10月は、地域別最低賃金の改定をはじめ、社会保険・税・労務の制度変更が集中する月です。店舗では時給の引き上げ、社会保険の加入判断、酒類やたばこの価格表示など、給与計算と売り場の両方で対応が必要になります。

この記事は、パート・アルバイトを雇用する飲食店や小売店の経営者、店長、給与計算の担当者に向けたものです。2026年10月の主な変更点を中心に、毎年10月に確認すべき項目を整理しています。

最低賃金、社会保険の適用拡大、酒税とたばこ税、インボイス制度の経過措置、カスタマーハラスメント対策の義務化について、施行日と店舗でやることを順に解説します。制度は毎年変わるため、この記事も年に1回更新します。

2026年10月に変わる主な制度の一覧

まず、2026年10月に店舗の経営に関係する主な変更を一覧にします。厚生労働省は「主な制度変更(令和8年10月)」として、最低賃金の改定、カスタマーハラスメント対策の義務化、社会保険の賃金要件の撤廃などをまとめて公表しています。

分野変更内容時期店舗でやること
労務地域別最低賃金の改定(全国加重平均1,177円)2026年10月1日〜12月2日に都道府県ごとに順次発効時給の見直し、求人票の修正
社会保険短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円)の撤廃2026年10月加入対象者の再確認
税酒税の改正(ビール・発泡酒の税率が1kLあたり155,000円に)2026年10月1日仕入価格・売価の見直し、手持品課税の確認
税加熱式たばこの課税方式見直し(第二段階)2026年10月1日販売価格の変更確認
消費税免税事業者等からの仕入れの控除割合が80%から70%へ2026年10月1日仕入先の登録状況の確認
労務カスタマーハラスメント対策の義務化2026年10月1日方針の策定・周知、相談窓口の設置
労務同一労働同一賃金ガイドライン等の改正2026年10月正社員とパートの待遇差の点検

最低賃金の改定と社会保険の適用拡大

地域別最低賃金は10月から順次発効

地域別最低賃金は、毎年夏に各都道府県で改定額が答申され、10月以降に順次発効します。厚生労働省によると、2026年度(令和8年度)は全都道府県で54円〜65円の引き上げとなり、全国加重平均額は前年度の1,121円から56円上がって1,177円になりました。

最高額は1,280円、最低額は1,085円です。発効日は2026年10月1日から12月2日までの間で、都道府県によって異なります。自店の所在地の発効日を必ず確認し、その日以降の労働分から新しい最低賃金を下回らないようにします。都道府県別の金額や発効日は、関連記事「2026年度最低賃金」で一覧にしています。

給与の締め日が月の途中にある場合、発効日をまたぐ給与計算期間では、発効日以降の労働時間に新しい時給を適用する必要があります。月給制の社員も、月給を月の所定労働時間で割った時給換算額が最低賃金以上かどうかを確認してください。

社会保険の賃金要件(いわゆる106万円の壁)の撤廃

パート・アルバイトなどの短時間労働者が健康保険・厚生年金保険に加入する要件のうち、月額8.8万円以上という賃金要件が2026年10月に撤廃されます。厚生労働省は、全国の最低賃金が1,016円以上となり、週20時間働けば賃金要件を満たすようになったことを撤廃の理由としています。

撤廃後も、週の所定労働時間20時間以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないこと、企業規模の要件は残ります。企業規模要件は、2027年9月までは従業員51人以上で、その後は次のように段階的に縮小されます。

時期適用対象となる企業規模
2027年9月まで従業員51人以上
2027年10月従業員36人以上
2029年10月従業員21人以上
2032年10月従業員11人以上
2035年10月従業員10人以下も対象

また、個人事業所は現在、常時5人以上を使用する法定17業種が対象ですが、2029年10月以降は業種を問わず常時5人以上の事業所が対象になります。ただし、その時点で既に存在する事業所は当分の間対象外とされています。新たに対象となる中小事業所の短時間労働者については、保険料負担を軽減する「保険料調整制度」も設けられます。詳しくは関連記事「106万円の壁撤廃」をご覧ください。

標準報酬月額の改定も10月の給与に影響

毎年4月〜6月の報酬をもとに行う定時決定(算定基礎届)で決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用されます。前月分の社会保険料を翌月の給与から控除している事業所では、10月支給の給与から新しい保険料額になるため、給与計算ソフトの設定を確認します。

酒税・たばこ税の改正

酒税はビール系の税率が一本化

酒税は、2020年10月、2023年10月、2026年10月の3段階で見直されてきました。国税庁の酒税率一覧表によると、2026年10月1日以降は、ビールと発泡酒の税率がいずれも1kLあたり155,000円になります。350mlに換算すると約54.25円です。

チューハイなどアルコール分11度未満の「その他の発泡性酒類」は1kLあたり100,000円(350mlあたり35円)です。国税庁の資料では、いわゆる新ジャンルにあたる発泡酒は350mlあたり約7.26円の引き上げ、その他の発泡性酒類(アルコール分10度未満)は350mlあたり7円の引き上げとされています。

税率の引き上げ対象となる酒類を2026年10月1日時点で販売用に一定量以上所持していた場合、手持品課税の申告が必要です。国税庁によると、所持数量が2,000リットル以上の場合は2026年11月2日までに申告が必要とされています。居酒屋や酒販店は、仕入先からの価格改定の案内とあわせて、メニューや棚札の価格を見直してください。詳しくは関連記事「酒税一本化」で解説しています。

加熱式たばこの課税方式見直し

加熱式たばこは、紙巻たばこの本数に換算して課税する方法が見直され、2026年4月1日から段階的に実施されています。国税庁によると、2026年4月1日が第一段階、10月1日が第二段階で、10月1日からは新しい換算方式に完全に移行します。

コンビニやたばこを扱う小売店では、メーカーの価格改定にあわせて販売価格や棚札、POSの価格マスタを更新する必要があります。銘柄ごとの影響は関連記事「加熱式たばこの課税見直し」でまとめています。

インボイス制度とカスタマーハラスメント対策

免税事業者からの仕入れは控除80%から70%へ

インボイス制度は2023年10月1日に始まり、10月は経過措置の区切りが来る月でもあります。免税事業者など、インボイスを発行できない事業者からの仕入れについて、仕入税額控除できる割合は次のように段階的に縮小されます。

期間控除できる割合
2026年9月30日まで80%
2026年10月1日〜2028年9月30日70%
2028年10月1日〜2030年9月30日50%
2030年10月1日〜2031年9月30日30%
2031年10月1日以降控除不可

この割合は、2026年度(令和8年度)税制改正で見直された後の内容です。個人の農家や小規模な仕入先から食材を仕入れている飲食店は、仕入先の登録状況と取引価格の見直しが必要か確認してください。

2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで

インボイス発行事業者になった小規模事業者が納税額を売上税額の2割にできる「2割特例」は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象です。個人事業者は2026年分の確定申告まで、3月決算の法人は2027年3月期の申告まで適用できます。

個人事業者については、2027年分と2028年分の申告で「3割特例」を適用できることになりました。法人や、3割特例の対象外となる事業者は、簡易課税制度への移行を検討します。詳しくは関連記事「インボイス2割特例が終了」をご覧ください。

カスタマーハラスメント対策が事業主の義務に

2025年6月に改正された労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になりました。規模にかかわらずすべての事業主が対象で、来店客と接する飲食店や小売店には特に関係が深い改正です。

事業主が講じる措置は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、相談があったときの事実確認と被害者への配慮・再発防止、悪質なケースへの対処方針の策定などです。同じ日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も義務になりました。具体的な対応は関連記事「カスハラ対策義務化」で解説しています。

10月にやることチェックリスト

毎年10月の前後に、次の項目を確認します。2026年に特有の項目と、毎年確認する項目を分けずに並べています。

  • □ 自店の都道府県の最低賃金と発効日を確認した
  • □ 新しい最低賃金を下回る時給のスタッフがいないか確認した(研修期間中の時給も含む)
  • □ 月給制の社員の時給換算額が最低賃金以上か確認した
  • □ 給与計算ソフトの時給・社会保険料の設定を更新した
  • □ 求人票、求人サイト、店頭の募集告知の時給を修正した
  • □ 時給の引き上げに伴う人件費の増加をシフトに反映した
  • □ 週20時間以上働くパート・アルバイトの社会保険加入要件を確認した
  • □ 2027年10月の企業規模要件の拡大(36人以上)に自社が該当するか確認した
  • □ 酒類・たばこの仕入価格の変更を確認し、メニューや棚札、POSの価格を更新した
  • □ 価格表示が税込の総額表示になっているか確認した
  • □ 免税事業者の仕入先を洗い出し、控除割合の変更を経理に共有した
  • □ 2割特例の終了後の申告方法(簡易課税・3割特例など)を税理士と確認した
  • □ カスハラ対策の方針を作り、従業員に周知した
  • □ カスハラの相談窓口を決め、スタッフに伝えた
  • □ 正社員とパートの手当・休暇の待遇差を点検した

よくある質問

Q. 最低賃金の発効日が月の途中の場合、給与はどう計算しますか。

A. 発効日以降の労働時間について、新しい最低賃金以上の時給を支払う必要があります。給与計算期間の途中で発効する場合は、発効日の前後で時給を分けて計算するか、締め日の初日から新しい時給に切り替えます。

Q. 従業員が10人程度の店舗でも、10月の社会保険の改正に対応が必要ですか。

A. 2026年10月の賃金要件の撤廃は、短時間労働者の適用拡大の対象となる企業(2027年9月までは従業員51人以上)が主な対象です。小規模な店舗でも、企業規模要件は2035年10月までに段階的に縮小されるため、将来の加入対象者と保険料負担を早めに試算しておくと安心です。

Q. 酒税が上がった分は、すぐにメニュー価格へ反映しなければいけませんか。

A. 価格を変えるかどうかは店舗の判断です。ただし、ビール系とチューハイ系で税額の変わり方が異なるため、仕入価格の変更を確認したうえで、原価率への影響を計算してから判断すると安全です。

Q. 毎年10月に必ず変わる制度はありますか。

A. 地域別最低賃金は、近年は毎年10月以降に順次発効しています。また、社会保険料は定時決定の結果が9月分から適用されるため、10月の給与で控除額が変わることが多くあります。税制の変更は年によって異なるため、毎年確認が必要です。

まとめ

2026年10月は、最低賃金の改定に加え、社会保険の賃金要件の撤廃、酒税のビール系一本化、加熱式たばこの課税方式見直し、インボイスの控除割合の縮小、カスハラ対策の義務化が重なりました。店舗では、時給と求人票、社会保険の加入判断、酒類・たばこの価格表示、仕入先の確認、カスハラ対策の方針づくりが主な作業です。

最低賃金と社会保険料の改定は毎年10月前後にやってきます。チェックリストを年に1回見直し、給与計算と価格表示の更新漏れを防いでください。

出典