店舗の運転資金や改装資金を金融機関から借りるとき、自治体の「制度融資」と信用保証協会の保証を組み合わせると、保証料補助などの支援を受けながら借入できる場合があります。制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関の三者が協調して中小企業の資金調達を支える仕組みです。

この記事は、小売店や飲食店を経営する方、店舗の経理を担当する方で、初めて保証付き融資を検討している方を主な読者としています。日本政策金融公庫と比べてどちらに相談すべきか迷っている方にも役立つ内容です。

制度融資の仕組み、信用保証協会の保証限度額と責任共有制度、信用保証料と自治体の補助、セーフティネット保証や創業関連保証、申込の流れと必要書類、審査で見られる点を順に解説します。金額や料率は制度改正で変わるため、申込前に必ず各機関の最新情報を確認してください。

制度融資と信用保証協会の仕組み

自治体・信用保証協会・金融機関の三者で成り立つ

制度融資は、自治体が融資条件(限度額・期間・利率の上限など)を定め、金融機関が融資を行い、信用保証協会がその借入を保証する仕組みです。東京都の場合、都・東京信用保証協会・指定金融機関の三者協調によるもので、都の制度融資を受けるには東京信用保証協会の保証が必要とされています。

信用保証協会は全国に51あり、各都道府県と横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市に置かれています。協会の保証は、日本政策金融公庫による信用保険で裏打ちされており、この全体を「信用補完制度」と呼びます。

区市町村の「融資あっせん」もある

都道府県の制度とは別に、区市町村が独自の「融資あっせん」制度を設けている場合があります。たとえば江戸川区の案内では、区は直接貸し付けず、区と契約する金融機関が信用保証協会の保証付きで融資し、区が利子と信用保証料の一部を補助する仕組みと説明されています。

当事者主な役割
自治体(都道府県・区市町村)制度の条件設定、保証料補助・利子補給、あっせん
信用保証協会借入の保証、保証審査、保証料の徴収
金融機関融資の実行と回収、申込の受付
日本政策金融公庫信用保証協会の保証に対する信用保険(再保険)

保証限度額・責任共有制度・保証料

保証限度額

一般保証の保証限度額は、普通保証が2億円、無担保保証が8,000万円です(個人・法人の場合)。両方を合わせると最大2億8,000万円になり、中小企業庁の資料でも一般保証の上限は2.8億円と説明されています。

セーフティネット保証や危機関連保証は、この一般保証とは「別枠」で同額の限度額が設けられています。つまり、一般保証を使っていても、認定を受ければ別枠で保証を受けられる可能性があります。

責任共有制度(80%保証)

責任共有制度は2007年10月に導入された仕組みで、信用保証協会が借入の80%を保証し、残り20%を金融機関が負担するのが原則です。一方、小規模事業者向けの特別小口保険に係る保証、創業関連保証、セーフティネット保証1〜4号・6号、危機関連保証などは対象外で、100%保証となります。

信用保証料

保証付き融資では、借入の利息とは別に信用保証料を信用保証協会に支払います。保証料は借入金額・保証料率・借入期間・返済方法から計算され、基本料率は財務内容などの評価により9区分に分かれます。東京信用保証協会の基本料率は、責任共有の場合で年0.45%〜1.90%、責任共有外の場合で年0.50%〜2.20%です。

制度融資では、この信用保証料の一部を自治体が補助することがあります。東京都の創業融資では保証料の3分の2を都が補助し、江戸川区のあっせん融資では保証料の全額を区が補助するとされています。補助の有無と割合は自治体・メニューごとに異なります。

セーフティネット保証・創業関連保証と東京都の例

セーフティネット保証

セーフティネット保証は、取引先の倒産、災害、業況の悪化している業種に属することなどで経営に支障が出ている中小企業向けの制度で、1号〜8号の類型があります。利用するには、本店(個人は主たる事業所)所在地の市区町村長の認定を受け、その認定書を添えて金融機関または信用保証協会に申し込みます。

保証料率はおおむね1%以下で、協会・制度ごとに定められています。なお、5号(業況の悪化している業種)は2018年4月以降の申込分から保証割合が80%となっています。

創業関連保証

これから創業する方や創業後間もない方向けには、創業関連保証があります。中小企業庁の説明では、2018年4月の見直しで限度額が1,000万円から2,000万円に引き上げられ、100%保証が維持されています。自治体の創業向け制度融資と組み合わせて使われることが多い制度です。

例:東京都の「都創業融資」

東京都中小企業制度融資のメニューの一つで、東京信用保証協会の案内では概要は次のとおりです。利率の上限は年度ごとに改定されるため、公開時点の最新情報を確認してください。

項目内容
対象都内で創業する具体的計画がある方、創業5年未満の中小企業者など
資金使途運転資金・設備資金
融資限度額3,500万円
融資期間運転資金7年以内、設備資金10年以内(据置1年以内を含む)
保証料補助信用保証料の3分の2を東京都が補助
担保物的担保は原則不要(連帯保証人は必要な場合あり)
主な追加書類所定の「創業計画書」

申込の流れと日本政策金融公庫との比較

申込の流れ

  1. 資金使途と必要額を整理し、見積書や資金繰り表を準備する
  2. 自治体の窓口(区市町村のあっせん制度の場合)または取扱金融機関に相談・申込する
  3. セーフティネット保証を使う場合は、事前に市区町村長の認定を受ける
  4. 金融機関を通じて信用保証協会が保証審査を行う
  5. 保証承諾後、金融機関が融資を実行し、信用保証料を支払う
  6. 保証料補助・利子補給がある場合は、自治体に所定の手続きを行う

江戸川区の案内では、保証付き融資は申込から実行までおおむね1か月程度、新規・創業などはそれ以上かかる場合があるとされています。改装工事や仕入れの支払日から逆算して、早めに相談を始めることが大切です。

日本政策金融公庫との比較

日本政策金融公庫(国民生活事業)は、政府系金融機関として事業者に直接融資を行います。創業向けの代表的な制度「新規開業・スタートアップ支援資金」は融資限度額7,200万円で、創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できると案内されています。詳しくは関連記事「日本政策金融公庫の開業資金」もご覧ください。

比較項目制度融資(保証付き)日本政策金融公庫
貸し手民間金融機関(信用金庫・銀行など)日本政策金融公庫(直接融資)
保証信用保証協会の保証が前提信用保証協会の保証は介さない
主なコスト利息+信用保証料(自治体補助で軽減の場合あり)利息(特別利率の対象となる場合あり)
窓口金融機関、自治体、信用保証協会公庫の支店(創業予定地・本店所在地の管轄)
審査期間の目安おおむね1か月程度(江戸川区の案内)平均3週間程度(公庫の案内)
主な利点地元金融機関との取引実績ができる、保証料補助・利子補給創業期でも原則無担保・無保証人で相談できる

両者は併用されることも多く、どちらが有利かは金額・時期・自治体の補助内容によって変わります。複数の窓口で条件を聞き比べるのが現実的です。

店舗の資金の使い分けと必要書類・審査のポイント

運転資金・改装資金・設備資金の使い分け

運転資金は、仕入れ代金、人件費、家賃など日々の支払いに充てる資金です。売上の入金より支払いが先に来る時期や、季節による売上の波を埋めるために使い、返済期間は設備資金より短めに設定されるのが一般的です。

改装資金や設備資金は、内装工事、厨房機器、冷蔵ショーケース、POSレジなどの購入に充てる資金です。見積書で金額の根拠を示し、耐用年数や投資回収期間に見合った返済期間を選ぶと、毎月の返済負担を抑えやすくなります。運転資金と設備資金を混ぜて申し込むと使途が不明確になるため、分けて整理しておきましょう。

必要書類

東京信用保証協会は、相談時に決算書(2期分)などの資料と本人確認書類を持参するよう案内しています。一般的には次の書類を求められることが多く、制度・金融機関によって追加があります。

  • □ 決算書(法人)または確定申告書(個人)2期分程度
  • □ 直近の試算表(決算から時間がたっている場合)
  • □ 資金繰り表(今後6か月〜1年程度の入出金予定)
  • □ 改装・設備の見積書、工事や購入の内容がわかる資料
  • □ 創業の場合は創業計画書(自治体所定の様式がある場合あり)
  • □ 許認可が必要な業種は営業許可証など(飲食店営業許可など)
  • □ セーフティネット保証の場合は市区町村長の認定書
  • □ 本人確認書類、法人の場合は履歴事項全部証明書

審査で見られる点

東京都は、保証の可否や金額について、経営者の人柄、資金の使いみち、返済能力などを踏まえて信用保証協会が判断すると説明しています。店舗の場合は、売上と粗利の推移、家賃や人件費の比率、既存借入の返済状況が確認されやすい項目です。

税金の滞納がないこと、資金使途が見積書や計画と一致していることも重要です。改装資金であれば「改装で客数や客単価がどう変わるか」を数字で説明できると、返済計画の説得力が増します。

よくある質問

Q. 申込の窓口によって保証の条件は変わりますか。

A. 東京信用保証協会は、保証申込には2通りの方法があり、どちらでも審査内容・保証金額・信用保証料に違いはないと案内しています。各支店では随時相談も受け付けています。ただし融資そのものは金融機関が行うため、最終的には取扱金融機関との手続きが必要です。

Q. 信用保証料はいつ、どのくらいかかりますか。

A. 保証料は借入金額・料率・期間・返済方法から計算され、一般に融資実行時に支払います。基本料率は年0.45%〜2.20%の範囲で区分されますが(東京信用保証協会の場合)、制度融資では自治体の補助で負担が軽くなることがあります。

Q. 創業前でも制度融資は使えますか。

A. 多くの自治体に創業者向けのメニューがあります。東京都の都創業融資は、都内で創業する具体的計画がある方も対象で、所定の創業計画書の提出が必要です。

Q. 既に保証付き融資があっても追加で借りられますか。

A. 保証限度額(普通保証2億円・無担保保証8,000万円)の範囲内であれば、審査次第で追加の保証を受けられる可能性があります。セーフティネット保証などの認定を受けた場合は別枠も利用できます。

まとめ

制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関の三者で運営され、保証料補助や利子補給により店舗の借入コストを抑えられる可能性がある仕組みです。保証限度額は普通保証2億円・無担保保証8,000万円で、原則は信用保証協会80%・金融機関20%の責任共有となります。

運転資金と改装・設備資金を分けて整理し、決算書・試算表・資金繰り表・見積書をそろえてから相談すると手続きが円滑です。日本政策金融公庫とも比較しながら、自店の資金需要と時期に合った借入方法を選びましょう。

出典