年末年始の店舗の防犯は、「レジや店内に現金を置きすぎない」「一人で対応しない」「被害に遭ったら従業員の安全を最優先する」の3点を軸に準備することが基本です。売上金が増え、営業時間が変わり、短期スタッフも増えるこの時期は、強盗・万引き・内部不正のいずれのリスクも高まりやすくなります。

この記事は、小売店・飲食店のオーナー、店長、エリアマネージャーに向けた内容です。コンビニやドラッグストアのような深夜営業の店舗だけでなく、閉店後に売上金を扱うラーメン店や個人商店にも当てはまる対策をまとめています。

以下では、警察庁の統計で見る店舗の被害状況、各地の警察が示す強盗対策と万引き対策、年末年始の売上金管理、従業員の不正防止、被害時の対応手順を順に解説し、最後にチェックリストとよくある質問を掲載します。

1. 統計で見る店舗の犯罪被害

警察庁の令和8年版警察白書によると、令和7年の万引きの認知件数は10万5,135件で、前年の9万8,292件から増加し、3年連続の増加となりました。刑法犯認知件数全体に占める割合は13.6%です。

同白書では、令和7年の強盗の認知件数は1,428件(前年1,370件)でした。そのうち侵入強盗349件の内訳として、コンビニエンスストア強盗が104件(侵入強盗の29.8%)、その他の店舗強盗が55件とされています。

項目(令和7年)件数補足
万引き 認知件数105,135件前年98,292件。3年連続増加
強盗 認知件数1,428件前年1,370件
侵入強盗 認知件数349件強盗のうち建物に侵入したもの
うちコンビニエンスストア強盗104件侵入強盗の29.8%
うちその他の店舗強盗55件コンビニ・金融機関以外の店舗

店舗強盗は件数としては多くないものの、刃物などを使った凶悪な犯行になりやすく、従業員の命に関わります。一方、万引きは日常的に発生し、利益を直接削る被害です。どちらも「うちは狙われない」と考えず、年末前に対策を見直すことが大切です。

2. 強盗対策:警察が呼びかける基本

複数勤務と時間帯の警戒

岐阜県警察は、コンビニ強盗の発生を受けた注意喚起で、複数勤務を心がけ、深夜帯や店舗営業終了直後の警戒を強化するよう呼びかけています。埼玉県警察東松山警察署も、閉店後のラーメン店で起きた強盗事件を受けて、開店・閉店間際は屋外の状況に注意し、可能な限り複数人で勤務するよう案内しています。

年末年始は営業時間の延長や短縮でシフトが不規則になりがちです。閉店作業やレジ締めの時間帯に一人だけが残る体制になっていないか、シフト表で確認しておきましょう。

レジ内の現金を少なくする

岐阜県警察は「レジ内の現金の少額措置を徹底」するよう求めています。福岡県八幡東警察署の防犯のポイントでは、レジ内の現金を5万円以下で保管するという目安を示しています。警視庁も店舗の侵入窃盗対策として、レジや金庫など店舗内に現金を保管しないよう呼びかけています。

防犯設備の設置と点検

警察の資料では、防犯カメラ、非常通報装置、防犯ブザー、カラーボールなどの防犯機器を設置するだけでなく、定期的に点検し、従業員に使い方を周知することが繰り返し求められています。

設備警察が示すポイント年末前の確認
防犯カメラ出入口・カウンター前の人物を確実に撮影できる位置に設置(福岡県八幡東警察署)。撮影方向と録画状態をチェック(岐阜県警察)録画が止まっていないか、日時表示は正しいか、駐車場・通用口も映っているか
非常通報装置・防犯ブザー券売機・レジ付近、駐車場や通用口に設置し、使い方を熟知させる(東松山警察署)電池・作動の確認、新人スタッフへの説明
カラーボール事件発生時の活用(長野県警察木曽警察署)置き場所の周知、劣化の有無
機械警備侵入時に警備会社へ通報される仕組みが効果的(警視庁)年末年始の休業期間の警備設定と連絡先

このほか、来店客への声かけや、店舗周辺・駐車場の不審者や不審車両への警戒も基本です。店内外の見通しをよくするため、窓に貼るポスターや陳列棚の高さも見直しておきましょう。

3. 万引き対策:声かけ・死角の解消・届出

未然に防ぐ店づくり

茨城県警察の「ドラッグストアにおける万引き防止対策の指針」(令和7年2月)や京都府西京警察署の広報紙では、次のような対策を挙げています。業種を問わず応用できる内容です。

  • 従業員が巡回し、来店客に積極的にあいさつ・声かけをする
  • 防犯カメラや防犯ミラーを活用し、死角を減らす
  • 高額商品や被害の多い商品は、鍵付きショーケースやレジ付近に置き、空箱やカードで陳列する
  • 「防犯カメラ作動中」などの表示を目立つ位置に掲示する
  • 防犯ゲートを設置し、警報が鳴ったら可能な限り複数人で声かけをする
  • 就業前に手口や狙われやすい商品・場所を共有する

年末は店内が混雑し、レジに人手が集中して売場の目が行き届きにくくなります。混雑する時間帯だけでも売場に一人を配置する、福袋や贈答品など高額品の陳列場所をレジから見える位置に移すといった工夫が有効です。

被害に気づいたときの対応と警察への届出

茨城県警察の指針は、被害を把握したら早急に警察へ通報し、防犯カメラ映像やレシートジャーナルの提出に協力するよう求めています。複数の従業員がカメラ映像を操作できるよう、手順をマニュアルにしておくと、店長不在の日でも対応できます。

東京万引き防止官民合同会議(事務局:警視庁生活安全総務課)のリーフレットでは、警察は店舗に対して全ての万引きを届け出るよう求めていると説明しています。「少額だから」「常連だから」と店内で済ませず、届出を原則とする方針を従業員と共有しておきましょう。

未成年者の場合

同リーフレットによると、少年が万引きをした場合、警察は保護者に連絡し、状況によっては学校へ連絡したり、児童相談所へ通告・送致したりすることがあります。店舗側は判断を自ら下さず、警察に通報して指示に従うのが基本です。

声かけや事務所での待機の際は、複数の従業員で対応し、身体に触れたり長時間引き留めたりしないよう注意してください。相手が逃げようとしても、無理に追いかけて従業員がけがをしないことを優先します。

4. 年末年始の売上金管理と従業員の不正防止

売上金を店舗に置かない仕組み

年末年始は売上が増える一方、金融機関の窓口が休みになる期間があります。休業期間を含めて店舗に現金がたまらないよう、事前に入金の段取りを決めておくことが重要です。

方法特徴年末年始の注意点
金融機関への入金追加費用が少ない窓口・夜間金庫の休業日を確認。運搬は複数人で、時間とルートを固定しない
入金機(売上金入金機)店内で入金処理ができ、現金の持ち出しが減る機械の設置スペースと契約内容を確認。回収スケジュールの年末年始の変更に注意
警備会社の現金回収サービス運搬時の強盗リスクを店舗から切り離せる年末年始の回収日程と追加料金の有無を事前に確認
キャッシュレス決済の拡大店舗内の現金そのものを減らせる決済端末の通信障害時の対応手順と、入金サイクルを確認

どの方法でも、売上金を運ぶ時間や経路を毎日同じにしないこと、現金を持って店を出る姿を外から見られにくくすることが基本です。釣り銭準備金も必要最小限にし、余った現金は金庫ではなく早めに入金するようにしましょう。

レジ締めのダブルチェック

年末は短期アルバイトの採用や応援スタッフの受け入れが増え、レジ担当者が頻繁に入れ替わります。誰がいつどのレジを操作したかが後から追えない状態は、従業員の不正だけでなく、単純な誤差の原因追及も難しくします。

  • レジ担当者ごとにログインIDを分け、共用しない
  • レジ締めは2人で行い、現金・売上データ・差異を双方が確認して記録する
  • 取消・返品・値引きの操作は責任者の承認を必須にする
  • 過不足が出たら当日中に原因を確認し、記録を残す
  • 金庫の鍵や暗証番号を知る人を限定し、異動・退職時に変更する

不正防止のルールは「疑うため」ではなく「従業員を守るため」と説明すると、現場の理解を得やすくなります。ダブルチェックがあれば、差異が出たときに特定の人が疑われる事態を避けられます。

5. 被害に遭ったときの対応手順

強盗に遭った場合に最も大切なのは、従業員と客の命を守ることです。長野県警察木曽警察署は、事件発生時の措置として、冷静な対応と速やかな110番通報、非常ベルやカラーボールの活用、犯人の特徴・逃走方向・逃走手段の確認、無理な追跡はしないこと、犯行現場をそのまま保存することを挙げています。

  1. 犯人を刺激せず、自分と周囲の安全を確保する(無理に抵抗しない、追いかけない)
  2. 安全が確保できた段階で非常通報装置を使う、または110番通報する
  3. 犯人の人数、年齢、身長、服装、言葉づかい、逃走方向、車両の特徴を覚え、メモに残す
  4. 犯人が触れた場所や現場には手を触れず、警察の到着を待つ
  5. 店長・本部・オーナーに連絡し、従業員の心身のケアを手配する

カラーボールの投げつけなどの初動は、あくまで安全が確保できる場合に限ります。マニュアルには「命と安全を最優先する」と明記し、年末前の朝礼などで手順を読み合わせておきましょう。不審者や不審車両を見つけた段階でも、一人で対応せず110番通報するよう東松山警察署は呼びかけています。

6. 年末年始の防犯チェックリスト

  • □ 深夜帯・開店前・閉店後に一人勤務になる時間帯がないか確認した
  • □ レジ内の現金を少額にするルールを決め、全員に周知した
  • □ 防犯カメラの録画状態・撮影方向・日時設定を確認した
  • □ 非常通報装置・防犯ブザーの作動とカラーボールの置き場所を確認した
  • □ 短期スタッフを含め、強盗・万引き時の対応手順を説明した
  • □ 高額商品・狙われやすい商品の陳列場所を見直した
  • □ 売場の死角を確認し、防犯ミラーやレイアウトで解消した
  • □ 万引きは原則として警察に届け出る方針を共有した
  • □ 年末年始の入金日程、警備会社の回収日程を確認した
  • □ 休業期間中に店舗内に現金を残さない段取りを決めた
  • □ レジのログインIDを個別に設定し、締め作業を2人で行う体制にした
  • □ 金庫の鍵・暗証番号の管理者を限定した
  • □ 休業期間の機械警備の設定と緊急連絡先を確認した
  • □ 勝手口・小窓を含む全ての出入口の施錠を確認した

よくある質問

Q. レジに置く現金はいくらまでにすればよいですか。

A. 全国一律の基準はありませんが、福岡県八幡東警察署は5万円以下を目安として示しています。業態や釣り銭の必要量に応じて上限を決め、超えた分はこまめに金庫ではなく入金に回しましょう。

Q. 万引きの被害額が少額でも警察に届けるべきですか。

A. 警視庁などが参加する東京万引き防止官民合同会議は、全ての万引きを届け出るよう店舗に呼びかけています。少額でも常習化や転売目的の可能性があるため、届出を原則としましょう。

Q. 万引きをしたのが子どもだった場合はどうすればよいですか。

A. 店舗で判断せず、警察に通報して対応を任せます。警察は保護者に連絡し、状況によっては学校や児童相談所への連絡・通告を行うとされています。

Q. 強盗に遭ったとき、カラーボールは必ず投げるべきですか。

A. 必ずしも投げる必要はありません。従業員と客の安全確保が最優先で、安全が確保できる状況でのみ使用するよう、事前にルールを決めておきましょう。

まとめ

年末年始の店舗防犯は、複数勤務、レジ内現金の少額化、防犯設備の点検という基本を確実に行うことが出発点です。万引きは声かけと死角の解消で予防し、被害に遭ったら原則として警察に届け出ます。

売上金は店舗にためずに入金し、レジ締めのダブルチェックで不正と誤差を防ぎましょう。そして万一のときは、売上金よりも従業員と客の安全を優先する方針を、年末前に全員で確認しておくことが大切です。

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