毎年1月1日時点で事業用の償却資産を所有している人は、1月31日までに資産の所在する市町村(東京23区は都税事務所)へ償却資産の申告をしなければなりません。課税標準額の合計が免税点以上であれば、標準税率1.4%で固定資産税が課税されます。免税点は現在150万円ですが、総務省によると令和9年度(2027年度)分以後は180万円に引き上げられます。
この記事は、飲食店や小売店を経営する法人・個人事業主と、その経理担当者向けです。土地や建物を持っていないテナント店舗でも、内装や厨房機器、レジ、看板などを所有していれば申告の対象になります。
申告義務者と期限、対象資産と対象外の資産、少額減価償却資産の特例との関係、免税点と税額の計算、eLTAXでの電子申告、申告しなかった場合のリスクを順に解説します。2027年1月の申告に向けた準備にお役立てください。
償却資産の申告の基本:誰が・いつ・どこへ
固定資産税は、土地・家屋・償却資産の3つにかかる市町村税です。このうち償却資産は、土地・家屋以外の事業用資産で、法人税・所得税で減価償却の対象になるものを指します。土地・家屋は市町村が登記などから把握しますが、償却資産は所有者の申告をもとに課税されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告する人 | 毎年1月1日(賦課期日)現在、事業用の償却資産を所有している法人・個人 |
| 申告期限 | 毎年1月31日(土日祝日にあたる場合は自治体の案内を確認) |
| 申告先 | 資産が所在する市町村。東京23区内は、資産が所在する区の都税事務所 |
| 申告する内容 | 1月1日現在に所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数など) |
| 税率 | 標準税率1.4%(東京都23区も1.4%) |
| 免税点 | 課税標準額150万円未満は課税されない(令和9年度分以後は180万円) |
東京都主税局の令和8年度の申告の手引きでは、1月31日が土曜日だったため、提出期限は令和8年2月2日(月)とされていました。2027年は1月31日が日曜日にあたるため、実際の提出期限は各自治体の手引きで確認してください。
店舗が複数の市町村にある場合は、市町村ごとに申告書を提出します。東京23区内では、区ごとに1通ずつ提出する必要があります。
店舗で対象になる資産・ならない資産
小売・飲食店で対象になる主な資産
東京都主税局の手引きでは、飲食店の厨房機器や調理機器、小売業の陳列ケース、レジスター、自動販売機、看板などが資産例として挙げられています。屋外の工事や設備も「構築物」として対象になります。
| 区分 | 店舗での具体例 |
|---|---|
| 内装・造作 | テナントとして借りた店舗に施した内装工事、間仕切り、床・天井の仕上げなど |
| 厨房・調理機器 | 業務用冷蔵庫、製氷機、ガスレンジ、フライヤー、食器洗浄機、排気設備など |
| 陳列・販売設備 | 冷蔵ショーケース、陳列棚、レジスター、自動販売機 |
| 構築物 | 看板(屋外・袖看板など)、駐車場の舗装、外構工事、フェンス |
| 器具備品 | パソコン、POSシステムのハードウェア、テーブル・椅子、ルームエアコン |
テナントの内装・造作は「テナントが申告」が原則
本来は家屋として評価される内装や建築設備でも、建物を借りている事業者が事業のために取り付けたものは、地方税法第343条第10項の規定により、テナントが償却資産として申告する扱いになります。東京都主税局の手引きでも、賃借人が取り付けた事業用の内装・造作や建築設備等は、テナントが償却資産として申告するよう案内しています。
この扱いは市町村の条例によるため、自治体によって取扱いが異なる場合があります。居抜き物件で前のテナントの内装を引き継いだ場合や、オーナーが工事費を負担した場合など、所有関係があいまいなときは、申告先の自治体に確認するのが確実です。
申告の対象にならない資産
| 対象外の資産 | 理由・補足 |
|---|---|
| 取得価額10万円未満で、一時に損金算入(必要経費算入)したもの | 少額資産として申告不要 |
| 取得価額20万円未満で、3年間で一括償却しているもの | 一括償却資産として申告不要 |
| 自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)の対象となる車両 | 別の税で課税されるため。大型特殊自動車は償却資産の対象 |
| 無形固定資産 | ソフトウェア、特許権など |
| 繰延資産 | 創立費、開業費など |
| 土地・家屋 | 土地・家屋として別に課税されるため |
少額減価償却資産の特例で取得した資産は対象になる
中小企業者等の少額減価償却資産の特例(租税特別措置法)を使って、取得時に全額を損金算入した資産は、償却資産の申告対象になります。法人税・所得税では一度に経費にできても、固定資産税では申告が必要という点で、10万円未満の少額資産や20万円未満の一括償却資産とは扱いが異なります。
この特例は令和8年度税制改正で、取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。国税庁の改正の概要によると、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産から適用され、年間の合計300万円の上限は変わりません。中小企業庁の資料では、措置期間は令和10年度末(2029年3月31日)までとされています。
たとえば2026年5月に35万円の業務用冷蔵庫を購入して特例で全額損金算入した場合、2027年1月1日に所有していれば、2027年1月の償却資産の申告に含めます。特例の詳しい内容は、関連記事「少額減価償却資産の特例が40万円未満に」で解説しています。
| 取得価額と会計処理 | 償却資産の申告 |
|---|---|
| 10万円未満で一時に損金算入 | 不要 |
| 20万円未満で一括償却(3年均等) | 不要 |
| 中小企業者等の特例で全額損金算入(2026年4月1日以後の取得は40万円未満) | 必要 |
| 通常の減価償却 | 必要 |
免税点・税率と税額の計算方法
評価額の計算
償却資産の評価額は、取得価額から毎年の減価分を差し引いて計算します。東京都主税局によると、前年中に取得した資産は「取得価額×(1−減価率×1/2)」、前年より前に取得した資産は「前年度評価額×(1−減価率)」で求めます。評価額の最低限度は取得価額の5%です。
実際の評価額は、申告内容をもとに市町村が計算します。所有者が行うのは、取得年月・取得価額・耐用年数などを正しく申告することです。
免税点と税額の計算例
同じ市町村内の償却資産の課税標準額の合計が免税点未満なら、固定資産税は課税されません。免税点以上なら、課税標準額に税率を掛けて税額を求めます。以下は標準税率1.4%で計算した例です。
| 課税標準額の合計 | 令和8年度(免税点150万円) | 令和9年度以後(免税点180万円) |
|---|---|---|
| 140万円 | 課税なし | 課税なし |
| 160万円 | 160万円×1.4%=22,400円 | 課税なし |
| 300万円 | 300万円×1.4%=42,000円 | 300万円×1.4%=42,000円 |
小規模な店舗では、令和9年度分から課税されなくなるケースも出てきます。ただし免税点に達するかどうかは申告内容をもとに判定されるため、自己判断で申告を省略せず、手引きに従って提出しましょう。税率は標準税率で、市町村によって異なる場合があります。
申告の方法とeLTAXでの電子申告
申告書は、市町村から送られてくる申告書の様式に記入して郵送・窓口で提出するか、地方税ポータルシステム(eLTAX)を使って電子申告します。東京都主税局はeLTAXの利用を推奨しており、事務所や自宅からインターネットで手続きできます。
初めて申告する場合は「全資産申告」、2回目以降は前年からの増加・減少資産だけを記入する申告が一般的です。売却や廃棄をした資産は減少資産として申告しないと、手放した資産にも課税が続いてしまいます。
申告しない場合のリスク
東京都主税局の手引きによると、正当な理由なく申告しなかった場合は、地方税法第386条や都税条例の規定により過料を科されることがあります。虚偽の申告をした場合は、地方税法第385条により刑事罰の対象になることがあります。
また、調査などで申告漏れがわかった場合は、その年度だけでなく、資産を取得した翌年度までさかのぼって課税されることがあります。開業時の内装工事や厨房機器は金額が大きいため、申告漏れがあると数年分の税額をまとめて納めることになりかねません。
申告前のチェックリスト
- □ 1月1日時点で所有している事業用資産を固定資産台帳で確認したか
- □ テナントとして施工した内装・造作、建築設備を対象に含めたか
- □ 厨房機器、冷蔵ショーケース、レジ、看板、駐車場の舗装などの漏れがないか
- □ 少額減価償却資産の特例で損金算入した資産(2026年4月1日以後取得分は40万円未満)を含めたか
- □ 10万円未満の少額資産、20万円未満の一括償却資産、自動車税対象の車両を除いたか
- □ 売却・廃棄した資産を減少資産として記入したか
- □ 店舗ごとに申告先の市町村(23区は区ごとの都税事務所)を確認したか
- □ 提出期限とeLTAXの利用準備を確認したか
よくある質問
Q. 賃貸の店舗で、建物は所有していません。申告は必要ですか?
A. 必要になる場合が多いです。自分で施工した内装・造作や、所有している厨房機器、レジ、看板などは、テナントが償却資産として申告する扱いです。
Q. 免税点未満なら申告しなくてもよいですか?
A. 免税点は課税されるかどうかの基準で、申告義務とは別の話です。免税点の判定は申告内容をもとに行われるため、手引きの案内に従って申告してください。
Q. 30万円で買った厨房機器を特例で一括経費にしました。対象になりますか?
A. はい。中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使って損金算入した資産は、償却資産の申告対象です。10万円未満の少額資産や一括償却資産とは扱いが異なります。
Q. 社用車は申告に含めますか?
A. 自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)の対象となる車両は含めません。フォークリフトなどの大型特殊自動車は償却資産の対象になります。
まとめ
毎年1月1日に事業用の償却資産を所有している人は、1月31日までに市町村(東京23区は都税事務所)へ申告する必要があります。店舗の内装・造作、厨房機器、冷蔵ショーケース、レジ、看板、駐車場の舗装なども対象で、少額減価償却資産の特例で損金算入した資産も含まれます。
課税標準額が免税点(現在150万円、令和9年度分以後180万円)以上なら、標準税率1.4%で課税されます。eLTAXを活用し、固定資産台帳と照らし合わせて漏れのない申告を心がけましょう。