バレンタインやホワイトデー向けに手作り菓子やギフトを販売するときは、「容器包装に入れて売るかどうか」と「どこで製造してどこで売るか」で、必要な食品表示と営業許可が変わります。特に2026年4月1日からはカシューナッツがアレルゲン表示の義務品目に加わっており、既存のラベルの見直しが必要です。
この記事は、洋菓子店・パン店・カフェ・雑貨店・スーパーの催事担当者、イベントやネットで菓子を販売するハンドメイド作家の方に向けたものです。初めて季節限定のギフト商品を作る方にも分かるように説明します。
前半で食品表示が義務になる範囲と、飲食店営業許可・菓子製造業許可の関係を整理します。後半ではアレルゲン、原産国・原料原産地、期限表示、詰め合わせや「手作り」表記の注意点をまとめ、チェックリストとよくある質問で確認できるようにしています。
1. 表示が必要になるのはどんなときか
原則は「容器包装に入れられた加工食品」
食品表示基準で表示が義務付けられるのは、原則として容器包装に入れられた加工食品です。消費者庁の「食品表示実践マニュアル」では、容器包装に入れられた加工食品を「そのままの状態で消費者に引き渡せるもの」と説明しています。
反対に、ショーケースのケーキを注文に応じて箱に詰めて渡す場合のように、容器包装に入れずに販売する加工食品は、業務用を除き食品表示基準の対象外です。政府広報オンラインでも、ショーケースのケーキや量り売りの惣菜などの「中食」は、アレルゲンの表示が義務付けられていないと説明されています。
店内で製造して同じ店で売る場合
食品表示基準では、「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」に多くの表示事項が義務の対象外になります。大阪府の解説では、この場合は原材料名、内容量、栄養成分、事業者の氏名・住所、原産国名、原料原産地名などが対象外として整理されています。
自治体の解説では、この「製造した場所で販売」とは、製造者と販売者が同一で、同じ施設内・敷地内で製造販売することとされ、菓子店やパン店の製造小売が例に挙げられています。ただし、同じ菓子でも別の店舗や催事場、ネット通販で売る場合はこの扱いにならないため、表示が必要です。
| 販売の形 | 食品表示基準の表示義務 | 注意点 |
|---|---|---|
| ショーケースから選んで箱詰めして渡す | 原則対象外 | アレルゲンなどは口頭や掲示で情報提供するのが望ましい |
| 店内で製造・袋詰めし、同じ店で販売 | 多くの表示事項が対象外 | 同じ施設内での製造販売に限られる |
| 店内で製造・袋詰めし、別の店舗や催事で販売 | 必要 | 一括表示ラベルを作成する |
| ネット通販・委託販売・卸 | 必要 | 販売サイトの商品説明も表示と整合させる |
| 仕入れた包装済み商品をそのまま販売 | 必要(製造者等の表示を確認) | 詰め直して売る場合は表示の扱いを保健所に確認する |
表示義務がない場合でも、アレルギーを持つ人は情報を必要としています。政府広報オンラインでは、分からないときは「分からない」と正確に伝え、「たぶん大丈夫」といった曖昧な回答は避けるべきとしています。
2. 営業許可:飲食店営業許可でどこまで売れるか
2021年6月に営業許可制度が見直され、現在の菓子製造業にはパン製造業とあん類製造業が含まれます。厚生労働省の解説では、菓子製造業の許可を受けた施設で、客が購入した菓子やパンに飲料を添えて施設内で提供する場合は、飲食店営業の許可は不要とされています。
一方、カフェやレストランが飲食店営業の許可でバレンタインの菓子を売る場合は、範囲に注意が必要です。厚生労働省のQ&A(問5)では、飲食店営業で提供しているケーキを「短期間のうち消費されることを前提に」テイクアウト用に販売する場合、追加の営業許可は不要としています。その判断基準として、調理した者から消費者に直接販売されることや、食品表示法上の表示義務が免除される対面販売であることなどが想定されています。
つまり、日持ちのする焼き菓子やチョコレートを包装して大量に作り、別の店舗やネットで販売する場合は、菓子製造業の許可が必要になる可能性があります。商品の内容と販売方法を決めた段階で、管轄の保健所に相談してください。
ハンドメイド作家・イベント出店の場合
消費者庁のマニュアルでは、反復継続性のない販売を行う人は「食品関連事業者以外」とされ、小学校のバザーで袋詰めクッキーを売る保護者などが例に挙がっています。ただし、この場合も容器包装に入れた加工食品を販売するなら、食品表示基準の一定の規定を守る必要があります。
毎年バレンタインに作品として菓子を販売するなど、繰り返し販売する場合は食品関連事業者として扱われる可能性があります。営業許可は施設ごとに基準を満たす必要があるため、自宅の台所でそのまま取得できるとは限りません。イベント出店の場合は、主催者の出店条件と保健所の指導もあわせて確認しましょう。
3. アレルゲン表示:カシューナッツが義務に
2026年4月1日の食品表示基準の改正で、それまで推奨表示だったカシューナッツが特定原材料(表示義務)に追加されました。同時にピスタチオが「特定原材料に準ずるもの」(表示推奨)に加わっています。
| 区分 | 品目 | 表示 |
|---|---|---|
| 特定原材料(9品目) | えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)、カシューナッツ | 義務 |
| 特定原材料に準ずるもの(20品目) | アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン | 推奨 |
カシューナッツには経過措置があり、2028年3月31日までに製造・加工・輸入されたものは改正前の表示でも認められます。くるみは2023年に特定原材料に追加され、経過措置期間は2025年3月31日までで終了しているため、現在はくるみを含む包装菓子には表示が必要です。
バレンタイン菓子はナッツ類、乳、卵、小麦を使う商品が多い分野です。トッピングやプラリネ、ナッツペーストなど、少量でも原材料に含まれるものは漏れなく確認しましょう。表示は原則として原材料名の直後に「(○○を含む)」と個別に書き、なじまない場合は「(一部に○○を含む)」と一括で書きます。
4. 原産国・原料原産地と期限表示
輸入チョコレートと原料原産地
輸入した菓子を販売する場合は原産国名の表示が必要です。国内で製造した加工食品は、原則として重量割合が1位の原材料について原料原産地を表示します。
1位の原材料が加工品の場合は「国内製造」や「○○製造」のように製造地を表示します。たとえば、輸入した製菓用チョコレートを溶かして成形した国産のチョコ菓子では、原料のチョコレートが加工品にあたるため、この書き方になるのが一般的です。商品ごとに配合を確認し、判断に迷うときは保健所や消費者庁のQ&Aで確認してください。
消費期限と賞味期限
品質が急速に劣化する食品には消費期限、それ以外には賞味期限を表示します。生クリームのケーキや生チョコのように日持ちしない商品は消費期限、焼き菓子や板チョコのような商品は賞味期限になるのが一般的です。
期限は、科学的な根拠をもとに事業者が設定します。消費者庁が2025年3月に見直した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」では、安全係数は1に近づけることが望ましいとされており、根拠なく短すぎる期限を付けることも食品ロスの原因になります。
5. ギフト・詰め合わせと「手作り」表記の注意
詰め合わせギフトの表示
個別包装の菓子を化粧箱に詰め合わせる場合は、外箱にどう表示するかが論点になります。消費者庁の食品表示基準Q&Aには、店頭で客の求めに応じて詰め合わせた化粧箱の表示(総則-7)や、詰め合わせ食品の表示方法(総則-8、加工-241)の問があるため、自店のケースに当てはめて確認してください。
あらかじめ詰め合わせて陳列するギフトセットでは、中身ごとの原材料やアレルゲン、最も短い期限が購入前に分かるようにしておくと、問い合わせやトラブルを防げます。
「手作り」「無添加」などの表記
食品表示基準には、実際のものより著しく優良であると誤認させる用語などを表示してはならないという「表示禁止事項」があります。また、景品表示法でも、実際より著しく優良であると示す表示は不当表示にあたるおそれがあります。
バレンタイン限定パッケージに「手作り」「手づくり」と書く場合は、工程のどこまでを手作業で行っているかを説明できるようにしておきましょう。市販の既製品を詰め直しただけの商品に「手作り」と大きく書くと、消費者に誤解を与えるおそれがあります。
バレンタイン・ホワイトデー菓子の表示チェックリスト
- □ 販売の形(対面・店内包装・他店舗・催事・通販)ごとに表示の要否を整理した
- □ 飲食店営業許可の範囲を超える製造・販売になっていないか保健所に確認した
- □ カシューナッツを含む商品のアレルゲン表示を見直した
- □ くるみ、乳、卵、小麦、落花生などの含有をトッピングまで確認した
- □ ピスタチオなど推奨品目もできる限り表示している
- □ 輸入菓子は原産国名、国産品は原料原産地の表示を確認した
- □ 消費期限か賞味期限かを判断し、設定の根拠を記録している
- □ 詰め合わせギフトの外箱表示を食品表示基準Q&Aで確認した
- □ 「手作り」などの表記が実態と合っている
- □ 表示義務がない対面販売でも、アレルゲンを聞かれたら正確に答えられる
よくある質問
Q. 店のショーケースで売るチョコにアレルゲン表示は必要ですか。
A. 容器包装に入れずに販売する場合は、食品表示基準の表示義務の対象外です。ただし、アレルギーを持つお客様のために、原材料やアレルゲンを掲示したり、聞かれたときに正確に答えられるようにしておくことが望まれます。
Q. カフェの飲食店営業許可で、バレンタイン用の焼き菓子を通販できますか。
A. 厚生労働省のQ&Aでは、飲食店営業で提供するケーキを短期間で消費される前提でテイクアウト販売する場合は追加の許可は不要とされています。日持ちする焼き菓子を通販する場合はこの前提に当てはまらない可能性があるため、保健所に確認してください。
Q. カシューナッツの表示は今すぐ変えないといけませんか。
A. 2028年3月31日までに製造・加工・輸入されたものは改正前の表示も認められます。ただし、カシューナッツは既に推奨品目として表示が求められてきた品目であり、ラベルを作り直す機会に早めに対応するのが安全です。
Q. フリマアプリやイベントで手作りクッキーを売るときの注意点は。
A. 繰り返し販売する場合は食品関連事業者として、営業許可と食品表示が必要になる可能性があります。出店先のルールと保健所の指導を確認し、袋詰めして売る場合は表示を準備してください。
まとめ
バレンタイン・ホワイトデーの菓子は、対面販売か包装販売か、同じ店で売るか別の場所で売るかによって、表示義務と必要な営業許可が変わります。店内製造・対面販売で表示義務がない場合も、アレルゲン情報は正確に伝えられるようにしておきましょう。
2026年4月からカシューナッツが義務表示に加わり、くるみの経過措置も終わっています。ナッツを多く使う季節商品だからこそ、ラベル、詰め合わせ、「手作り」表記まで、販売前にチェックリストで確認してください。
関連記事:「カシューナッツが特定原材料に」「飲食店営業許可と食品衛生責任者」
出典
- 食品表示実践マニュアル(消費者庁)
- 食品表示基準Q&A 第2章 加工食品(消費者庁)
- 食品表示基準Q&A(令和7年3月28日最終改正)(消費者庁)
- 早わかり食品表示ガイド 令和7年4月版(消費者庁)
- 食物アレルギー表示に関する情報(消費者庁)
- アレルゲンを含む食品に関する表示について(令和8年4月1日事務連絡)(消費者庁)
- 食品期限表示の設定のためのガイドライン(令和7年3月)(消費者庁)
- 営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A(厚生労働省)
- 営業許可業種の解説(厚生労働省)
- 食物アレルギー ある人もない人も知っておきたい基礎知識(政府広報オンライン)
- 「カシューナッツ」の食物アレルギー表示が義務になりました(福島県)
- カシューナッツの特定原材料追加(名古屋市)
- 一般用加工食品の表示について(大阪府)
- よくある質問(江戸川区)