株式会社ユニクロは、チャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」の4年間の歩みと成果を紹介するイベントを、シンガポールのホワイトストーン・ギャラリーで開催した。トークセッションと展示を通じて、緊急人道支援、教育・自立支援、地域社会のレジリエンス強化に寄与してきた取り組みを紹介した。
2022年6月のプロジェクト開始以来、寄付総額は35億円を超え、世界累計の販売枚数は約1,184万枚に達している(いずれも2026年8月末時点)。これまでに17カ国で24のプロジェクトを支援し、56組のコラボレーターが参加してきた。
この仕組みで押さえておきたいのが、1枚あたりの寄付額の設計だ。Tシャツの価格は1,500円で、利益の全額を寄付する形を取る。この額は1枚当たり日本における定価の20%相当とされており、1枚300円にあたる。
販売枚数1,184万枚に300円を掛けると約35億5,200万円となり、公表されている寄付総額と一致する。寄付額が販売枚数に比例して積み上がる構造が、数字から確認できる形だ。
1枚あたりの寄付額を定価の比率で固定する形は、集まる金額が販売数で決まることを意味する。目標額を先に決めて集める形ではなく、売れた分だけ寄付が増える構成になる。1枚1,500円という価格は、Tシャツとして手に取りやすい水準だ。
支援の規模を割り算で見ると、35億円を24プロジェクトで分けた場合、1プロジェクトあたりは約1億4,500万円となる。17カ国で24プロジェクトのため、1カ国あたりは1つから2つの計算だ。56組のコラボレーターに対して1,184万枚を割ると、1組あたり約21万枚となる。
新しい取り組みとして、ユニクロ シンガポールがコミュニティ・チェストと連携した支援を開始する。シンガポールで販売される「PEACE FOR ALL」Tシャツ1枚につき、販売価格の20%をコミュニティ・チェストへ寄付する形だ。寄付金は、低所得世帯の子どもたちや、家庭内暴力など困難な環境に置かれている子どもたちを支援する2つのプログラムに充てられる。
寄付先を販売国の団体に設定する構成は、これまでのグローバルな寄付先とは別の形になる。従来の寄付先はUNHCR、セーブ・ザ・チルドレン、プラン・インターナショナル、ディスプレイスメント・フィルム・ファンドといった国際的な団体だ。これに対してコミュニティ・チェストはシンガポール社会福祉協議会の慈善・資金調達部門で、同国内で300を超えるプロジェクトを通じて年間9万4,000人以上に支援を届けている。
同じ商品を売りながら、販売した国の地域支援に回す形は、買う側との距離を変えることになる。国際的な支援は規模が大きい一方、自分の買い物がどこに届くかは見えにくい。販売国内の団体に向かう形であれば、同じ国の課題に充てられることが分かる。
イベントに登壇したファーストリテイリング グループ執行役員サステナビリティ担当の新田幸弘氏は、身近なTシャツを通じて平和のために行動するきっかけを生み出す取り組みだと述べた。コラボレーター、顧客、パートナーと力を合わせて成果を生み出し、前向きな変化を継続的に生む活動へ育てていきたいとしている。一人ひとりの小さな行動も、何百万人へと広がれば社会を変える力になると語った。
特別ゲストとして、俳優・モデルでユニクロ タイのブランドアンバサダーを務めるウッラサヤー・セパーバン氏が登壇した。同氏は2027年にコラボレーターとして加わる予定で、創造性や思いやり、日々の小さな選択の積み重ねが平和につながることについて、自身の経験を交えて語った。
支援先からの発言も紹介されている。セーブ・ザ・チルドレン・タイのコーポレートパートナーシップ&フィランソロピー・マネージャーのエリザベス・ティア氏は、子どもや若者に才能や意欲がないのではなく、足りないのは機会であることが多いと述べた。子どもたちが自らの未来を切り拓くために必要な安全な居場所やスキル、支援を届けることに貢献しているとしている。
新作デザインのTシャツは2026年9月17日に発売した。価格は1,500円で、展開サイズはXSから4XLまでとなる。ただし店舗での展開はSからXLまでで、それ以外のサイズはオンラインストアでの取り扱いとなる。全国のユニクロ店舗とオンラインストアで販売する。
サイズ展開を店舗とオンラインで分ける形は、在庫の配分に関わってくる。XSや2XL以上のサイズは出る数が限られるため、全店に置けば消化できない在庫が分散する。オンラインに集めれば、1か所の在庫で全国の需要に応えられる構成だ。
新作のコラボレーターは建築家の隈研吾氏と藤本壮介氏だ。隈氏は1954年生まれで、1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立し、現在は東京大学特別教授・名誉教授、日本芸術院会員を務める。藤本氏は1971年北海道生まれで、2000年に藤本壮介建築設計事務所を設立し、2025年日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーとして大屋根リングの立案と設計に従事した。