新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、申請受付が2026年9月30日(水)に始まり、締切は2026年10月30日(金)18:00です。当初は8月31日受付開始・9月30日締切の予定でしたが、2026年7月に延期されました。補助上限は枠と従業員数によって異なり、賃上げ特例を使うと最大9,000万円です。

この補助金は、既存の店舗運営とは異なる新しい事業に踏み出したい小売業・外食業の経営者に関係します。たとえば、外食企業が食品製造や冷凍食品の販売に乗り出す、小売店が自社開発の商品で新しい市場を開く、といった計画が想定されます。

この記事では、制度の成り立ち、3つの枠の補助上限と補助率、賃上げなどの基本要件、対象外になりやすいケース、事業計画書のポイント、スケジュールを整理します。数字は公募要領(第1回)と公式サイトで確認したものですが、公募要領は公開後に複数回更新されているため、申請前に必ず最新版を確認してください。

新事業進出・ものづくり補助金とは(統合の背景)

この補助金は、公募要領によると「中小企業等事業再構築促進補助金」「中小企業新事業進出促進補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」を統合した制度です。事務局は中小企業基盤整備機構が担い、2026年6月29日に第1回の公募が始まりました。

支援の対象は、技術的に革新性のある製品・サービスの開発、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場の開拓(輸出)の3つです。これまで「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」を別々に検討していた事業者は、1つの制度の中で枠を選ぶ形になります。

3つの枠と補助上限・補助率

補助上限は従業員数で段階的に決まり、かっこ内は賃上げ特例を適用した場合の額です。

従業員数革新的新製品・サービス枠従業員数新事業進出枠・グローバル枠
1〜5人750万円(850万円)1〜20人2,500万円(3,000万円)
6〜20人1,000万円(1,250万円)(同上)(同上)
21〜50人1,500万円(2,500万円)21〜50人4,000万円(5,000万円)
51人以上2,500万円(3,500万円)51〜100人5,500万円(7,000万円)
——101人以上7,000万円(9,000万円)
補助下限100万円補助下限750万円
枠支援の内容補助率
革新的新製品・サービス枠自社の技術力等を活かした新製品・新サービスの開発中小企業1/2(特例で2/3)、小規模企業・小規模事業者2/3
新事業進出枠既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出1/2(特例で2/3)
グローバル枠海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制の強化2/3

新事業進出枠の下限は750万円なので、補助率1/2の場合、補助対象経費は少なくとも1,500万円規模(750万円÷1/2)が必要になります。小さな設備投資なら、革新的新製品・サービス枠や、ほかの補助金も比べて検討するとよいでしょう。

全枠に共通する基本要件(賃上げなど)

申請者は、補助事業終了後3〜5年の事業計画で、次の目標をすべて満たす必要があります。賃上げ関連の目標は、未達の場合に補助金の返還を求められる規定があるため、実現できる数字で計画することが大切です。

  • 付加価値額の年平均成長率4.0%以上
  • 従業員1人あたり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(未達の場合、達成度に応じた返還規定あり)
  • 事業場内最低賃金を、毎年、事業実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高くする(未達の年は返還規定あり)
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表(ワークライフバランス要件)
  • 子育て環境の整備に関する取組(公募要領が示す選択肢から実施)
  • 金融機関から資金提供を受ける場合は、金融機関による事業計画の確認

賃上げ特例で補助上限を引き上げる場合は、給与支給総額の目標が年平均成長率6.0%(基本の3.5%に2.5%を上乗せ)になります。パート・アルバイト比率が高い飲食店では、人件費の増加が利益に直結するため、特例を使うかは慎重に判断してください。

小売・外食での活用イメージと対象外になりやすいケース

使える可能性がある取組

補助対象経費には、機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費があります。建物費は、生産施設・加工施設・販売施設・検査施設・作業場の建設や改修が対象です。

想定する取組検討する枠確認したい点
外食企業がセントラルキッチンを整え、冷凍食品やレトルト食品を製造して量販店・ECで販売する新事業進出枠製品と市場の両方が「新しい」と言えるか。自店舗への供給が中心なら既存事業の延長と見られるおそれ
ベーカリーや菓子店が独自の製法を使った新商品を開発する革新的新製品・サービス枠同業の中小企業で既に普及している製品・技術ではないか
小売店が自社ブランドの食品・雑貨を製造して海外へ輸出するグローバル枠輸出に向けた国内体制の強化として説明できるか

いずれも、上の表はあくまで検討の入り口です。実際に対象となるかは、公募要領の要件への当てはまりと審査で決まります。

対象外になりやすいケース

新事業進出枠では、既存製品の製造量・提供量を増やすだけの取組、過去に扱っていた製品の再製造、製造方法を変えるだけの取組、既存製品と対象市場が同じ取組は対象外とされています。同じ業態の店舗を増やす計画は、既存事業の拡大と判断される可能性が高いと考えられます。

経費の面では、既存の機械装置の単なる置き換え、店舗などの単純な購入や賃貸、建物の不動産賃貸への転用などが対象外です。革新的新製品・サービス枠でも、機械装置を導入するだけの計画は対象外とされています。

また、補助事業の主な内容を他社に外注・委託する事業も対象外です。食品製造を委託先に任せる計画は注意が必要で、外注費は補助対象経費の1/4以下という上限もあります。取引先への発注条件の見直しについては、関連記事「取適法(改正下請法)」も参考にしてください。

事業計画書のポイントとスケジュール

計画書で押さえたいこと

  • 「何が新しいのか」を製品と市場の両面で説明する(新事業進出枠)
  • 顧客、販路、価格、販売数量の見込みを数字で示す
  • 付加価値額と給与支給総額の3〜5年の推移を、根拠とともに示す
  • 設備・建物・人員の体制と、補助事業期間内に実施できる工程表を用意する
  • 広告宣伝・販売促進費は売上見込みの5%以下など、費目ごとの上限を守る

事務局サイトでは、補助事業計画検討用のフォーマットや応募申請ガイド、説明動画も公開されています。申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要で、発行には1週間程度かかるとされています。

第1回のスケジュール

項目日程
公募開始2026年6月29日(月)
申請受付開始2026年9月30日(水)
応募締切2026年10月30日(金)18:00
採択結果発表2027年1月(予定)
交付申請採択発表日から原則2か月以内
補助事業実施期間交付決定日から、新事業進出枠・グローバル枠は14か月以内、革新的新製品・サービス枠は10か月以内

申請前のチェックリスト

  • □ 選ぶ枠と、自社の従業員数に応じた補助上限・下限を確認した
  • □ 新事業進出枠の場合、製品と市場の両方の新規性を説明できる
  • □ 単なる店舗増設や既存設備の置き換えになっていない
  • □ 付加価値額4.0%、給与支給総額3.5%、事業場内最低賃金+30円の目標を達成できる見込みがある
  • □ 一般事業主行動計画の公表など、共通要件の準備を始めた
  • □ GビズIDプライムを取得済み
  • □ 自己負担分と、補助金入金までのつなぎ資金を確保している
  • □ 最新の公募要領(更新版)で要件と日程を確認した

よくある質問

Q. 飲食店の新店舗出店に使えますか。

A. 同じ業態の店舗を増やすだけでは、既存事業の拡大と見られる可能性が高いと考えられます。店舗の単純な購入・賃貸も対象外経費です。新しい製品を新しい市場に提供する事業かどうかを、公募要領で確認してください。

Q. セントラルキッチンの建設費は対象になりますか。

A. 新事業進出枠とグローバル枠では、生産施設や加工施設の建設・改修が建物費の対象です。ただし、そのキッチンで行う事業自体が新事業進出の要件を満たす必要があります。基礎工事や設置場所の整備工事など、対象外となる工事もあります。

Q. 賃上げ目標を達成できなかった場合はどうなりますか。

A. 給与支給総額の目標が未達の場合、達成度に応じて補助金の一部または全部の返還を求める規定があります。事業場内最低賃金の目標が未達の年も返還規定があります。

Q. 従来のものづくり補助金とは別に申請できますか。

A. 本制度はものづくり補助金などを統合したものです。過去の補助金を受けた事業者の扱いや重複の制限は、公募要領で確認してください。

まとめ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、3つの枠で最大3,500万円〜9,000万円(賃上げ特例適用時)を補助する大型の制度です。第1回は2026年10月30日18:00が締切で、GビズIDの取得や計画づくりに時間がかかるため、早めの準備が欠かせません。

小売・外食では、セントラルキッチンを使った食品製造や新商品の開発など、「新しい製品を新しい市場へ」届ける計画が中心になります。単なる店舗増設は対象外になりやすく、賃上げ目標には返還規定もあるため、最新の公募要領を読み込み、実現可能な計画を立ててください。

関連記事:「小規模事業者持続化補助金の使い方|店舗改装・チラシ・ECで使える経費と申請の流れ」「取適法(改正下請法)」

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