恵方巻やクリスマスケーキなどの季節商品は、販売日が1日から数日に集中するため、作りすぎがそのまま廃棄につながりやすい商品です。農林水産省は2019年から毎年、食品小売事業者に「需要に見合った販売」を呼びかけており、予約販売や需要予測の見直しが対策の基本になります。
この記事は、スーパー・コンビニ・惣菜店・菓子店・飲食店のテイクアウト部門など、季節商品を扱う小売・外食の経営者や店長、商品担当者に向けたものです。本部の方針を店舗で実行する立場の方にも使える内容にしています。
前半で食品ロスの最新データと国の呼びかけ、食品ロス削減推進法・食品リサイクル法の要点を整理します。後半では予約販売、値引き、小容量化、フードバンクへの寄附、期限表示の基本を説明し、クリスマスケーキやおせち、土用の丑への応用とチェックリストをまとめます。
1. 季節商品の食品ロスはなぜ問題になるのか
最新の食品ロス量
農林水産省・消費者庁などが2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の食品ロス量は461万トンでした。このうち食品関連事業者から出る事業系食品ロスは237万トンで、前年度より6万トン増えています。
事業系の内訳は次のとおりです。食品小売業は48万トン、外食産業は70万トンで、両方を合わせると事業系全体の約半分を占めます。
| 区分(2024年度推計) | 食品ロス量 |
|---|---|
| 食品ロス量 合計 | 461万トン |
| 事業系 合計 | 237万トン |
| うち食品製造業 | 110万トン |
| うち食品卸売業 | 9万トン |
| うち食品小売業 | 48万トン |
| うち外食産業 | 70万トン |
| 家庭系 | 224万トン |
事業系食品ロスの目標は、食品リサイクル法に基づく新たな基本方針(2025年3月)で見直されました。農林水産省の公表資料では、「2030年度までに2000年度比で60%削減」(見直し前は50%削減)とされており、2024年度は2000年度比で57%削減の水準です。
季節商品は「1日勝負」になりやすい
恵方巻は節分当日、クリスマスケーキは12月24日・25日、うなぎ商品は土用の丑の日に販売が集中します。売り場の欠品を避けようとすると製造数が膨らみ、翌日以降はほとんど売れないため、売れ残りがそのまま廃棄になりがちです。
消費期限が短い商品が多いことも、ロスが出やすい理由です。だからこそ「作ってから売る」より「注文を受けてから作る」比率を高める工夫が効果を発揮します。
2. 農林水産省の恵方巻ロス削減の呼びかけ
農林水産省は、節分後の恵方巻の廃棄が話題になったことを受けて、2019年1月11日に食品小売事業者へ需要に見合った販売を呼びかけました。2019年12月以降は毎年12月ごろ、食品小売団体を通じて事務連絡を出しています。
2026年の節分に向けては、2025年12月23日に「恵方巻きロス削減に取り組む事業者」の募集が始まりました。募集期間は2026年1月23日までで、店舗単位でも本社単位でも応募できます。農林水産省の季節食品のページでは、2026年の応募数は71(2026年2月時点)、2025年の取組事業者数は100(2025年1月31日時点)と掲載されています。
| 募集で示された取組 | 店舗での具体例 |
|---|---|
| 消費者に予約購入を呼びかける | 啓発資材のポスターやPOPを売場・レジに掲示する |
| 予約販売を行う | 店頭・アプリ・電話で予約を受け、予約数をもとに製造数を決める |
| 製造・販売計画の工夫、需要予測の精緻化 | 前年の時間帯別販売数、天候、曜日を踏まえて計画を立てる |
| サイズやメニュー構成の工夫 | ハーフサイズの比率を上げる、品目数を絞る |
| 当日の販売オペレーションの工夫 | 売れ行きに応じて値下げ時間を早める |
応募した事業者には、店名や社名を入れられる啓発資材が提供されます。農林水産省との連携をPRできる点もメリットです。次の節分(2027年)向けの募集の有無や時期は、例年どおりなら12月ごろに発表されるため、農林水産省のページで確認してください。
3. 押さえておきたい2つの法律
食品ロス削減推進法(努力義務)
食品ロスの削減の推進に関する法律は、2019年10月1日に施行されました。第5条では、事業者は国や地方公共団体の施策に協力し、「食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努める」と定めています。
この規定は努力義務で、罰則はありません。ただし、2025年3月25日には第2次の基本方針が閣議決定されており、行政から事業者への働きかけは続いています。
食品リサイクル法(定期報告と実施率目標)
食品リサイクル法では、前年度の食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上の食品関連事業者を「食品廃棄物等多量発生事業者」としています。多量発生事業者は、毎年度6月末までに発生量と再生利用等の状況を主務大臣に定期報告します。報告書は本社所在地を管轄する地方農政局などに出します。
2025年3月14日に公表された新たな基本方針では、2029年度までに業種全体で達成する再生利用等実施率の目標が次のように定められました。
| 業種 | 再生利用等実施率の目標(2029年度まで) |
|---|---|
| 食品製造業 | 95% |
| 食品卸売業 | 75% |
| 食品小売業 | 65% |
| 外食産業 | 50% |
個々の事業者には「基準実施率」という目標もあります。前年度の基準実施率が20%以上50%未満なら2ポイント、50%以上80%未満なら1ポイントを毎年上乗せし、80%以上なら維持向上を目指します。再生利用等には飼料化・肥料化などのリサイクルだけでなく、そもそもの発生抑制も含まれるため、季節商品の作りすぎを減らすことは実施率の改善にもつながります。
4. 店舗でできる具体策
予約販売を中心に組み立てる
予約販売は、製造数を受注に近づける最も確実な方法です。予約締切を販売日の数日前に設定すると、原材料の発注や人員配置を確定しやすくなります。予約特典は値引きよりも、受け取り時間の指定や限定品の確保など、原価に響きにくいものを選ぶと続けやすくなります。
需要予測と製造計画
前年の販売実績は、日別ではなく時間帯別・サイズ別で記録しておくと、翌年の計画に使えます。販売日の曜日や天候、近隣競合のチラシ状況もメモしておきましょう。当日は午後の早い時間に売れ行きを確認し、追加製造の判断ポイントを決めておくと、作りすぎと欠品の両方を防げます。
値引き(見切り販売)と小容量化
閉店間際だけでなく、売れ行きに応じて値引き開始時刻を前倒しすることも、農林水産省が例示している取組です。値引きのルールは「何時に何個以上残っていたら何割引き」のように事前に決め、担当者の判断に任せきりにしないことが大切です。
ハーフサイズや少人数向けの商品は、単身世帯や高齢世帯でも買いやすく、家庭での食べ残しも減らせます。品目数を増やしすぎると品目ごとの売れ残りが増えるため、定番と限定品の数を絞ることも検討してください。
フードバンクへの寄附
食品寄附等に関する官民協議会は、2024年12月25日に「食品寄附ガイドライン~食品寄附の信頼性向上に向けて~」を公表しました。農林水産省は従来の手引きを2025年2月5日付で廃止し、このガイドラインを参考にするよう案内しています。また、消費者庁のページでは、フードバンクの認証制度が2026年4月1日に運用を開始したと紹介されています。
ガイドラインは法的拘束力のない任意のものですが、寄附する側が知っておくべき点がまとめられています。主なポイントは次のとおりです。
- 寄附前の原因による品質・衛生上の問題は、原則として寄附者の責任とされている
- 消費期限を過ぎた食品や、汚損・破損で衛生上の問題がある食品は提供しない
- アレルゲンや期限などの安全に関わる表示は、無償で提供する場合も必要とされている
- 寄附食品の記録を1年以上保存し、合意書で転売禁止や事故時の対応を定める
- 事故に備えた保険への加入が重要とされている
消費期限が当日中の恵方巻やケーキは、寄附先での受け取りや配布が間に合わないことが多いため、寄附の対象にしにくい商品です。寄附は、賞味期限に余裕のある菓子や飲料、包装済みの関連商品で検討するのが現実的です。
5. 消費期限と賞味期限の違い
値引きや寄附の判断では、期限表示の違いを正しく理解しておく必要があります。食品表示基準では、それぞれ次のように定義されています。
| 項目 | 消費期限 | 賞味期限 |
|---|---|---|
| 意味 | 定められた方法で保存した場合に、品質の劣化により安全性を欠くおそれがないと認められる期限 | 定められた方法で保存した場合に、期待される全ての品質の保持が十分に可能と認められる期限 |
| 期限を過ぎた場合 | 販売・寄附はしない | 品質が保持されていることもある(ただし保存方法・包装の状態が前提) |
| 主な商品例 | 恵方巻、生クリームのケーキ、弁当 | 焼き菓子、缶詰、レトルト食品 |
消費者庁が2025年3月に改正した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」では、期限を設定する際の安全係数を1に近づけることが望ましいとされています。自社で製造する商品の期限を、根拠なく短めに設定していないか見直すことも、ロス削減につながります。
6. クリスマスケーキ・おせち・土用の丑への応用
恵方巻で使った仕組みは、ほかの季節商品にもそのまま応用できます。農林水産省の季節食品のページで明記されているのは恵方巻ですが、販売日が集中するという構造は共通です。
- クリスマスケーキ:予約比率を高め、当日販売分はサイズを小さめにする。24日夕方以降の値引きルールを決めておく
- おせち:完全予約制が中心。単品おせちや少人数向けの構成で、余りやすい品目を減らす
- 土用の丑:うなぎ弁当・蒲焼の予約を受け、当日の追加製造は時間を区切って判断する
季節商品の食品ロス対策チェックリスト
- □ 前年の販売実績を時間帯別・サイズ別で記録している
- □ 予約の締切日と受け取り方法を決め、告知を始めている
- □ 予約数と店頭販売数の比率を決め、製造数に反映している
- □ ハーフサイズや少人数向け商品を用意している
- □ 値引き開始の時刻と割引率のルールを文書化している
- □ 当日の追加製造を判断する時刻と担当者を決めている
- □ 売れ残りの量を記録し、次回の計画に使っている
- □ 年間の食品廃棄物等が100トン以上か確認し、該当すれば定期報告の準備をしている
- □ 寄附を行う場合は食品寄附ガイドラインを確認し、合意書と記録を用意している
よくある質問
Q. 恵方巻の食品ロス削減は法律上の義務ですか。
A. 食品ロス削減推進法の事業者の責務は努力義務で、罰則はありません。農林水産省の呼びかけも要請であり、取組事業者の募集への応募は任意です。
Q. 食品リサイクル法の定期報告は小さな店舗も対象ですか。
A. 定期報告の対象は、前年度の食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上の事業者です。多店舗展開やフランチャイズの場合の数え方は、農林水産省の定期報告の案内で確認し、本部で全店の発生量を把握しておくと安心です。
Q. 売れ残った恵方巻をフードバンクに寄附できますか。
A. 消費期限内であれば制度上は考えられますが、消費期限が短く、受け取りから配布までに期限を過ぎるおそれがあります。寄附先と事前に受け入れ可否を相談し、ガイドラインに沿って記録や合意書を整えてください。
Q. 値引きを早めると売上が下がりませんか。
A. 値引き分の粗利は減りますが、廃棄すれば原価がすべて損失になります。前年の時間帯別の売れ行きを見て、廃棄を減らせる開始時刻を検証するのが現実的です。
まとめ
季節商品の食品ロス対策は、予約販売で製造数を受注に近づけることが中心です。そのうえで、需要予測、小容量化、値引きルール、寄附の仕組みを組み合わせると、廃棄を段階的に減らせます。
法律面では、食品ロス削減推進法の努力義務と、年間100トン以上の事業者に定期報告を求める食品リサイクル法を押さえておきましょう。恵方巻で整えた仕組みは、クリスマスケーキやおせち、土用の丑にもそのまま使えます。
出典
- 季節食品のロス削減(農林水産省)
- 2026年の恵方巻きロス削減に取り組む事業者の募集を開始!(農林水産省)
- 2024年度食品ロス量推計値の公表について(農林水産省)
- 2024年度食品ロス量推計値の公表(消費者庁)
- 再生利用等実施率の目標(農林水産省)
- 令和8年度食品リサイクル法に基づく定期報告について(農林水産省九州農政局)
- 食品ロスの削減の推進に関する法律(衆議院)
- 食品ロス削減推進法・基本方針(消費者庁)
- 食品ロス削減の取組(消費者庁)
- 食品寄附ガイドライン~食品寄附の信頼性向上に向けて~(食品寄附等に関する官民協議会/消費者庁)
- フードバンク(農林水産省)
- 食品期限表示の設定のためのガイドライン(令和7年3月)(消費者庁)
- 事業者向け情報|食品ロスポータルサイト(環境省)