店舗の税務・労務の手続きは、毎年ほぼ同じ時期に同じ締切がやってきます。月ごとの一覧を一度作っておけば、締切の見落としや直前のあわてた作業をかなり減らせます。

この記事は、従業員を雇っている小売店・飲食店のオーナーや、経理・総務を兼ねている店長・事務担当の方に向けたものです。個人事業でも法人でも使えるように、両方の手続きを並べています。

1月から12月までの主な期限を表にまとめ、毎月の定例業務、周期で回ってくる点検や届出、締切が土日に当たったときの扱いを説明します。関連するストアガイドの記事名も添えていますので、詳しい手順はそちらもあわせてご覧ください。

年間カレンダーの前提:締切が休日に当たったら

国税の納期限が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は、その翌日(休日明け)が期限になります。社会保険料の納付期限も、末日が休日なら翌営業日です。地方税の申告(償却資産など)も、土日祝日なら翌開庁日とする自治体が一般的です。

ただし「後ろにずれる」ことを前提に予定を組むと、金融機関の窓口や電子申告システムの混雑に巻き込まれがちです。社内の締切は本来の日付の1週間前に置くのがおすすめです。

以下の表の日付は、毎年の原則的な期限です。その年の曜日で実際の期限が変わることがあるため、毎年カレンダーで確認してください。

月別一覧(1月〜12月)

時期主な手続き提出・納付先関連記事
1月20日源泉所得税の納付(納期の特例:7〜12月分)税務署・金融機関「2026年の年末調整はここが変わる」
1月31日給与所得の源泉徴収票の交付、法定調書・同合計表の提出、給与支払報告書の提出、償却資産の申告、労働者死傷病報告(休業4日未満・10〜12月分)従業員/税務署/市区町村/労働基準監督署「償却資産(固定資産税)の申告とは?」
2月〜3月15日所得税の確定申告(個人事業)、贈与税の申告税務署「個人経営の店の青色申告」
3月31日個人事業者の消費税の確定申告・納付税務署「個人経営の店の青色申告」
3月分〜協会けんぽの保険料率の改定(3月分=4月納付分から)給与計算—
4月1日〜雇用保険料率の改定、36協定の更新(起算日が4月の場合)給与計算/労働基準監督署「36協定と残業の上限規制」
4月末日労働者死傷病報告(休業4日未満・1〜3月分)労働基準監督署—
5月末日3月決算法人の法人税等の申告・納付、自動車税(種別割)の納付(都道府県の定める日)税務署ほか/都道府県—
6月住民税の特別徴収額の切替(6月分から新年度額)給与計算—
6月1日〜7月10日労働保険の年度更新労働基準監督署・金融機関など—
7月1日〜7月10日社会保険の算定基礎届日本年金機構「106万円の壁撤廃」
7月10日源泉所得税の納付(納期の特例:1〜6月分)税務署・金融機関—
7月末日労働者死傷病報告(休業4日未満・4〜6月分)労働基準監督署—
夏季熱中症対策の体制・手順の点検と周知社内「熱中症対策の義務化」
10月地域別最低賃金の改定(都道府県ごとに発効日が異なる)、社会保険の制度変更への対応給与計算「2026年度最低賃金」「106万円の壁撤廃」
10月末日労働者死傷病報告(休業4日未満・7〜9月分)労働基準監督署—
11月〜12月年末調整の準備・実施、償却資産申告と法定調書の準備社内「2026年の年末調整はここが変わる」

法人の確定申告は「事業年度終了日の翌日から2か月以内」が原則です。3月決算なら5月末、12月決算なら2月末が目安になります。

時期ごとのポイント

1月:一年でいちばん締切が集中する月

給与を払っている店舗は、1月末までに源泉徴収票の交付、税務署への法定調書と合計表、市区町村への給与支払報告書を済ませます。同じ1月末が償却資産の申告期限でもあるため、12月のうちに資産の増減を洗い出しておくと楽です。

令和8年分(2027年1月提出分)からは、給与支払報告書を市区町村に提出すると、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなす特例が始まります。従業員への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。

償却資産の免税点は、令和9年度から150万円が180万円に引き上げられると自治体が案内しています。詳しくは「償却資産(固定資産税)の申告とは?」で解説しています。

2〜3月:個人事業の確定申告

個人経営の店は、所得税の確定申告が原則3月15日、消費税(個人事業者)が3月31日です。たとえば令和8年分は、所得税が令和9年3月15日(月)、消費税が令和9年3月31日(水)と国税庁が示しています。

青色申告の決算書づくりは1月から始めると余裕があります。「個人経営の店の青色申告」もあわせてご覧ください。

3〜4月:保険料率の切替

協会けんぽの健康保険料率は、3月分(4月納付分)から新しい率になります。令和8年度は、子ども・子育て支援金(0.23%)が4月分(5月納付分)から加わりました。

雇用保険料率は4月1日から翌年3月31日までの年度単位です。令和8年度の一般の事業は、労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000です。36協定は有効期間が事業場ごとに異なるため、自店の起算日を確認しておきましょう。

6〜7月:年度更新と算定基礎届

労働保険の年度更新は、原則として毎年6月1日から7月10日までです。社会保険の算定基礎届は7月1日から7月10日までで、令和8年度は7月10日(金)が期限でした。

納期の特例を受けている店舗は、1〜6月分の源泉所得税の納付も7月10日です。三つの手続きが同じ週に重なるため、6月中に準備を始めると安心です。

夏:熱中症対策

令和7年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症のおそれがある労働者を早く見つけて対処するための体制整備、手順作成、関係者への周知が事業者に義務付けられました。厨房や屋外の搬入作業がある店舗は、夏前に手順を見直してください。詳しくは「熱中症対策の義務化」で解説しています。

10月:最低賃金と社会保険の変更

令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円で、令和8年10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに順次発効します。発効日をまたぐ給与計算期間がある場合は、日割りで確認が必要です(「2026年度最低賃金」)。

厚生労働省は令和8年10月の主な制度変更として、短時間労働者の社会保険加入の賃金要件(月額8.8万円)の撤廃や、カスタマーハラスメント対策の義務化などを挙げています。パート・アルバイトの加入判定は「106万円の壁撤廃」で整理しています。

11〜12月:年末調整

令和8年度税制改正により、基礎控除の引上げや給与所得控除の最低保障額の引上げ(65万円から74万円)などが令和8年12月1日から施行されます。令和8年分は12月の年末調整で改正後の控除を反映して精算します(「2026年の年末調整はここが変わる」)。

毎月・四半期ごとの定例業務

頻度手続き期限の原則
毎月源泉所得税の納付(原則)給与を支払った月の翌月10日
毎月住民税(特別徴収)の納入徴収した月の翌月10日
毎月健康保険・厚生年金保険料の納付対象月の翌月末日
賞与支給時賞与支払届支給日から5日以内
四半期ごと労働者死傷病報告(休業4日未満)1〜3月分は4月末、4〜6月分は7月末、7〜9月分は10月末、10〜12月分は翌年1月末
発生時労働者死傷病報告(休業4日以上・死亡)遅滞なく

源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の事業者が承認を受けた場合に使えます。特例を受けると、納付は年2回(7月10日と1月20日)にまとまります。

周期で回ってくる点検・届出

消防用設備等は、機器点検を6か月に1回、総合点検を1年に1回行います。点検結果の消防署への報告は、飲食店や物品販売店舗などの特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回です(「防火管理者と消防設備点検」)。

食品衛生責任者の講習や営業許可の更新、HACCPに沿った衛生管理の記録の見直しは、自治体や業種によって周期や扱いが異なります。保健所の案内を確認し、自店の年間予定に書き込んでおきましょう(「HACCPに沿った衛生管理」)。

36協定も、有効期間の終わりが近づいたら締結し直して届け出る必要があります。更新月を年間カレンダーに入れておくと、失効したまま残業させる事態を防げます(「36協定と残業の上限規制」)。

年間スケジュール管理のチェックリスト

  • □ 源泉所得税が「原則(毎月)」か「納期の特例(年2回)」かを確認した
  • □ 1月末の4つの締切(源泉徴収票・法定調書・給与支払報告書・償却資産)の担当を決めた
  • □ 個人事業の場合、確定申告と消費税の申告期限を手帳に入れた
  • □ 協会けんぽ・雇用保険の料率変更を給与ソフトに反映する月を決めた
  • □ 6〜7月の年度更新・算定基礎届・納期の特例の納付を同じ週にまとめて準備した
  • □ 自店の都道府県の最低賃金の発効日を確認した
  • □ 36協定の有効期間の終わりと、消防設備点検の実施月を記入した
  • □ 締切が土日祝日に当たる年は、実際の期限を確認した

よくある質問

Q. 締切が日曜日なら、翌日に出せば間に合いますか。

A. 国税の納期限や社会保険料の納付期限は、休日に当たる場合は翌日(翌営業日)が期限になります。地方税も翌開庁日とする扱いが一般的ですが、自治体の案内で確認してください。

Q. 従業員が数人の店でも年度更新や算定基礎届は必要ですか。

A. 労働者を1人でも雇って労働保険が成立していれば、年度更新は毎年必要です。社会保険の適用事業所であれば、算定基礎届も毎年提出します。

Q. 源泉所得税の納期の特例はどんな店が使えますか。

A. 給与の支給人員が常時10人未満の事業者が、税務署に申請して承認を受けた場合に使えます。人数が常時10人以上になったら届出が必要です。

Q. 個人事業の店でも償却資産の申告は必要ですか。

A. 事業用の償却資産(厨房機器、陳列棚、レジなど)を持っていれば、個人・法人を問わず申告の対象です。課税されるかどうかは免税点との比較で決まります。

まとめ

店舗の法定業務は、1月末、3月中旬〜末、6〜7月、10月、12月に山があります。とくに1月末と7月10日前後は複数の締切が重なるため、前月から準備を始めるのが安全です。

毎月の源泉所得税・住民税・社会保険料の納付と、四半期ごとの労働者死傷病報告も忘れずに組み込みましょう。料率や最低賃金は毎年変わるため、変更月に給与計算の設定を見直す習慣をつけてください。

出典