ドラッグストアの法務で今いちばん重要なのは、2025年5月に成立した改正薬機法のうち、2026年5月1日にすでに施行された「濫用等のおそれのある医薬品」の新しい販売ルールに、店頭の運用が対応できているかどうかです。さらに2027年5月20日には、薬剤師等が常駐しない店舗での医薬品販売など、業態に関わる改正の施行が控えています。
この記事は、ドラッグストアや医薬品を扱う小売店の経営者・店長、登録販売者の配置やシフトを組む担当者に向けたものです。日々の売場づくりや採用計画に直結するルールを中心にまとめました。
店舗販売業の許可と管理者の要件、一般用医薬品の区分ごとの販売方法、改正薬機法の内容と施行時期、化粧品・健康食品の広告規制、軽減税率とセルフメディケーション税制、プライベートブランド(PB)の製造委託と取適法を順に解説します。
1. 店舗販売業の許可と店舗管理者
許可と専門家の配置
一般用医薬品を店舗で販売するには、薬機法に基づく店舗販売業の許可が必要です。許可は店舗ごとに、都道府県知事等から受けます。
店舗では、販売する医薬品の区分に応じて薬剤師または登録販売者を配置します。要指導医薬品と第1類医薬品は薬剤師しか販売できず、第2類・第3類医薬品は薬剤師または登録販売者が販売できます。
登録販売者が店舗管理者になる要件
第2類・第3類医薬品を販売する店舗では、登録販売者が店舗管理者になれます。2023年4月1日施行の省令改正後の要件は次のとおりです。
| パターン | 過去5年間の従事期間 | 追加要件 |
|---|---|---|
| 原則 | 通算2年以上(1か月80時間以上従事した月を算入) | なし |
| 研修修了 | 通算1年以上(1か月160時間以上従事した月を算入) | 継続的研修と、店舗の管理・法令遵守に関する研修を修了 |
| 管理者経験 | 通算1年以上 | 店舗管理者または区域管理者としての業務経験 |
月ごとの時間数を満たさない月がある場合でも、原則パターンでは過去5年間の合計が1,920時間以上であれば認められる場合があります。個別の判断は、店舗を所管する都道府県や保健所の薬務担当に確認してください。
2. 一般用医薬品の区分と販売・陳列のルール
医薬品はリスクの高さに応じて区分され、区分ごとに対応できる専門家、情報提供の義務、陳列方法が決まっています。
| 区分 | 販売できる専門家 | 情報提供 | 陳列方法 |
|---|---|---|---|
| 要指導医薬品 | 薬剤師 | 義務(対面) | カウンターから1.2m以上離すか鍵のかかる設備に置くなど、購入者が直接手に取れないようにする |
| 第1類医薬品 | 薬剤師 | 義務 | 要指導医薬品と同様、購入者が直接手に取れないようにする |
| 指定第2類医薬品 | 薬剤師・登録販売者 | 努力義務 | 情報提供を行う設備から7m以内に陳列 |
| 第2類医薬品 | 薬剤師・登録販売者 | 努力義務 | 区分が混在しないように陳列 |
| 第3類医薬品 | 薬剤師・登録販売者 | 望ましい | 区分が混在しないように陳列 |
どの区分でも、購入者から相談があった場合に応じることは義務です。薬剤師や登録販売者が不在の時間帯は、その区分の医薬品を販売できないため、売場を閉鎖する方法と表示を決めておく必要があります。
3. 改正薬機法(令和7年法律第37号)への対応
改正薬機法は2025年5月14日に成立し、5月21日に公布されました。施行日は項目によって異なり、すでに施行されたものと、これから施行されるものがあります。
| 改正項目 | 施行日 | 状況(2026年10月30日時点) |
|---|---|---|
| 濫用等のおそれのある医薬品(指定濫用防止医薬品)の販売方法の見直し | 2026年5月1日 | 施行済み |
| 18歳未満への複数個・大容量製品の販売禁止 | 2026年5月1日 | 施行済み |
| 要指導医薬品のオンライン服薬指導の追加 | 2026年5月1日 | 施行済み |
| 薬剤師等の遠隔管理による一般用医薬品の販売(登録受渡店舗) | 2027年5月20日 | 今後施行 |
| 調剤業務の一部外部委託 | 2027年5月20日 | 今後施行 |
| 処方箋なしでの医療用医薬品の販売の見直し | 2027年5月20日 | 今後施行 |
指定濫用防止医薬品の販売方法(施行済み)
対象は、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミンを含む医薬品です(外用剤を除く)。厚生労働省の資料によると、販売方法は購入者の年齢と製品の容量で次のように分かれます。
- 18歳未満:対面またはビデオ通話で販売し、年齢・氏名と他店での購入状況を確認する。複数個・大容量の製品は販売禁止
- 18歳以上・小容量:対面、ビデオ通話、テキスト等のやりとりで販売し、購入者の状況確認と濫用に関する情報提供を行う
- 18歳以上・複数個または大容量:対面またはビデオ通話で販売し、複数個・大容量を購入する理由を確認する
小容量とは、5日分(かぜ薬・解熱鎮痛薬・鼻炎内服薬は7日分)以下の成分量を含む1包装単位を指します。陳列は、購入者の手が届かない場所か、継続的に配置された専門家の目の届く範囲とされ、頻回購入への対応は手順書を整備して行うことが求められています。
店頭で今すぐ確認したいこと
まず、自店の取扱商品のうち、どの商品が指定濫用防止医薬品に当たるかをメーカーや卸の情報で洗い出し、一覧にしておきます。次に、レジで対象商品をスキャンした際に、年齢確認や購入理由の確認を促す表示が出るかを確認しましょう。
対象商品を従来どおり手に取れる棚に並べている場合は、陳列場所の変更が必要になることがあります。アルバイトを含む全従業員に、対象商品の声かけ手順と、断る場合の伝え方を共有しておくと、店頭でのトラブルを防げます。
今後施行される改正(2027年5月20日)
遠隔管理の仕組みでは、薬局などの薬剤師等が遠隔で管理し、薬剤師等が常駐しない「登録受渡店舗」で医薬品を保管して購入者に受け渡せるようになります。厚生労働省の資料ではコンビニが例に挙げられており、ドラッグストアにとっては競合の増加と、自社が管理側になる新しい事業機会の両面があります。調剤業務の一部外部委託も同じ日に施行されるため、調剤併設店は詳細な省令・通知の公表を待って対応を検討しましょう。
4. 化粧品・健康食品の広告規制と税制
広告規制
薬機法第66条は、医薬品・医薬部外品・化粧品などの名称、効能・効果、性能について、虚偽または誇大な広告を禁止しています。第68条は、承認前の医薬品等の名称や効能・効果の広告を禁止しており、健康食品のPOPやチラシに「血圧が下がる」「病気が治る」といった医薬品的な効能を書くと、この規定に触れるおそれがあります。
虚偽・誇大広告には課徴金制度があり、違反期間中の対象商品の売上額の4.5%を納付する仕組みです。健康食品の表示は景品表示法や健康増進法の対象にもなるため、メーカーの資料をそのまま転記せず、表現を確認してから掲示しましょう(関連記事「二重価格・「期間限定」表示の落とし穴」)。
軽減税率とセルフメディケーション税制
消費税の軽減税率(8%)は飲食料品が対象ですが、医薬品と医薬部外品は「食品」から除かれるため標準税率(10%)です。医薬品等に該当しない栄養ドリンクや健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品は軽減税率の対象になります。同じ「ドリンク剤」でも区分によって税率が変わるため、レジのマスタ登録を定期的に点検しましょう。
セルフメディケーション税制は、対象医薬品の年間購入額のうち1万2千円を超える部分を所得控除する制度で、控除額の上限は8万8千円です。2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱では、スイッチOTC医薬品は期限を撤廃、それ以外は5年延長とされ、消化器官用薬やOTC検査薬などが対象に加わる一方、痩身・美容目的で使われる可能性がある医薬品は除外されます。見直しは2027年1月1日施行(2027年分の所得から適用)のため、対象商品の表示やレシート対応を年内に準備しておく必要があります。
5. PBの製造委託と取適法、店舗の点検ポイント
PB商品と取適法
2026年1月1日から、下請法は「取適法」(中小受託取引適正化法)に変わりました。資本金基準に加えて従業員数(300人・100人)の基準が設けられ、手形払いの禁止や、代金の協議に応じない一方的な代金決定の禁止が加わっています。
ドラッグストアがPBの医薬部外品、化粧品、日用品などの製造を中小メーカーに委託する場合、取適法の対象になり得ます。発注書面の交付、支払期日、原材料費の上昇を理由とする価格協議への対応を見直しましょう(関連記事「取適法(改正下請法)で小売・外食の取引はどう変わる?」)。
店舗チェックリスト
- □ 店舗管理者が要件(過去5年間の従事期間など)を満たしていることを書類で確認した
- □ 薬剤師・登録販売者が不在になる時間帯の売場閉鎖方法と表示を決めている
- □ 要指導・第1類医薬品を購入者が直接手に取れない場所に陳列している
- □ 指定濫用防止医薬品の販売手順書(年齢確認・購入理由の確認・頻回購入対応)を整備した
- □ 18歳未満の客に複数個・大容量製品を販売しない仕組みをレジ・接客に組み込んだ
- □ 健康食品・化粧品のPOPに医薬品的な効能表現がないか点検した
- □ 医薬品・医薬部外品と食品の税率がレジマスタで正しく設定されている
- □ 2027年からのセルフメディケーション税制の対象変更に備え、表示の更新計画を立てた
- □ PBの製造委託先との取引条件を取適法に沿って見直した
よくある質問
Q. 登録販売者が休憩中に第2類医薬品を売ってもよいですか。
A. 薬剤師または登録販売者がいない間は、第2類・第3類医薬品も販売できません。休憩時間を含めて専門家の配置が途切れないシフトを組むか、その時間は医薬品売場を閉鎖してください。
Q. 改正薬機法の「濫用防止」のルールはもう始まっていますか。
A. はい。指定濫用防止医薬品の販売方法の見直しと、18歳未満への複数個・大容量製品の販売禁止は2026年5月1日に施行されています。手順書と従業員教育が整っているかを確認しましょう。
Q. 薬剤師がいない店舗でも医薬品を扱えるようになるのですか。
A. 薬剤師等の遠隔管理のもとで、常駐しない登録受渡店舗が医薬品を受け渡せる仕組みが2027年5月20日に施行される予定です。具体的な要件は今後の省令・通知で示されるため、公表を待って確認してください。
Q. 栄養ドリンクの消費税率は8%ですか、10%ですか。
A. 医薬品または医薬部外品に当たる栄養ドリンクは10%、清涼飲料水など食品に当たるものは8%です。パッケージの「医薬品」「医薬部外品」の表示で区分を確認してください。
まとめ
ドラッグストアの法務は、店舗販売業の許可と専門家の配置、区分ごとの販売・陳列ルールが土台です。そのうえで、2026年5月1日に施行された指定濫用防止医薬品の販売方法と、2027年5月20日に予定される遠隔管理・調剤業務の外部委託への備えが当面の課題になります。
広告表現、軽減税率の設定、2027年から見直されるセルフメディケーション税制、PBの製造委託と取適法も、売場と本部の両方で点検が必要です。チェックリストを使って定期的に確認しましょう。
出典
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に係る現状の報告について(厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会資料)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案 議案情報(参議院)
- 登録販売者制度の改正について(兵庫県)
- 医薬品の販売制度について(福岡市)
- 医薬品医療機器等法に係る医薬品広告の規制と適正使用に関する注意喚起について(厚生労働省 医薬品等行政評価・監視委員会資料)
- 消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)「飲食料品の譲渡」の範囲等(国税庁)
- セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について(厚生労働省)
- セルフメディケーション税制について(厚生労働省 セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会資料)
- 令和8年度税制改正要望 セルフメディケーション税制(財務省掲載 厚生労働省要望)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(秋田県掲載資料)