株式会社大丸松坂屋百貨店は、複合型体験ストア「明日見世(あすみせ)」(大丸東京店9階)の出品ブランド向けに、ダッシュボードサービス「明日見世インサイト」を2026年10月21日から提供する。

店頭に設置したAIカメラによる来店分析と、接客担当者が記録する顧客の反応を組み合わせ、選ばれる理由や見送られる理由を可視化する。データはダッシュボードとCSVで提供される。

このサービスで押さえておきたいのが、買われなかった側のデータを扱う点だ。

売場のデータとして一般的に集まるのは、買われた商品の記録になる。POSデータは販売が成立した時点のもので、手に取ったが戻した、迷ったが見送った、という行動は残らない。何が売れたかは分かる一方、何が売れなかったかの理由は記録に出てこない構造だ。

AIカメラと接客記録を組み合わせる構成は、この空白を埋める形になる。カメラは来店した人の動きを数として捉えられるが、なぜそうしたかは分からない。接客の場では客が言葉で理由を話すことがあり、それを記録すれば数字の背景が残る。機械で取れる量と、人が聞き取る内容を併せる組み立てだ。

同社は提供の目的として、ECやポップアップでは見えにくい購入前の迷いや、購入意欲が変わる要因を捉え、ブランドの意思決定を支援することを挙げている。

ECでは閲覧や離脱の記録は残るが、迷った理由そのものは残らない。ポップアップストアは期間が短く、データが蓄積する前に終わる。明日見世は約3か月ごとにラインアップを入れ替えながら継続して運営しているため、一定の期間にわたって同じ条件で記録を取れる構成になる。

売場をブランドの検証の場として位置づける形は、百貨店の売場の使い方としても読める。通常のテナントは商品を売って売上を立てる場所だが、明日見世は出品したブランドが顧客の反応を得る場にあたる。場所を貸すだけでなく、そこで集めたデータを返す構成になる。

出品する側から見ると、自社では用意できない環境が得られる。実店舗を持たないブランドが、来店客の反応を定量と定性の両面で確認するには、売場と人員とカメラの設備が必要になる。これを自前で揃える代わりに、既にある売場に出品する形を取れる。

明日見世は2024年9月のリニューアル後、2年間にわたり顧客の反応を収集してきた。今回のサービスはその知見を発展させたものだとしている。扱うブランドは300以上で、約3か月ごとに入れ替える。

2年分の蓄積を踏まえてサービスを立てる流れも、データを扱う事業の進め方として見ておきたい。記録を集める仕組みを先に動かし、集まったものをどう整理すれば使えるかを確かめてから、提供の形に組み立てている構成になる。

あわせて、ターム Vol.10も始まる。テーマは「Connect to Hometown」で、2026年10月21日から2027年1月19日まで実施する。地域のものづくりや素材を活用したアイテムを扱う内容だ。

出品ブランドには、化粧品のSAGAn BEAUTY(さぎんコネクト株式会社)、テーブルウェアのKANEKO KOHYO(株式会社カネコ小兵製陶所)、美容雑貨のLumiKA+(柿原工業株式会社)などが並ぶ。化粧品、食器、美容雑貨とカテゴリーが分かれる構成だ。

地域の素材やものづくりをテーマに据える形は、データを取る対象としても意味を持つ。地域の商材は、産地では知られていても他の地域では認知が限られる。東京の売場に置いたときにどう受け取られるかは、産地では確かめられない部分になる。

なお、提供されるデータは参考指標であり、販売や成果を保証するものではないとしている。

明日見世の営業時間は10時から20時までだ。

出典:株式会社大丸松坂屋百貨店 プレスリリース