店舗向けの補助金は国の制度だけでなく、都道府県や市区町村、その外郭団体が独自に実施しているものも多く、ミラサポplusやJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」を使うと地域の制度をまとめて探せます。地域の制度は対象が「その地域の事業者」に限られる分、国の制度より競争相手が少ない場合もあります。

この記事は、小売店や飲食店の経営者、店舗の設備投資や販促を担当している方に向けたものです。「自分の店がある地域でどんな補助金が使えるのか」「どこで調べればよいのか」がわからない方を想定しています。

国と自治体の補助金の違い、具体的な探し方、よくある制度の類型、東京都の実例3件、国の制度との併用の考え方、申請時の注意点を順に解説します。

国の補助金と自治体の補助金の違い

国の補助金は、中小企業庁などが全国の事業者を対象に実施するもので、予算規模が大きく、公募の情報も広く知られています。一方、自治体の補助金は、都道府県や市区町村、自治体の外郭団体(中小企業振興公社など)が、その地域に事業所がある事業者を対象に実施します。

自治体の制度は、地域の課題(商店街の空き店舗、脱炭素、人手不足など)に合わせて作られているのが特徴です。金額は国の制度より小さいものもありますが、店舗改装や設備更新など、店舗に身近な経費が対象になっている制度が多く見られます。

項目国の補助金自治体の補助金
実施主体中小企業庁など国の機関、事務局都道府県・市区町村、中小企業振興公社などの外郭団体
対象者全国の中小企業・小規模事業者その地域に事業所がある事業者(要件は制度ごとに異なる)
情報の探し方ミラサポplus、jGrants、各補助金の事務局サイトJ-Net21支援情報ヘッドライン、自治体・公社・商工会議所のサイト
特徴予算規模が大きく、公募情報が広く知られている地域の課題に合わせた制度が多く、店舗改装など身近な経費が対象になりやすい

なお、補助金と助成金の違い(審査の有無や所管の違いなど)については、関連記事「補助金と助成金の違い」で整理しています。

自治体の補助金の探し方:5つの窓口

自治体の補助金は、実施主体ごとに情報が分散しています。次の順番で探すと、漏れを減らせます。

1. ミラサポplus(中小企業庁)

ミラサポplusは、経済産業省・中小企業庁が運営する中小企業向けの支援サイトです。国の補助金の公募情報に加えて、地域の支援制度を探す機能や、補助金の活用事例を紹介する「事例ナビ」などがあります。

2. J-Net21「支援情報ヘッドライン」(中小企業基盤整備機構)

J-Net21は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業向けのビジネス支援サイトです。その中の「支援情報ヘッドライン」では、国や都道府県の補助金・助成金・融資、セミナーなどの情報を、都道府県別・キーワード別に検索できます。

RSS配信やメールマガジンにも対応しているため、自店の都道府県を登録しておくと、新しい公募を見逃しにくくなります。

3. jGrants(デジタル庁)

jGrants(Jグランツ)は、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システムで、国だけでなく自治体の補助金も掲載されています。申請にはGビズIDが必要です。IDの取得には時間がかかる場合があるため、早めに準備しておくと安心です。

4. 都道府県・市区町村・中小企業振興公社のサイト

都道府県の産業労働部局や環境部局、市区町村の商工担当課のサイトには、独自の補助金が掲載されています。東京都の場合は、東京都中小企業振興公社やクール・ネット東京(東京都環境公社)など、外郭団体が窓口になっている制度もあります。

5. 商工会議所・商工会

市区町村の補助金は、ポータルサイトに載っていないこともあります。地元の商工会議所や商工会は地域の制度に詳しく、申請書類の相談に応じている場合もあるため、あわせて確認しましょう。

店舗向けによくある自治体補助金の類型

自治体の店舗向け補助金には、次のような類型がよく見られます。制度の名称や要件は地域ごとに異なるため、キーワードを変えながら検索するのがコツです。

類型主な対象経費の例検索キーワードの例
省エネ設備の更新高効率空調、LED照明、冷凍冷蔵設備など省エネ、脱炭素、ゼロエミッション、設備更新
店舗改装・空き店舗活用内外装工事、店舗の賃借料、設備費空き店舗、出店支援、商店街、開業
商店街の活性化商店街のイベント、共同設備(商店街組織向けが中心)商店街、にぎわい、地域商業
キャッシュレス・DXキャッシュレス決済端末、POSレジ、予約・在庫管理システムDX、デジタル化、キャッシュレス、IT導入
創業支援開業時の設備費、広告費、賃借料創業、起業、開業
カスハラ対策・職場環境マニュアル作成、録音・録画機器の導入などカスタマーハラスメント、職場環境、奨励金

キャッシュレスやDXの補助金は、年度によって実施の有無や対象が変わりやすい分野です。前年度の情報だけで判断せず、その年度の募集要項で確認しましょう。

東京都の具体例3件(2026年10月1日時点で確認できたもの)

ここでは、東京都が2026年度(令和8年度)に募集している制度のうち、店舗に関係が深い3件を紹介します。金額や期間は東京都の報道発表で確認した内容で、詳細は必ず最新の募集要項で確認してください。

制度名対象・内容助成率・金額受付時期
ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業(窓口:クール・ネット東京)中小企業等による高効率空調、全熱交換器、LED照明、高効率ボイラーなどの導入CO2削減量などの要件に応じて助成率3分の2〜4分の3、上限1,000万円〜4,500万円2026年度は年6回受付(第1回は4月21日〜5月8日)
商店街起業・承継支援事業/若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(窓口:東京都中小企業振興公社)都内商店街での新規開業、事業承継に伴う店舗改装など商店街起業・承継支援事業:3分の2以内、上限694万円。若手・女性リーダー応援プログラム:4分の3以内、上限844万円第1回4月23日〜5月14日、第2回7月10日〜31日、第3回10月9日〜30日
カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金常時雇用する従業員300人以下の都内中小企業等。カスハラ対策マニュアルの作成と、録音・録画環境の整備などの取組40万円第2回の事前エントリーは10月23日〜11月6日

省エネ設備の制度は、申請前に省エネ診断を受けることや、交付決定前に契約しないことなどが求められています。商店街の制度は、若手・女性リーダー応援プログラムの対象が「女性または39歳以下(2027年3月31日時点)の若手男性」とされており、申請は原則jGrantsでの電子申請です。

カスハラ対策の奨励金は、2025年4月1日以降に実施した取組が対象で、支給申請は抽選により複数回に分けて実施される予定とされています。カスハラ対策そのものについては、関連記事「カスハラ対策義務化」も参考にしてください。

国の制度との併用と申請時の注意点

同じ経費への重複は原則できないと考える

国の補助金と自治体の補助金を、同じ店舗で別々の経費に使うことは認められる場合があります。一方、同じ経費に国と自治体の補助金を重ねて受けることは、多くの制度で認められていません。

併用の可否は制度ごとに募集要項で定められているため、「他の補助金との重複」に関する項目を必ず確認し、不明な点は事務局に問い合わせましょう。

交付決定前の発注・契約は対象外になりやすい

多くの補助金では、交付決定前に契約・発注・支払いをした経費は対象外になります。「工事を先に始めて、後から補助金を申請する」という進め方は避けるべきです。

予算に達すると早期に締め切られることがある

自治体の補助金は予算の範囲内で実施されるため、申請額が予算に達した時点で受付を終了する制度もあります。公募開始の時期を把握し、見積書や事業計画などの書類を前もって準備しておくと安心です。

  • □ 店舗の所在地(都道府県・市区町村)で検索した
  • □ J-Net21支援情報ヘッドラインのRSSやメールマガジンを登録した
  • □ 商工会議所・商工会に、地域独自の制度がないか問い合わせた
  • □ GビズIDを取得済み、または取得手続きを始めた
  • □ 募集要項で、対象者・対象経費・助成率・上限額を確認した
  • □ 交付決定前に契約・発注・支払いをしない段取りにしている
  • □ 国の補助金など、他の制度との重複に関する規定を確認した
  • □ 事前診断や事前エントリーなど、申請前に必要な手続きを確認した
  • □ 見積書、図面、事業計画などの書類を早めに準備している

よくある質問

Q. 個人事業主でも自治体の補助金を使えますか。

A. 多くの制度で中小企業に個人事業主も含まれますが、対象者の範囲は制度ごとに異なります。開業前の方や、営業年数の要件がある制度もあるため、募集要項の「対象者」を確認してください。

Q. 店舗の所在地と住所が違う自治体の補助金は使えますか。

A. 自治体の補助金は、その地域に事業所や店舗があることを要件とするものが一般的です。どの住所が基準になるか(本店所在地か、補助対象の店舗か)は制度ごとに異なるため、事務局に確認しましょう。

Q. 工事が終わった後に申請しても補助金は受けられますか。

A. 多くの制度では、交付決定前に契約・着手した経費は対象外です。一方、東京都のカスハラ対策の奨励金のように、一定日以降に実施した取組を対象とする制度もあります。申請と着手の順番は、制度ごとに必ず確認してください。

Q. 毎年同じ制度が募集されますか。

A. 継続して実施される制度もありますが、内容や金額、受付回数が年度ごとに変わることがあります。前年度の情報をもとに準備を進めつつ、その年度の募集要項で最終確認しましょう。

まとめ

自治体の店舗向け補助金は、J-Net21の支援情報ヘッドラインやミラサポplus、jGrantsで探したうえで、都道府県・市区町村・中小企業振興公社・商工会議所のサイトでも確認すると漏れを減らせます。省エネ設備、店舗改装・空き店舗活用、キャッシュレス・DX、創業、カスハラ対策などの類型ごとにキーワードを変えて検索しましょう。

東京都では、省エネ設備、商店街での開業・承継、カスハラ対策の制度が2026年度も募集されています。申請前には、同じ経費への重複がないか、交付決定前に着手していないか、予算到達による早期終了がないかを確認し、余裕をもって準備を進めてください。

出典