会社が従業員に支給する食事は、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、かつ会社負担額が1か月7,500円(税抜)以下であれば、給与として課税されません。この上限は2026年(令和8年)4月1日以後に支給する食事から、従来の月3,500円から引き上げられました。どちらか一方でも満たさないと、会社負担額の全額が給与として所得税の源泉徴収の対象になります。

この記事は、まかないを出している飲食店のオーナーや、弁当代・食事補助を出している小売店の経理担当者向けです。「まかないは無料で出しているが問題ないか」「食事代を現金で渡してもよいか」といった疑問に答えます。

国税庁のタックスアンサー(No.2594 食事を支給したとき)を中心に、まかないの評価額の考え方、残業・深夜勤務時の特例、現金支給や食事券の扱い、消費税、社会保険の現物給与までを、計算例とともに整理します。

食事の支給が非課税になる2つの要件

役員や使用人に支給する食事は、次の2つの要件を両方とも満たしていれば、給与として課税されません。これは所得税基本通達36-38の2に基づく取扱いです。

  1. 役員や使用人が、食事の価額の半分以上を負担していること
  2. 食事の価額から役員や使用人の負担額を差し引いた残額(会社負担額)が、1か月当たり7,500円(消費税・地方消費税を除く)以下であること

会社負担額の判定は税抜金額で行い、税抜にしたときに10円未満の端数が出たら切り捨てます。要件を満たさない場合は、超えた部分だけでなく、会社負担額の全額が給与として課税される点に注意が必要です。

2026年4月からの改正点

国税庁は「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」で、限度額の引上げを公表しています。改正は令和8年4月1日以後に支給する食事について適用されます。

項目改正前2026年4月1日以後
食事の現物支給の非課税限度額(会社負担額)月3,500円以下月7,500円以下
深夜勤務者の夜食代(現金)の非課税限度額1食300円以下1食650円以下
従業員の負担割合の要件食事の価額の半分以上変更なし(半分以上)

いずれの金額も消費税・地方消費税を除いた金額です。社内規程や給与計算ソフトの設定が旧金額のままになっていないか、確認しておきましょう。

まかない・弁当の「食事の価額」の決め方

非課税の判定は「食事の価額」を基準にします。価額の決め方は、食事の用意の仕方によって異なります。

支給の方法食事の価額店舗での例
弁当業者などから購入して支給業者に支払う金額小売店のバックヤードで仕出し弁当を配る
自社の厨房・社員食堂で調理して支給材料費や調味料など、食事を作るために直接かかった費用の合計額飲食店で営業用の食材を使ってまかないを作る
外部業者に施設を無償で提供し、材料を支給して調理を委託自社調理と同じく、直接かかった費用の合計額社員食堂の運営を委託している場合

飲食店のまかないは、メニューの販売価格ではなく、材料費などの直接費用で評価します。調理スタッフの人件費や光熱費は、直接費用に含めない扱いです。1食ごとの原価を把握しにくい場合は、まかない用に使った食材の記録を残しておくと、後から説明しやすくなります。

計算例で確認する(税抜金額)

以下はいずれも2026年4月1日以後に支給する食事を前提にした例です。金額はすべて税抜で計算しています。

例1:まかないを従業員負担ありで出す場合

1食の材料費が400円、月20食で、食事の価額は400円×20食=8,000円です。従業員から1食200円(月4,000円)を徴収すると、負担割合は4,000円÷8,000円=50%で要件1を満たします。会社負担額は8,000円−4,000円=4,000円で7,500円以下のため、非課税です。

例2:まかないを無料で出す場合

例1と同じ月8,000円分のまかないを無料で出すと、従業員の負担がゼロのため要件1を満たしません。この場合、8,000円の全額が給与として課税されます。会社負担額が7,500円以下かどうかは関係ありません。

例3:弁当代の会社負担が上限を超える場合

1個800円の弁当を月22日支給すると、食事の価額は800円×22日=17,600円です。従業員が半額の8,800円を負担しても、会社負担額が8,800円となり7,500円を超えます。この場合、8,800円の全額が課税対象です。

例食事の価額(月)従業員負担会社負担判定課税額
例18,000円4,000円(50%)4,000円非課税0円
例28,000円0円(0%)8,000円要件1を満たさない8,000円
例317,600円8,800円(50%)8,800円要件2を満たさない8,800円

2つの要件を同時に満たせる食事の価額は、月15,000円(従業員負担7,500円、会社負担7,500円)が上限の目安になります。食事の価額がこれを超える場合は、従業員負担を半分より多くして、会社負担額を7,500円以下に抑える必要があります。

残業・深夜勤務時の食事と、現金・食事券の扱い

残業・宿日直時の食事は無料でも非課税

残業や宿日直をするときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてよいとされています。閉店後の棚卸しや、深夜までの仕込み作業の際に出す食事などが典型例です。通常の勤務時間内のまかないとは区別して記録しておくと安心です。

深夜勤務者の夜食代は1食650円以下なら非課税

調理施設がないなどの理由で夜食を現物で支給できない場合に、夜食に代えて支給する金銭は、1食当たり650円(税抜)以下であれば課税されません。対象は、正規の勤務時間の一部または全部を午後10時から翌日午前5時までの間に行う深夜勤務者です。勤務1回ごとの定額で、通常の給与に加算して支給することが条件とされています。

現金で食事代を支給すると原則課税

上記の深夜勤務者の夜食代を除き、食事代を現金で補助すると、その全額が給与として課税されます。国税庁の質疑応答事例では、従業員が飲食店で支払った食事代の半額を会社が後から現金で支給するケースについて、補助額の全額が課税されると示されています。一方、会社が飲食店などに直接代金を支払う形であれば、現物支給として2つの要件で判定します。

食事券・チケットの扱い

食事券やチケット、電子的な食事補助サービスは、仕組みによって扱いが分かれます。換金できるものや食事以外にも使えるものは、現金と同様に課税と判断される可能性があります。導入する場合は、提供会社の説明だけでなく、顧問税理士や税務署にも確認してから運用するのが確実です。

消費税と社会保険の取扱い

従業員から徴収した食事代は消費税の課税対象

国税庁のタックスアンサー(No.6471 従業員に対する食事の提供)によると、従業員から徴収する食事代金は資産の譲渡等の対価に当たり、消費税の課税対象になります。市価より安い価格であっても同じです。無料で提供する場合は対価の授受がないため、資産の譲渡等には該当しません。

例1のように1食200円を給与天引きで徴収している場合も、その代金は課税売上げとして処理します。経理では、まかない代の徴収分を雑収入などに計上し、消費税の区分を誤らないようにしましょう。

社会保険では「現物給与の価額」で評価する

健康保険・厚生年金保険では、食事で支払われる報酬を、厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」で金銭に換算します。この価額は都道府県ごとに定められ、食事の価額は2026年4月1日から改定されています。たとえば東京都は1人1日当たり850円、1人1月当たり25,500円で、朝食・昼食・夕食のみの額も別に定められています。

厚生労働省の通知では、告示額の3分の2以上に相当する額を食費として徴収している場合は、現物による食事の供与はないものとして扱うとされています。所得税の「半分以上」とは基準が異なるため、従業員負担の設定は両方の基準で確認してください。店舗の所在地によって価額が異なるため、日本年金機構の「全国現物給与価額一覧表」で該当する都道府県の額を確認しましょう。

まかない・食事補助の運用チェックリスト

  • □ 非課税限度額を月7,500円(税抜)、夜食代を1食650円(税抜)に更新したか
  • □ まかないの価額を材料費などの直接費用で把握しているか
  • □ 従業員負担が食事の価額の半分以上になっているか
  • □ 会社負担額を税抜で計算し、月7,500円以下に収まっているか
  • □ 残業・宿日直時の食事を通常のまかないと区別して記録しているか
  • □ 食事代を現金で渡していないか(深夜勤務者の夜食代を除く)
  • □ 従業員から徴収した食事代を消費税の課税売上げとして処理しているか
  • □ 社会保険の現物給与の価額(都道府県別)を確認したか

よくある質問

Q. まかないを無料で出しています。少額なら課税されませんか?

A. 従業員の負担がゼロだと「半分以上を負担」の要件を満たさないため、金額にかかわらず会社負担額の全額が給与として課税されます。ただし、残業や宿日直のときに出す食事は無料でも非課税です。

Q. 会社負担額が7,500円を少し超えた場合、超えた分だけが課税されますか?

A. いいえ。要件を満たさない場合は、食事の価額から従業員負担を差し引いた残額の全額が課税されます。超過しそうな月は、従業員負担を増やすなどの調整が必要です。

Q. アルバイト・パートのまかないも同じ扱いですか?

A. タックスアンサーは「役員や使用人」に支給する食事を対象としており、アルバイト・パートも使用人として同じ要件で判定します。勤務日数が少ない月は食事の価額も小さくなるため、月ごとに計算してください。

Q. 7,500円の判定は税込ですか、税抜ですか?

A. 消費税・地方消費税を除いた税抜金額で判定します。税抜にしたときに10円未満の端数が出た場合は切り捨てます。

まとめ

まかないや食事補助を非課税にするには、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、会社負担額を月7,500円(税抜)以下にする必要があります。この上限は2026年4月1日以後に支給する食事から適用されており、まかないの価額は材料費などの直接費用で評価します。

残業・宿日直時の食事は無料でも非課税で、深夜勤務者の夜食代は1食650円(税抜)以下の現金支給なら非課税です。それ以外の現金での食事代補助は原則として全額課税されます。従業員から徴収した代金の消費税や、社会保険の現物給与の価額もあわせて確認しましょう。

出典