を選ぶ)
成果目標は次の3つで、1つ以上を選んで取り組みます。達成した成果目標ごとに助成の上限額が決まります。
| 成果目標 | 内容 | 上限額 |
|---|---|---|
| ①時間外労働の削減 | 36協定で定める時間外・休日労働の上限を、月60時間以下または月80時間以下に設定して届け出る | 最大150万円(事業実施前後の設定時間数により異なる) |
| ②年休の計画的付与 | 年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入する | 25万円 |
| ③時間単位年休と特別休暇 | 時間単位の年次有給休暇制度と、特別休暇を1つ以上新たに導入する | 25万円 |
成果目標①の上限額は、たとえば実施前の設定が月80時間超で、実施後に月60時間以下にする場合は150万円、月60時間超〜80時間以下から月60時間以下にする場合は100万円、月80時間超から月80時間以下にする場合は50万円です。自店の36協定の内容から、どの区分に当たるかを確認しましょう。
助成率と賃上げ加算
助成額は、対象経費の3/4か、成果目標ごとの上限額の合計のいずれか低い方です。常時使用する労働者が30人以下で、労務管理用ソフト・機器の導入(取組⑥)や生産性向上のための設備導入(取組⑦)を行い、その所要額が30万円を超える場合は4/5になります。
さらに、事業場の労働者の賃金を引き上げると、上限額に次の金額が加算されます。
| 引上げ率 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人 |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 1人当たり2万円(上限60万円) |
| 5%以上 | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円(上限240万円) |
| 7%以上 | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 1人当たり12万円(上限360万円) |
申請パンフレットには、常時使用する労働者数が10人以上30人以下の場合は5%・7%以上の引上げについて2倍、10人未満の場合は2.5倍の上限額が加算されるとの記載があります。加算の適用条件は細かいため、申請前に労働局で確認してください。
店舗で成果目標を選ぶときの考え方
繁忙期に残業が集中しやすい店舗では、36協定の上限時間を見直す成果目標①が候補になります。ただし、設定した時間数を守れる体制をつくることが前提なので、勤怠データで実際の残業時間を把握してから決めると安全です。
残業はそれほど多くないものの、有給休暇が取りにくいという店舗では、成果目標②や③が取り組みやすいでしょう。閑散期に店休日と合わせて年休を計画的に付与する、通院や子どもの行事に使える時間単位年休を設ける、といった形が考えられます。
複数の成果目標を組み合わせると、上限額はそれぞれの合計になります。無理に目標を増やすより、確実に達成できるものを選ぶことが大切です。
対象経費と対象外の経費
対象となる取組
成果目標の達成に向けて、次の取組から1つ以上を実施します。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
店舗では、勤怠管理システムやシフト管理ツールが「労務管理用ソフトウェア・機器」に、POSレジや自動食器洗い機、券売機などが「労働能率の増進に資する設備・機器」に当たり得ます。対象になるかは、導入によって労働時間の削減につながることを計画で説明できるかがポイントです。
対象外になりやすいもの
原則として、乗用自動車、パソコン、タブレット、スマートフォンの導入・更新は対象外です。シフト管理アプリを使うためにタブレットを買う場合、端末の購入費は対象にならない点に注意してください。
また、交付決定前に契約・発注・支払いをした経費は対象外です。見積もりは交付決定前に取っても構いませんが、契約・発注は必ず交付決定の通知を受けてから行います。
申請の流れとスケジュール
申請先は、事業場を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。申請書類の作り方は、各地の働き方改革推進支援センターでも相談できます。
- 成果目標と取組を決め、見積書を取る
- 交付申請書と事業実施計画を労働局に提出する(2026年11月30日17:00まで)
- 交付決定の通知を受ける
- 取組を実施する(事業実施期間は2027年1月31日まで)
- 成果目標を達成し、支給申請をする(事業実施予定期間の終了日から30日後、または2027年2月5日のいずれか早い日まで)
- 審査を経て助成金が支給される
申請から支給までは平均5〜6か月程度かかるとされています。予算の状況によっては期限前に受付が締め切られることもあるため、早めの申請をおすすめします。
飲食店・小売店での活用例
以下は制度の仕組みを理解するための想定例で、実在の事業者ではありません。実際の助成額は審査や経費の内容で変わります。
例1:紙のタイムカードをやめて勤怠システムを導入する
従業員12人の居酒屋が、勤怠管理システムと、仕込み時間を減らすための機器を合わせて60万円で導入し、成果目標②(年休の計画的付与)と③(時間単位年休と特別休暇)に取り組むケースです。30人以下で取組⑥⑦の所要額が30万円を超えるため助成率は4/5となり、60万円×4/5=48万円が、上限額(25万円+25万円=50万円)の範囲内に収まります。
例2:POSレジの更新で締め作業を短くする
パート中心の食品スーパーが、閉店後のレジ締めに時間がかかっている課題に対し、POSレジを更新して残業時間を減らし、36協定の上限時間を引き下げるケースです。成果目標①を選び、現在の36協定の設定時間数から上限額の区分を確認します。
例3:社労士のコンサルで就業規則を整える
小規模なカフェが、社会保険労務士のコンサルティングを受けて特別休暇や時間単位年休を就業規則に盛り込むケースです。ソフトや機器を買わなくても、コンサルや就業規則の整備だけで申請できます。
労働時間や休日のルールの見直しは、ストアガイドの記事「労働基準法の大改正」もあわせて確認してください。賃上げ加算を検討する場合は「2026年度最低賃金」の記事も参考になります。
申請前のチェックリスト
- □ 自社が中小企業の範囲(小売業は資本金5,000万円以下または50人以下など)に入ることを確認した
- □ 年次有給休暇管理簿を作成している
- □ 常時10人以上の事業場では、年休の時季指定を定めた就業規則を届け出ている
- □ 選ぶ成果目標と、その上限額を確認した
- □ 導入予定の機器にパソコン・タブレット・スマートフォンが含まれていない
- □ 交付決定前に契約・発注・支払いをしていない
- □ 2026年11月30日17:00の交付申請期限に間に合う
- □ 最新の交付要綱・支給要領・申請パンフレットを確認した
よくある質問
Q. シフト管理アプリの月額利用料は対象になりますか。
A. 労務管理用ソフトウェアとして対象になる可能性がありますが、対象となる期間や費用の範囲は要領で決まっています。申請前に労働局に確認してください。
Q. 勤怠システム用にタブレットを買いたいのですが。
A. パソコン、タブレット、スマートフォンは原則として対象外です。専用の勤怠打刻機など、労務管理用機器に当たるものかどうかを確認しましょう。
Q. アルバイトだけの店舗でも申請できますか。
A. 労災保険の適用を受ける中小企業事業主であることなどが要件です。パート・アルバイトの年休管理も含めて要件を満たしているか、事前に確認してください。
Q. 申請書の作成を手伝ってもらえますか。
A. 各都道府県の働き方改革推進支援センターで相談できます。申請自体は都道府県労働局に行います。
まとめ
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の令和8年度の交付申請期限は、2026年11月30日17:00です。勤怠システムやPOSレジなどの導入費用の3/4(条件により4/5)が、成果目標ごとの上限額の範囲で助成されます。
パソコン・タブレット等は原則対象外、交付決定前の発注は不可、という2点に注意しましょう。まずは自店の36協定と年休ルールを確認し、労働局か働き方改革推進支援センターに相談するところから始めてください。