飲食店の原価率は「原価÷売上×100」で計算し、目安は一般に30%前後と言われます。ただし、日本政策金融公庫の調査をもとに計算すると、小規模な飲食店の原価率は業態によっておおむね30〜40%程度の幅があり、すし店のように40%を超える業態もあります。
この記事は、個人経営や小規模チェーンの飲食店オーナー、店長、これから開業する方に向けて書いています。メニューの値付けを見直したい方や、毎月の数字が目安と合っているか確かめたい方にも役立つ内容です。
1品ごとの原価計算と月次の実際原価率の求め方、業態別の平均、ドリンクや看板メニューの考え方、原価率を下げる方法、原材料高のときの価格改定までを、計算例つきで順に解説します。
飲食店の原価率とは?計算方法を確認しましょう
原価率とは、売上に占める食材・飲料の原価の割合です。飲食店では「フード(Food)コスト」とも呼ばれ、人件費と合わせたFLコストの一部として管理します。
基本の計算式は次のとおりです。
原価率(%)=原価÷売上×100
計算するときは、原価も売上も税抜きでそろえるのが基本です。原価率には、メニュー1品ごとに計算する「理論原価率」と、月の仕入れと在庫から計算する「実際原価率」の2種類があり、両方を見ることで管理の精度が上がります。
1品ごとの原価率(理論原価率)の計算
1品の原価は、レシピに使う食材の量と仕入れ単価から積み上げて求めます。調味料や付け合わせ、ご飯、汁物も忘れずに入れます。
| 食材(例:ハンバーグ定食1食分) | 原価 |
|---|---|
| 合いびき肉 | 250円 |
| 玉ねぎ・パン粉・卵 | 30円 |
| デミグラスソース | 30円 |
| 付け合わせ野菜 | 40円 |
| ライス | 45円 |
| みそ汁 | 25円 |
| 合計 | 420円 |
例:販売価格が1,200円(税抜)の場合、原価率は420円÷1,200円×100=35.0%です。数字はすべて説明用の仮定です。
月次の実際原価率の計算
実際にかかった原価は、仕入れた金額そのものではなく、在庫の増減を調整して求めます。
実際原価率(%)=(期首在庫+当月仕入−期末在庫)÷当月売上×100
例:期首在庫40万円、当月仕入280万円、期末在庫50万円、当月売上900万円の店の場合、原価は40万円+280万円−50万円=270万円です。原価率は270万円÷900万円×100=30.0%になります。
理論原価率より実際原価率が高いときは、廃棄、盛りすぎ、まかないへの流用、記録漏れなどのロスが発生している可能性があります。月末の棚卸しを毎月同じ方法で行うことが、正確な実際原価率の前提です。
原価率の目安は30%?業態別の平均を見てみましょう
「原価率30%」は飲食業界でよく使われる目安ですが、公的な基準ではありません。業態や価格帯、提供方法によって適正値は変わります。
参考になるのが、日本政策金融公庫が融資先の小企業(従業者50人未満)の決算データをまとめた「小企業の経営指標調査」です。同調査は売上高総利益率を公表しているため、「100%−売上高総利益率」で売上原価率の目安を計算できます。
| 業種 | 売上高総利益率(平均値) | 原価率の目安(100%−総利益率) |
|---|---|---|
| 一般飲食店 | 65.0% | 35.0% |
| 食堂,レストラン | 64.8% | 35.2% |
| 日本料理店 | 62.0% | 38.0% |
| 西洋料理店 | 66.0% | 34.0% |
| 中華料理店 | 65.0% | 35.0% |
| カレー料理店 | 70.0% | 30.0% |
| そば・うどん店 | 69.4% | 30.6% |
| すし店 | 58.9% | 41.1% |
| ハンバーガー店 | 63.1% | 36.9% |
| 喫茶店 | 71.9% | 28.1% |
| 酒場,ビヤホール | 67.8% | 32.2% |
| スナック | 82.5% | 17.5% |
出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」業種別経営指標(飲食店,宿泊業)。原価率は編集部が「100%−売上高総利益率」で計算したもので、小数第1位まで表示しています。
表を見ると、鮮魚を多く使うすし店や日本料理店は高め、コーヒーなどの飲料が中心の喫茶店や、酒類比率の高いスナックは低めです。決算書上の売上原価には店によって含める範囲の違いがあるため、自店の数字はあくまで「同業と比べて大きくずれていないか」を確かめる材料として使ってください。
メニュー別に原価率はどう考えればよいですか?
原価率は店全体で目標に収まっていればよく、すべてのメニューを同じ率にそろえる必要はありません。原価率の低い商品と高い商品を組み合わせて、全体のバランスを取る考え方が一般的です。
ドリンクは原価率が低くなりやすい
ソフトドリンクやお茶、コーヒー、ハイボールなどは、仕込みの手間が少なく原価率も低くなりやすい商品です。ドリンクの注文が増えるほど、店全体の原価率は下がります。
例:料理の売上600万円・原価率35%(原価210万円)、ドリンクの売上300万円・原価率20%(原価60万円)の店では、全体の原価は270万円です。全体の原価率は270万円÷900万円×100=30.0%になります。
看板メニューは原価率が高めでもよい
来店のきっかけになる看板メニューやランチの主力商品は、原価率を高めにして価値を打ち出す方法もあります。その場合は、サイドメニューやドリンク、セットの追加で利益を補えるかを確認します。
原価率だけでなく、1品あたりの粗利額(販売価格−原価)も見ることが大切です。原価率40%でも粗利額が大きく、よく売れる商品は店の利益に大きく貢献します。
ABC分析でメニューを見直す
ABC分析は、メニューを売上や粗利額の大きい順に並べ、上位からA・B・Cにランク分けする方法です。累計構成比で上位70%程度をA、次の20%程度をB、残りをCとする分け方がよく使われます。
Aランクは品切れを防ぎ品質を保つ商品、Cランクは改善または終売を検討する商品です。出数(注文数)と原価率を組み合わせて見ると、「よく売れるが利益が薄い」商品の値付けやポーションの見直しポイントが見えてきます。
原価率を下げる方法は?
原価率を下げるには、仕入れ、店内オペレーション、メニュー構成の3方向から取り組みます。値上げだけに頼らず、ロスを減らすことから始めると客離れのリスクを抑えられます。
| 方法 | 具体的な取り組み | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕入れの見直し | 複数業者の相見積もり、まとめ買い、規格外品や旬の食材の活用 | 安さだけで選ぶと品質や納品の安定性が下がることがある |
| ロス削減 | 発注量の適正化、先入れ先出し、仕込み量の調整、食材の使い回しメニュー | 廃棄量を記録しないと効果が測れない |
| ポーション管理 | レシピの標準化、計量器・計量スプーンの使用、盛り付け写真の共有 | スタッフごとの盛り量の差を定期的に確認する |
| メニュー構成 | 低原価のドリンク・サイドの提案、セット化、Cランク商品の整理 | メニューを減らしすぎると選ぶ楽しさが損なわれる |
まず理論原価率と実際原価率の差を確認し、差が大きい場合はロスとポーションの管理から手をつけるのが効率的です。差が小さく理論原価率そのものが高い場合は、仕入れ条件やメニュー構成、価格の見直しが必要です。
原材料が値上がりしたら価格改定はどう考える?
原材料費が上がった状態で価格を据え置くと、原価率が上がり利益が減ります。目標原価率から逆算して、必要な販売価格を確認しておきましょう。
必要な販売価格=原価÷目標原価率
例:先ほどのハンバーグ定食の原価420円が10%上がって462円になったとします。価格1,200円のままだと原価率は462円÷1,200円×100=38.5%に上がります。目標原価率35%を保つには、462円÷0.35=1,320円への価格改定が必要です。
一度に大きく値上げしにくい場合は、ポーションや付け合わせの見直し、セット内容の変更などと組み合わせる方法もあります。値上げの際は、店頭やメニューで理由を簡潔に伝えると、お客様の理解を得やすくなります。
仕入れ側でも、取引条件を話し合いやすくする制度が整ってきています。2026年1月1日に下請法を改正した「取適法(中小受託取引適正化法)」が施行され、協議に応じない一方的な代金決定などが禁止されました。食品等の取引の適正化や合理的な費用を考慮した価格形成を目的とする「食料システム法」も、2026年4月1日に全面施行される予定と農林水産省が案内しています。取引先との価格の協議では、コストの根拠を示して話し合う姿勢が大切です。
原価率管理のチェックリスト
- □ 全メニューのレシピと1品ごとの原価を一覧にしている
- □ 仕入れ単価が変わったら原価表を更新している
- □ 毎月同じ日に棚卸しを行い、実際原価率を計算している
- □ 理論原価率と実際原価率の差を毎月確認している
- □ 廃棄量・廃棄理由を記録している
- □ 盛り付け量を計量やレシピで標準化している
- □ ABC分析でメニューごとの出数と粗利額を把握している
- □ 目標原価率から逆算した適正価格を把握している
よくある質問
Q. 飲食店の原価率は30%を超えたら赤字ですか?
A. 30%を超えたからといって、すぐに赤字になるわけではありません。人件費や家賃などほかの経費とのバランスで利益は決まるため、原価率と人件費率を合わせたFL比率もあわせて確認しましょう。
Q. 原価率は税込みと税抜きのどちらで計算しますか?
A. 原価と売上をそろえて税抜きで計算するのが一般的です。片方だけ税込みにすると、実態より原価率が高く、または低く出てしまいます。
Q. まかないの食材は原価に含めますか?
A. 実際原価率の計算では、在庫から使った分が自動的に原価に入ります。売上につながらない分を分けて把握したい場合は、まかないで使った量を記録し、福利厚生費として区分するなど、税理士と相談のうえ一貫したルールで処理してください。
Q. ドリンクの原価率はどのくらいが目安ですか?
A. 業界で一律の基準はありませんが、ドリンクは料理より原価率が低くなりやすいと言われます。自店の各ドリンクの原価を計算し、料理と合わせた全体の原価率が目標に収まるかで判断しましょう。
Q. 原価率はどのくらいの頻度で確認すればよいですか?
A. 実際原価率は月1回の棚卸しに合わせて確認するのが基本です。食材価格の変動が大きい時期は、主要な食材だけでも週ごとに単価と使用量を確認すると、早めに手を打てます。
まとめ
飲食店の原価率は「原価÷売上×100」で計算し、一般に30%前後が目安と言われます。日本政策金融公庫の調査から計算すると、小規模店の原価率は業態により30〜40%程度が中心で、すし店のように40%を超える業態もあります。
1品ごとの理論原価率と、棚卸しにもとづく実際原価率の両方を管理し、差の原因をつぶしていくことが基本です。ドリンクと看板メニューの組み合わせやABC分析で全体のバランスを取り、原材料が上がったときは目標原価率から逆算して価格を見直しましょう。
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