キャッシュレス決済サービスを選ぶときは、決済手数料率だけでなく、入金サイクル・振込手数料・端末費用まで含めた総コストと資金繰りへの影響で比べることが大切です。会計処理では、売上を販売日に計上し、手数料を差し引いた入金額との差額を支払手数料として処理するのが基本です。
この記事は、小売店や飲食店の経営者、店舗の経理担当者で、キャッシュレス決済の導入や乗り換え、日々の仕訳に悩んでいる方を主な読者としています。
決済手段の種類、手数料率と入金サイクルの見方、主要サービスの公開条件、経済産業省の推進の動き、仕訳例と消費税・インボイスの扱い、ポイント還元やチャージバックの注意点、選び方のチェックリストを順に解説します。料率や条件は頻繁に改定されるため、公開時点で各社の公式情報を必ず確認してください。
キャッシュレス決済の種類と最近の動き
主な決済手段
| 決済手段 | 概要 | 店舗側の主な注意点 |
|---|---|---|
| クレジットカード | 後払い。Visa、Mastercard、JCBなどの国際ブランドで決済 | ブランドごとに料率が異なる場合がある |
| デビットカード | 即時に口座から引き落とされるカード決済 | カード決済と同じ端末で受け付けることが多い |
| 電子マネー | 交通系ICなど、前払い(チャージ)型が中心 | 種類によって料率や消費税の扱いが異なる |
| QRコード決済 | スマートフォンのアプリでコードを読み取って決済 | サービスごとに個別の料率が設定されることが多い |
| タッチ決済 | カードやスマートフォンを端末にかざして決済 | 決済自体はクレジットカード等として処理される |
経済産業省のキャッシュレス推進の動き
経済産業省によると、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%(162.7兆円)でした。内訳はクレジットカードが82.7%、コード決済が10.2%、電子マネーが3.7%、デビットカードが3.4%です。同省は将来的な目標として80%、2030年までの中間目標として65%を掲げています。
手数料の透明化も進められています。経済産業省は2020年6月に「キャッシュレス決済事業者の中小店舗向け開示ガイドライン」を公表し、2022年11月にクレジットカードのインターチェンジフィーの標準料率、2023年6月に加盟店手数料の配分率を公開しました。2026年1月には「キャッシュレス推進検討会」のとりまとめも行われています。
手数料率・入金サイクル・費用の見方
決済手数料率
決済手数料は、決済金額に一定の料率を掛けて計算され、入金時に差し引かれるのが一般的です。料率は決済ブランド、業種、売上規模、対面か非対面かによって変わることがあります。今回確認した主要サービスの公開料率では、店頭のカード決済でおおむね2.48%〜3.25%程度でした。
料率の差は小さく見えても、売上規模が大きいと負担額に差が出ます。たとえば月のキャッシュレス売上が300万円の場合、料率が0.5%違うと手数料は月1万5,000円、年18万円違います。
入金サイクルと振込手数料
入金サイクルは、決済から売上代金が口座に振り込まれるまでの期間と頻度です。月1〜2回の入金だと、仕入れや人件費の支払いが先に来て資金繰りが苦しくなる場合があります。入金のたびに振込手数料がかかるサービスや、一定額未満の入金で手数料が発生するサービスもあるため、条件を確認しましょう。
資金繰りへの影響は、入金されるまでの「立替期間」の長さで考えると分かりやすくなります。たとえば1日のキャッシュレス売上が10万円で、入金が平均10日後なら、常に約100万円が未入金の状態になります。翌営業日入金なら、この未入金額は1日分程度に抑えられます。
経済産業省の開示ガイドラインでは、入金の頻度(月何回の入金か)、特別な条件で入金する場合の条件と費用、一定の条件下で入金を停止する場合があればその内容を、事前に説明することが求められています。契約前の比較には、こうした開示情報を活用しましょう。
端末費用・月額費用
端末の購入費や貸与条件、月額利用料、通信費、レシートプリンターなどの周辺機器も総コストに含めます。経済産業省の開示ガイドラインでも、決済手数料以外の端末関連費用・通信関連費用・固定の月額利用料等を分かりやすく説明することが求められています。端末購入にはIT導入の補助制度を使える場合があるため、関連記事「デジタル化・AI導入補助金」も参考にしてください。
主要サービスの公開条件(公開時点で要確認)
以下は、各社の公式サイトで2026年10月15日時点に確認できた主な条件です。キャンペーンや改定で頻繁に変わるため、契約前に必ず最新の公式情報を確認してください。
| 項目 | Square | Airペイ |
|---|---|---|
| 決済手数料(店頭) | 2.5%〜(年間キャッシュレス決済額3,000万円未満・主要カードブランドの対面決済の場合)。それ以外は3.25%〜または個別料率 | クレジットカード・電子マネー3.24%、QRコード(d払い、PayPayなど)3.24%(税込)、COIN+1.08%(税込)。条件付きでカード主要ブランドを2.48%にする割引プログラムあり |
| 初期費用・月額費用 | 0円 | 0円(iPadまたはiPhoneは自前で用意) |
| 振込手数料 | 無料 | 無料(ゆうちょ銀行は利用不可) |
| 入金サイクル | 三井住友銀行・みずほ銀行は決済日の翌営業日。その他の銀行は木曜〜翌週水曜分を金曜にまとめて入金 | みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行は月6回、その他は月3回 |
| 端末 | 販売店・オンラインストアで購入 | カードリーダーは無償貸与(キャンペーン条件あり) |
このほかSTORES 決済などのサービスもあります。STORES 決済は2026年8月3日以降の決済分から、交通系電子マネーの決済手数料率を1.98%から3.24%に変更すると案内しており、料率は契約後も見直されることがあります。
キャッシュレス売上の会計処理と消費税・インボイス
売上の計上時期と仕訳例
キャッシュレス決済の売上は、入金日ではなく商品を販売した日(サービスを提供した日)に計上します。入金されるまでは決済事業者に対する債権となるため、「売掛金」(または「未収入金」)で処理します。
例として、税込1万円の商品をクレジットカードで販売し、決済手数料率3.24%(非課税)が差し引かれて入金されるケースの仕訳は次のとおりです(税込経理)。手数料は10,000円×3.24%=324円、入金額は10,000円−324円=9,676円です。
| 日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 販売日 | 売掛金 | 10,000円 | 売上高 | 10,000円 |
| 入金日 | 普通預金 | 9,676円 | 売掛金 | 10,000円 |
| 入金日 | 支払手数料(非課税) | 324円 |
決済事業者ごとに補助科目を設けると、入金明細との照合が楽になります。月末に売掛金残高が入金予定額と一致しているか確認する習慣をつけましょう。
決済手数料の消費税
国税庁の質疑応答事例では、信販会社が加盟店から譲り受ける債権の額と加盟店への支払額との差額(クレジット手数料)は、消費税法施行令第10条第3項第8号に該当し非課税とされています。そのため、クレジットカードの加盟店手数料は一般に非課税仕入として処理します。
一方、すべての決済手数料が非課税とは限りません。たとえばAirペイの公式サイトでは、交通系電子マネーやQRコード決済の手数料を税抜・税込で表示し、楽天Edyのみ課税対象と注記しています。決済手段や契約の仕組みで扱いが分かれるため、事業者の利用明細や請求書で課税・非課税の区分を確認してください。
インボイス(適格請求書)の受領
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために一定の事項を記載した帳簿と請求書等の保存が必要です。課税扱いの決済手数料や端末の月額利用料などは、決済事業者が発行する適格請求書(管理画面からダウンロードできる明細など)を保存しておきましょう。非課税の手数料はそもそも仕入税額控除の対象外です。
ポイント還元・チャージバックと選び方
ポイント還元
決済事業者が独自に行うポイント還元は、加盟店の売上や手数料とは別に処理されるのが一般的ですが、店舗負担のキャンペーンがないか規約で確認しましょう。店舗が自ら発行するポイントや値引きは店舗の負担となるため、販売促進の効果とあわせて処理方法を税理士等に確認してください。
チャージバック
チャージバックは、カード会員の不正利用の申し立てなどにより、カード会社が売上を取り消して加盟店に代金の返還を求める仕組みです。いったん入金された売上でも後から差し引かれることがあるため、本人確認の徹底や取引記録の保管が重要です。入金停止や相殺の条件は規約で事前に確認しておきましょう。
選び方のチェックリスト
- □ 自店の客層がよく使う決済手段(カード・交通系IC・QR)に対応しているか
- □ 決済ブランドごとの手数料率と、売上規模による料率の違いを確認したか
- □ 入金サイクルが仕入れ・家賃・給与の支払日に間に合うか
- □ 振込手数料の有無、指定できる銀行口座の制限を確認したか
- □ 端末代、月額費用、通信費、周辺機器の費用を合計したか
- □ POSレジや会計ソフトと連携でき、仕訳データを出力できるか
- □ 課税扱いの手数料について適格請求書を受け取れるか
- □ 料率改定、入金停止、チャージバックの条件を規約で確認したか
よくある質問
Q. 決済手数料はいつ経費に計上しますか。
A. 一般には、手数料が差し引かれた入金日に支払手数料として計上します。決算期末をまたぐ場合は、期末までの売上に対応する手数料を未払金で計上するなど、期間対応に注意してください。
Q. 現金売上と同じ「売上高」でよいですか。
A. 勘定科目は同じ売上高で問題ありませんが、相手科目を売掛金にして入金を管理するのが基本です。決済事業者別に補助科目を設けると照合しやすくなります。
Q. 決済手数料は必ず非課税ですか。
A. クレジットカードの加盟店手数料は国税庁の事例で非課税とされていますが、電子マネーやQRコード決済では課税扱いのものもあります。利用明細や請求書の表示で区分を確認してください。
Q. 複数の決済サービスを併用してもよいですか。
A. 併用は可能ですが、端末やレジ操作が複雑になり、入金照合の手間も増えます。売上構成を見て、主に使う決済手段に強いサービスを中心に選ぶのが現実的です。
まとめ
キャッシュレス決済は、手数料率に加えて入金サイクル、振込手数料、端末・月額費用を合わせて比較することが重要です。料率や条件は頻繁に変わるため、経済産業省のガイドラインに沿った各社の開示情報を契約前に確認しましょう。
会計処理は、販売日に売掛金で売上を計上し、入金時に手数料を支払手数料として処理するのが基本です。クレジットカードの手数料は非課税ですが、課税扱いの手数料もあるため、明細の区分と適格請求書の保存を忘れないようにしてください。