カフェを開業するには、まず保健所で「飲食店営業」の許可を取り、食品衛生責任者を置くことが出発点です。2021年6月の食品衛生法改正で旧「喫茶店営業」は飲食店営業に統合されたため、現在はコーヒーだけを出す店でも飲食店営業の許可を取るのが基本です。

この記事は、これからカフェを開く個人や小規模事業者、すでに営業していてテイクアウトや物販を広げたいオーナーに向けたものです。開業時の手続きと、開業後にかかわるルールを分けて整理しています。

営業許可と施設基準、焼き菓子やコーヒー豆を売る場合の追加手続き、テイクアウトの消費税率、2027年4月から予定されている飲食料品の税率1%への引下げ、受動喫煙対策、酒類の深夜提供、BGMの著作権、アルバイトの労務を順に解説します。

カフェに必要な営業許可と保健所の手続き

喫茶店営業は飲食店営業に統合

2021年6月1日に施行された改正食品衛生法で、営業許可の業種が見直されました。旧「喫茶店営業」は飲食店営業の一形態として統合され、許可業種は34業種から32業種に再編されています。

飲食店営業は「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」と定義されています。ドリンク中心のカフェも、軽食を出すカフェも、この許可で営業するのが基本です。

施設基準と申請の流れ

施設基準は国の基準をもとに都道府県等が条例で定めており、細かな要件は自治体ごとに異なります。シンクの数、手洗い設備、冷蔵設備、床や壁の材質などが確認されるため、内装工事の前に図面を持って保健所へ相談するのが確実です。

一般的な流れは、事前相談、許可申請、施設の確認検査、許可という順です。許可が出るまで営業は始められないため、開業日から逆算して余裕をもって申請します。

食品衛生責任者とHACCP

許可・届出の対象となる施設には、原則として食品衛生責任者を置く必要があります。調理師などの資格がない場合は、自治体の食品衛生協会などが開く養成講習会を受講して資格を得るのが一般的です。

また2021年6月1日から、HACCPに沿った衛生管理が完全施行されています。飲食店や喫茶店営業のような小規模事業者は、業界団体が作り厚生労働省が確認した「手引書」に沿って衛生管理計画を作り、実施状況を記録すれば足ります。

焼き菓子・パン・コーヒー豆を売るときの追加手続き

カフェで扱う商品が増えると、飲食店営業の許可だけでは足りないケースがあります。判断は自治体によって異なる部分があるため、メニューを広げる前に保健所へ相談してください。

やりたいこと必要になりうる手続き確認のポイント
店内で作ったケーキ・焼き菓子を店内で提供飲食店営業の許可店内飲食用の提供であれば飲食店営業の範囲
店内で作った焼き菓子・パンを持ち帰り販売・卸売菓子製造業の許可青森市保健所の資料では、和洋菓子・食パンなどの持ち帰り販売と卸販売は菓子製造業の許可が必要とされている
あらかじめ包装した菓子を販売上記に加えて食品表示容器包装に入れた食品は原則として食品表示が必要
コーヒー豆を自家焙煎して販売営業届出(コーヒー製造・加工業)となる場合あり自治体の案内で届出業種の例として挙げられている。既存の許可との関係は保健所に確認
仕入れた包装済みのコーヒー豆を常温で販売届出不要とされる区分あり常温で長期間保存しても品質劣化のおそれがない包装食品の販売は届出対象外

菓子製造業の許可にはパン製造業とあん類製造業が含まれます。焼き菓子の物販を本格的に始めるなら、製造スペースを区切ったうえで菓子製造業の許可を別に取ることを前提に計画するとよいでしょう。

テイクアウトの消費税率と2027年の税率引下げ

店内飲食10%、持ち帰り8%の判定

店内飲食は「食事の提供」として標準税率10%、持ち帰りは飲食料品の譲渡として軽減税率8%です。どちらにあたるかは、提供する時点で客の意思を確認して判定します。

国税庁のQ&Aでは、すべての客に質問する必要はなく、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」などの掲示で確認する方法も認められています。その場で飲食するために提供した商品は、食べ残しを持ち帰っても10%のままです。

コーヒーチケットは、引き換え時に店内か持ち帰りかを確認して税率を決めます。共用のチケットは発行時に税率が決められないため、店内用と持ち帰り用を分けて発行する対応が示されています。

飲食料品の税率1%への引下げ(予定)

政府は2026年10月9日、飲食料品の消費税率を引き下げる法案を閣議決定し、国会に提出しました。国税庁のQ&Aによると、案では2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の税率を1%(消費税0.78%、地方消費税0.22%相当)とします。

対象は現在8%となっている範囲と同じで、外食と酒類は10%のままです。案どおりになれば、カフェのテイクアウトは1%、店内飲食は10%となり、税率の差は9ポイントに広がります。

国税庁は、この内容を法案が成立した場合のものと明記しています。レジの税率設定、メニューの価格表示、意思確認の掲示は、成立状況と国税庁の案内を確認しながら準備してください。

受動喫煙対策:原則屋内禁煙と経過措置

改正健康増進法は2020年4月1日に全面施行され、飲食店は原則として屋内禁煙です。喫煙を認める場合は、決められた種類の喫煙室を設け、入口に標識を掲示しなければなりません。

喫煙室の種類店内での飲食設置できる施設
喫煙専用室不可一般の飲食店
加熱式たばこ専用喫煙室可(加熱式たばこのみ)一般の飲食店(経過措置)
喫煙可能室可既存特定飲食提供施設のみ(経過措置)

既存特定飲食提供施設は、2020年4月1日時点で営業していた店で、資本金5,000万円以下、客席面積100㎡以下の3つをすべて満たす店です。大規模会社が発行済株式の2分の1以上を持つ場合などは除かれ、これから新規開業するカフェは対象になりません。

喫煙室には、出入口で室外から室内へ0.2m/s以上の気流があること、壁や天井で区画されていること、煙を屋外へ排気することという技術的基準があります。喫煙エリアには、客だけでなく従業員を含めて20歳未満の人を立ち入らせることはできません。

喫煙可能室を設ける店には、保健所への届出や要件を証明する書類の保存も求められます。東京都のように条例でより厳しい規制を設けている自治体もあるため、所在地のルールを確認してください。

酒類・深夜営業・BGM・アルバイトの労務

夜に酒類を出す場合

深夜(午前0時から午前6時まで)に主として酒類を提供する営業をする場合は、営業開始の10日前までに、管轄の警察署を通じて公安委員会へ届出が必要です。無届けで営業すると罰則の対象になります。

客の隣に座って談笑するなどの「接待」をする営業は風俗営業の許可が必要で、カフェの延長ではできません。夜の営業形態を変えるときは、事前に警察署の生活安全課へ相談するのが安全です。

長時間滞在・電源席の運用

長時間滞在や電源・Wi-Fiの利用は、法律で一律に決まっているものではなく、店のルールとして決めて示すものです。「混雑時は90分まで」など具体的な条件を、メニューや席の案内に分かりやすく書いておくとトラブルを防げます。

BGMの著作権

市販のCDや配信音源でJASRAC管理楽曲を店内BGMとして流す場合は、JASRACとの利用許諾契約が必要です。店舗面積500㎡以下の年額使用料は6,000円(別途消費税相当額)です。

JASRACと契約している有線放送などのBGM事業者から音源を受けている場合は、事業者が使用料を支払うため店側の手続きは不要です。個人向け音楽配信サービスの規約は店舗での利用を認めていないことが多いため、利用規約も確認してください。

アルバイトの労務

午後10時から午前5時までの労働には、通常の賃金に25%以上を上乗せした深夜割増賃金が必要です。18歳未満の人を深夜に働かせることは原則として禁止されているため、高校生のシフトは22時前に終わるよう組みます。

時給は都道府県ごとの最低賃金以上でなければなりません。2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円です。18歳未満を雇う場合は年齢証明書を事業場に備え付けます。

開業前チェックリスト

  • □ 内装工事の前に、図面を持って保健所へ事前相談した
  • □ 飲食店営業の許可を申請し、開業日までに許可が出る日程を組んだ
  • □ 食品衛生責任者を決め、養成講習会の受講日を確保した
  • □ 手引書をもとに衛生管理計画と記録様式を用意した
  • □ 焼き菓子・パンの持ち帰り販売の有無を決め、菓子製造業の許可要否を確認した
  • □ コーヒー豆の焙煎・販売の届出要否を保健所に確認した
  • □ レジで店内飲食と持ち帰りの税率を分け、意思確認の掲示を用意した
  • □ 2027年4月の税率引下げに向けて、レジ・価格表示の対応を確認した
  • □ 喫煙の可否を決め、禁煙または喫煙室の標識を用意した
  • □ 深夜に酒類を出す場合、警察署への届出時期を確認した
  • □ BGMの音源と著作権の手続きを確認した
  • □ アルバイトの深夜割増、18歳未満のシフト、最低賃金を確認した

よくある質問

Q. コーヒーとソフトドリンクだけの店でも飲食店営業の許可が必要ですか。

A. はい。2021年6月から旧喫茶店営業は飲食店営業に統合されたため、飲み物だけの店も飲食店営業の許可を取るのが基本です。施設基準は自治体ごとに違うため、保健所で確認してください。

Q. 店内で焼いたクッキーをレジ横で売りたいのですが、飲食店営業の許可で足りますか。

A. 持ち帰り用に販売する場合は、菓子製造業の許可が必要とする自治体の案内があります。あらかじめ袋詰めする場合は食品表示も必要になるため、保健所に事前に相談してください。

Q. 持ち帰りと言って買った客が店内で飲んだ場合、税率はどうなりますか。

A. 税率は、商品を提供した時点で確認した客の意思によって判定します。持ち帰りとして提供した取引は8%で処理するのが基本です。店内で飲食する場合は申し出てもらうよう、レジ付近に掲示しておきましょう。

Q. 新しく開くカフェで、店内を喫煙可にできますか。

A. 店全体を喫煙可能室にできるのは、2020年4月1日時点で営業していた既存特定飲食提供施設だけです。新規開業の店で喫煙を認める場合は、飲食できない喫煙専用室か、加熱式たばこ専用喫煙室を基準どおりに設ける必要があります。

まとめ

カフェの開業は、飲食店営業の許可と食品衛生責任者の設置が基本で、焼き菓子の持ち帰り販売やコーヒー豆の焙煎を始めると追加の許可や届出が必要になることがあります。いずれも自治体で扱いが異なる部分があるため、保健所への事前相談が近道です。

運営面では、テイクアウトの税率判定、2027年4月から予定されている飲食料品1%への対応、受動喫煙の標識、BGMの手続き、アルバイトの深夜割増が主なチェック項目です。開業前にチェックリストで漏れを確認しておきましょう。

出典