2027年4月1日には、飲食料品の消費税率1%への引下げ(法案審議中)、育成就労制度の開始、新リース会計基準の強制適用、改正労災保険法の施行などが重なります。小売・外食では、レジや値札、外国人材の受入れ、決算の準備まで影響が広い時期になります。
この記事は、スーパーや専門店、飲食店を運営する経営者、経理・人事・店舗運営の担当者に向けたものです。2026年10月23日時点で公的機関の資料により確認できた項目だけを取り上げています。
まず一覧表で全体像を示し、項目ごとに内容と準備を説明します。前後の時期に施行される関連改正、チェックリスト、よくある質問もまとめました。
2027年4月施行の法改正一覧
状況欄は、2026年10月23日時点の確認結果です。「予定」となっているものは、今後の国会審議や政令で変わる可能性があります。
| 施行日 | 内容 | 状況 | 主な準備 |
|---|---|---|---|
| 2027年4月1日〜2029年3月31日 | 飲食料品の消費税率を1%(国0.78%・地方0.22%相当)に引下げ | 未成立。法案は2026年10月20日に衆議院で審議入り | レジ・POSの税率設定、値札、インボイス、会計システム |
| 2027年4月1日(一部の規定を除く) | 育成就労制度の開始(技能実習制度に代わる新制度) | 成立済み(2024年6月21日公布) | 外食業などでの受入れ計画、労働条件の明示、雇用管理 |
| 2027年4月1日以後開始する事業年度の期首 | 新リース会計基準(企業会計基準第34号)の適用 | 公表済み(2024年9月13日) | 店舗賃貸借契約などの洗い出し、資産・負債計上の準備 |
| 2027年4月 | 国のたばこ税を1本0.5円引上げ(2028年4月、2029年4月と3段階) | 財務省資料に予定として掲載 | 販売価格の改定対応、在庫・値札の切替 |
| 2027年4月1日(一部を除く) | 改正労災保険法(遺族補償年金の要件見直し、時効延長など) | 成立済み(2026年7月17日公布) | 従業員への周知、労災対応フローの確認 |
| 2027年4月1日 | ストレスチェックの集団分析を「特定の個人を識別できない方法」で行うことを規定 | 省令改正済み(2026年6月30日施行通達) | 集団分析の単位や集計方法の見直し |
| 2027年4月1日 | 改正労働安全衛生法のうち、個人事業者等に関する安全衛生対策の一部 | 成立済み(2025年5月14日公布) | 業務委託先の安全対策の確認 |
| 2027年4月1日 | 外国人雇用状況の届出で新しい様式を使用 | 厚生労働省が案内 | 届出様式・システムの更新 |
飲食料品の消費税率1%(法案審議中)
国税庁のQ&Aでは、法案が成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率が1%に引き下げられるとしています。対象は現行の軽減税率(8%)の対象と同じ範囲で、週2回以上発行される新聞の定期購読は8%のまま、外食は10%のままです。
法案は2026年10月9日に閣議決定され、10月20日に衆議院で審議入りしました。2026年10月23日時点では成立していないため、施行日や細部が変わる可能性がある点に注意が必要です。
小売・外食の準備
- レジ・POS、受発注・会計システムで、1%・8%・10%の税率を扱えるか確認する
- インボイスの適用税率は1%となるため、請求書・レシートの様式を確認する
- 税込価格の表示は、誤認防止措置を講じれば8%または1%どちらの税込価格でもよいとされている(税抜価格のみの表示は不可)
- 店内飲食(10%)とテイクアウトの税率差が広がるため、飲食店はメニュー表示と会計処理を見直す
詳しくは関連記事「食品の消費税1%」で解説しています。
人材・労務に関する改正
育成就労制度の開始
育成就労制度は、一部の規定を除き2027年4月1日に施行されます。出入国在留管理庁が公表している分野別の基準には「外食業」や「飲食料品製造業」が含まれています。
外国人材の受入れを検討している外食企業は、受入れ分野の基準や、労働条件の明示・求人情報の表示に関する指針を早めに確認しましょう。制度の詳細は関連記事「育成就労制度」をご覧ください。
改正労災保険法
改正労災保険法は2026年7月17日に公布され、原則として2027年4月1日に施行されます。主な内容は、遺族補償年金で夫に設けられていた「60歳以上」などの要件の削除、遺族1人の場合の給付額の統一、判断が難しい疾病での時効期間の2年から5年への延長、特別加入団体の要件の法定化です。
一部の事業を当分の間は労災保険の適用事業としない暫定措置の廃止などは、公布から5年以内に政令で定める日に施行されます。手続きの基本は関連記事「労災保険の手続き」で確認できます。
ストレスチェックと安全衛生
2027年4月1日から、ストレスチェックの集団分析は特定の個人を識別できない方法で行うことが省令で定められます。集団分析そのものは引き続き努力義務です。少人数の店舗単位で集計している場合は、集計単位の見直しが必要になる可能性があります。
同じ日に、改正労働安全衛生法のうち個人事業者等への安全衛生対策の一部も施行されます。清掃や配送などを個人事業者に委託している場合は、委託先の安全対策を確認しておきましょう。
外国人雇用状況の届出の新様式
厚生労働省は、2027年4月1日から外国人雇用状況の届出で新しい様式を使うよう案内しています。外国人アルバイトを多く雇う店舗では、届出の担当者や社労士と様式の切替時期を共有しておきましょう。
会計・税・価格に関する改正
新リース会計基準
企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。借手はオペレーティング・リースを含むすべてのリースについて、原則として資産と負債を計上することになります。
店舗の賃貸借契約や什器・設備のリースが多い小売・外食では、貸借対照表への影響が大きくなりやすい分野です。なお、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」などを用いることができるとされています。詳しくは関連記事「新リース会計基準」をご覧ください。
たばこ税の引上げ
財務省の資料では、加熱式たばこの課税方式の見直し(2026年4月・10月)に続き、国のたばこ税を2027年4月、2028年4月、2029年4月に1本当たり0.5円ずつ引き上げるとしています。たばこを扱うコンビニや小売店は、メーカーの価格改定に合わせた値札・在庫の切替を準備しておきましょう。スケジュールは関連記事「たばこ税の段階的増税スケジュール」でまとめています。
2027年4月の前後に施行される改正
| 施行時期 | 内容 | 小売・外食への影響 |
|---|---|---|
| 2026年10月 | 社会保険の加入における賃金要件(月額8.8万円)の撤廃 | パート・アルバイトの加入判断の見直し |
| 2026年12月 | 改正公益通報者保護法の施行 | 内部通報制度・社内規程の見直し |
| 2027年10月 | 社会保険の企業規模要件を被保険者数36人以上の企業等に拡大 | 36〜50人規模の企業でパートの加入者が増える可能性 |
公益通報者保護法の改正内容は関連記事「改正公益通報者保護法」、社会保険の加入基準の変更は関連記事「106万円の壁撤廃」で詳しく解説しています。
2027年4月に向けた準備チェックリスト
- □ 消費税法案の審議状況を確認し、レジ・POSベンダーと改修日程を相談した
- □ 値札・メニュー・レシート・インボイスの表示を確認した
- □ 外食の店内飲食とテイクアウトの税率区分を従業員に周知する計画を立てた
- □ 育成就労制度での受入れを検討する場合、外食業などの分野別基準を確認した
- □ 外国人雇用状況の届出の新様式に対応できるようにした
- □ 新リース会計基準の適用対象かを監査法人・税理士と確認した
- □ 店舗の賃貸借契約・リース契約を一覧にした
- □ たばこの価格改定に合わせた値札・在庫の切替手順を決めた
- □ ストレスチェックの集団分析の集計単位を見直した
- □ 業務委託している個人事業者の安全対策を確認した
よくある質問
Q. 食料品の消費税1%は、もう決まったのですか。
A. 2026年10月23日時点では決まっていません。法案は10月20日に衆議院で審議入りした段階で、成立した場合に2027年4月1日から2年間適用される予定です。
Q. 中小企業も新リース会計基準に対応する必要がありますか。
A. ASBJの公表資料では、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」などを用いることができるとされています。ただし、会社法上の会計監査を受ける会社などは対象になる可能性があるため、顧問の会計士・税理士に確認してください。
Q. 育成就労制度が始まると、今いる技能実習生はどうなりますか。
A. 移行の扱いは出入国在留管理庁の資料で確認する必要があります。監理団体や登録支援機関と早めに相談しておきましょう。
Q. 改正労災保険法で会社が新たにやることはありますか。
A. 主な改正は給付の要件や時効に関するもので、厚生労働省は関係政省令を今後検討するとしています。従業員から問合せがあった時に正しく案内できるよう、内容を把握しておきましょう。
まとめ
2027年4月は、消費税、外国人材、会計、たばこ税、労災・安全衛生と、小売・外食に関わる改正が集中します。特に食料品の消費税1%は法案審議中のため、国会の動きを確認しながらレジや表示の準備を進めることが大切です。
育成就労制度や新リース会計基準のように、すでに施行日が決まっているものは今から準備を始められます。前後の2026年10月、12月、2027年10月の改正もあわせて、年間の対応スケジュールを作っておきましょう。
出典
- 消費税率引下げ特設サイト(国税庁)
- 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(国税庁)
- 消費税減税は意味ない?食料品の1%はいつから?決まっていること・いないこと(セレクトラ)
- 食料品消費税1%はいつから?2027年4月・2年間の減税と就業者負担軽減支援金(実務ガイド)
- 育成就労制度の制度概要・関係法令(出入国在留管理庁)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表(企業会計基準委員会)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表 公表にあたって(企業会計基準委員会)
- たばこ税等に関する資料(財務省)
- 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)について(厚生労働省)
- 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の公布について(厚生労働省)
- 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(厚生労働省)
- 改正労働安全衛生法、作業環境測定法等が段階的に施行されています(山形労働局)
- 改正安衛法等の概要(山形労働局)
- 「外国人雇用状況の届出」について(厚生労働省)
- 制度変更(令和8年10月)(厚生労働省)
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)
- 公益通報者保護制度(消費者庁)