両立支援等助成金は、従業員が育児や介護と仕事を両立できる職場づくりに取り組んだ事業主を支援する厚生労働省の助成金で、2026年度(令和8年度)は6コースで構成されています。育休を取った人の仕事を同僚が引き受けたときの手当や、代替要員の新規雇用にも助成が出ます。
この記事は、少人数のシフトで店舗を回している小売店・飲食店の経営者や人事担当者に向けた内容です。「1人が休むとシフトが組めない」「代わりの人を雇う余裕がない」という悩みを持つ中小企業ほど、使える場面が多い制度です。
以下では、6コースの概要と支給額、育休中等業務代替支援コースの使い方、シフト制店舗での活用例、申請期限、就業規則と一般事業主行動計画の準備を解説します。金額や要件は2026年4月時点の支給要領に基づきます。申請前には必ず最新のパンフレットを確認してください。
2026年度の6コースと主な支給額
6コースの主な支給額(中小企業事業主の場合)は次のとおりです。加算や細かい要件は後述し、ここでは全体像をつかんでください。
| コース | 主な対象となる取組 | 主な支給額 |
|---|---|---|
| 出生時両立支援コース | 男性従業員の育休取得(第1種)、男性の育休取得率の上昇(第2種) | 第1種:1人目20万円、2人目・3人目各10万円/第2種:60万円 |
| 介護離職防止支援コース | 介護休業の取得・復帰、介護両立支援制度の利用、業務代替、介護休暇の有給化 | 介護休業40万円(連続15日以上は60万円)など |
| 育児休業等支援コース | 連続3か月以上の育休取得と職場復帰 | 育休取得時30万円、職場復帰時30万円 |
| 育休中等業務代替支援コース | 育休・短時間勤務中の業務を同僚が代替(手当支給等)、代替要員の新規雇用 | 手当支給等:手当の4分の3など/新規雇用:9万円〜81万円 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援コース | 育児中の柔軟な働き方の制度を3つ以上導入し、利用させる | 制度利用者1人20万円(4つ以上導入で25万円) |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース | 不妊治療、月経、更年期に対応する支援制度の利用 | それぞれ30万円 |
多くのコースは中小企業事業主が対象です。ただし、育休中等業務代替支援コースの新規雇用は「特定事業主」が対象で、小売業・サービス業なら資本金5,000万円以下または常時雇用する労働者300人以下と定められているなど、コースごとに対象の定義が異なります。自社が該当するかは各コースの支給要領で確認してください。
育休中等業務代替支援コースの使い方
シフト制の店舗で最も使いやすいのが、このコースです。育休や育児のための短時間勤務を取る従業員の業務を、周囲の従業員に代替させて手当を払う「手当支給等」と、代替要員を新規雇用(派遣受入れを含む)する「新規雇用」の2つの方法があります。
手当支給等(同僚が仕事を引き受ける場合)
育休(1か月以上)の場合、業務体制整備経費として6万円(社会保険労務士などに委託した場合は20万円)と、同僚に支払った業務代替手当の4分の3が支給されます。手当分は1か月当たり10万円が上限で、業務代替期間は24か月が上限です。
育児のための短時間勤務の場合は、業務体制整備経費3万円(委託した場合は20万円)と、手当の4分の3(1か月当たり3万円上限、子が3歳に達する月まで)が支給されます。対象労働者が有期雇用の場合は10万円の加算もあります。
手当を支払う前提として、業務の見直し・効率化を行い、代替業務に対応した手当の制度を就業規則などに規定しておく必要があります。
新規雇用(代替要員を雇う場合)
代替要員を新規雇用または派遣で受け入れた場合は、業務代替期間に応じて次の額が支給されます。
| 業務代替期間 | 支給額 |
|---|---|
| 7日以上14日未満 | 9万円 |
| 14日以上1か月未満 | 13万5,000円 |
| 1か月以上3か月未満 | 27万円 |
| 3か月以上6か月未満 | 45万円 |
| 6か月以上1年未満 | 67万5,000円 |
| 1年以上 | 81万円 |
対象人数は、通常の事業主で5年間に延べ10人までです(プラチナくるみん認定事業主は延べ50人)。
試算例
以下は仕組みを理解するための想定例です。中小企業の飲食店で、正社員が6か月の育休を取り、同じ店舗の2人に代替手当を月1万円ずつ(合計月2万円)6か月支払った場合、手当総額は2万円×6か月=12万円です。助成額は12万円×4分の3=9万円で、1か月当たり1万5,000円と上限10万円の範囲内です。
これに業務体制整備経費6万円を加えると、合計15万円になります。なお、支給申請は休業取得時と職場復帰時に分かれるため、実際の支給は2回に分けて行われます。
出生時両立支援・育児休業等支援コースの要件
出生時両立支援コース(男性の育休)
第1種は、男性従業員が子の出生後8週間以内に開始する連続した育休を取った場合の助成です。1人目は連続5日以上(所定労働日が4日以上)、2人目は10日以上、3人目は14日以上の育休が必要で、人数に応じて雇用環境整備の措置を2つ以上〜4つ以上行う必要があります。
支給額は1人目20万円、2人目・3人目は各10万円です。支給要領では、雇用環境整備の措置を4つ以上実施した場合の支給額を30万円とする規定もあります。第2種は、男性の育休取得率が前事業年度から30ポイント以上上がって50%以上になった場合などに60万円が支給されます。
育児休業等支援コース
対象の従業員に連続3か月以上の育休を取得させた場合に30万円、同じ従業員が職場復帰した場合にさらに30万円が支給されます。対象は1事業主当たり有期雇用労働者1人、無期雇用労働者1人の計2人までです。
介護・柔軟な働き方・女性の健康課題のコース
介護離職防止支援コースは、介護休業の取得・復帰で40万円(連続15日以上の休業は60万円)、介護のための両立支援制度の利用で20万円または25万円などが支給されます。介護休業中の業務代替も対象で、新規雇用は20万円(連続15日以上の休業は30万円)、手当支給等は5万円(同10万円)です。
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児中の柔軟な働き方に関する制度を3つ以上導入し、従業員が利用した場合に1人20万円(4つ以上で25万円)が支給されます。対象は1事業主5人までです。
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、不妊治療、月経、更年期のそれぞれについて、休暇などの支援制度を合計5日(回)利用させた場合に各30万円が支給されます。
見落としやすい加算
複数のコースに、育児休業等に関する情報を公表した場合の「情報公表加算」(1事業主当たり2万円、1回限り)があります。介護離職防止支援コースでは、介護休暇を有給化して利用させた場合の30万円(10日以上の有給の休暇とする場合は50万円)や、有期雇用労働者加算10万円も設けられています。
柔軟な働き方選択制度等支援コースにも、制度利用期間延長加算や障害児等要配慮支援加算(いずれも1事業主当たり20万円)があります。加算ごとに要件が細かく決まっているため、本体の申請と同時に該当しないか確認しておくと取りこぼしを防げます。
シフト制店舗での活用例と申請準備
活用の考え方
以下は想定例です。パート中心の小売店で、正社員の副店長が育休を取る場合、残るスタッフにシフトの追加や発注業務を任せ、その分を代替手当として支払えば、手当支給等の対象を検討できます。
繁忙期と重なって人手が足りない場合は、代替要員をアルバイトとして新規雇用する方法もあります。男性スタッフが出産直後に短期の育休を取る場合は、出生時両立支援コースとの組み合わせも考えられます。
就業規則と一般事業主行動計画
育児休業等支援コースや育休中等業務代替支援コースでは、育休制度と育児のための短時間勤務制度を就業規則などに規定し、一般事業主行動計画を策定して労働局に届け出ていることが要件です。行動計画は常時雇用する労働者が101人以上の企業は策定・届出が義務、100人以下の企業は努力義務ですが、助成金を受けるには規模にかかわらず届出が必要になるコースがあります。
育児・介護休業法の改正で就業規則の見直しが必要な場合もあります。改正内容は関連記事「育児・介護休業法改正」も参考にしてください。
主な支給申請期限
| コース・区分 | 支給申請期間 |
|---|---|
| 出生時両立支援(第1種) | 育休終了日の翌日から起算して2か月以内 |
| 育児休業等支援(育休取得時) | 育休開始日から3か月を経過する日の翌日から2か月以内 |
| 育児休業等支援(職場復帰時) | 育休終了日の翌日から6か月を経過する日の翌日から2か月以内 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援 | 制度利用開始日から6か月を経過する日の翌日から2か月以内 |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援 | 制度の利用が合計5日を経過する日の翌日から2か月以内 |
育休中等業務代替支援コースは、手当支給等・新規雇用とも区分ごとに申請時期が定められています。期限を1日でも過ぎると受給できないため、育休の申出を受けた時点でスケジュールを確認しましょう。
申請前チェックリスト
- □ 育休制度と育児のための短時間勤務制度を就業規則に規定している
- □ 一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている
- □ 代替業務に対する手当の制度を就業規則などに規定した
- □ 誰がどの業務を代替するかを記録し、業務の見直し・効率化を行った
- □ 代替手当の支払いを賃金台帳で確認できる
- □ 該当コースの支給申請期間をカレンダーに登録した
よくある質問
Q. 同僚に手当を払う方法と新しく人を雇う方法は、どちらがよいですか。
A. 既存スタッフで業務を回せるなら手当支給等、シフトの穴が埋まらないなら新規雇用が向いています。新規雇用は業務代替期間が長いほど支給額が大きく、1年以上で81万円です。
Q. パート・アルバイトが育休を取った場合も対象になりますか。
A. 対象になり得ます。育休中等業務代替支援コースでは、育休を取る従業員が有期雇用の場合に10万円の加算があります。
Q. 行動計画を届け出ていなくても申請できますか。
A. 育児休業等支援コースや育休中等業務代替支援コースなどでは、行動計画の届出が要件で、申請時に計画が有効である必要があります。100人以下の企業でも事前に届け出ておきましょう。
まとめ
両立支援等助成金の6コースは、男性の育休、育休からの復帰、介護休業、柔軟な働き方、女性の健康課題、そして育休中の業務代替まで幅広くカバーしています。シフト制の店舗では、同僚への代替手当や代替要員の雇用に助成が出る育休中等業務代替支援コースが特に役立ちます。
受給には、就業規則の整備、行動計画の届出、期限内の申請が欠かせません。最新のパンフレットと支給要領を確認し、不明点は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。