年末調整は、10〜11月に申告書を配って回収し、12月の最後の給与で1年分の所得税を精算し、翌年2月1日までに源泉徴収票と給与支払報告書を出す、という流れで進めます。2026年分は基礎控除や給与所得控除の引上げが12月の年末調整で初めて反映されるため、例年以上に早めの準備が必要です。
この記事は、パート・アルバイトの多い小売・外食の小規模チェーンで、本部や店舗の給与担当を兼ねている方向けです。初めて担当する方でも、国税庁の「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」の資料と照らし合わせながら作業できるよう整理しました。
対象者の判定、書類の配布と回収、途中入社・退職者とパートの扱い、2026年の改正点、計算と過不足精算、源泉徴収票と給与支払報告書の提出、よくあるミスの順に解説します。
年末調整のスケジュール全体像
2026年分の主な期限は次のとおりです。2027年1月31日が日曜日のため、源泉徴収票の交付や給与支払報告書の提出期限は2027年2月1日になっています。
| 時期 | やること | メモ |
|---|---|---|
| 10月 | 対象者リストの作成、申告書の配布、年調ソフトの準備 | 国税庁の年調ソフト(令和8年分)の正式版は10月1日公開 |
| 11月 | 申告書の回収・内容確認、控除証明書の確認 | 11月までの毎月の源泉徴収は改正前のまま |
| 12月 | 年末調整の計算、最後の給与で過不足精算 | 改正は12月1日施行。改正後の控除で計算する |
| 2027年1月12日まで | 年末調整分を含む源泉所得税の納付 | 納期の特例を受けている場合は1月20日まで |
| 2027年2月1日まで | 源泉徴収票の交付、市区町村への給与支払報告書の提出 | 2027年1月1日以後に給与支払報告書を出せば、税務署への源泉徴収票の提出は不要(みなし提出) |
ステップ1:対象者を確認する
対象になる人
年末調整の対象は、原則として勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」を年末調整の日までに提出している人です。1年を通じて勤務している人と、年の途中で入社して年末まで勤務している人が該当し、パート・アルバイトも条件は同じです。
年の途中で退職した人は原則として対象外ですが、死亡退職、12月に支給される給与を受けた後の退職、パートタイマーなどで本年中の給与総額が136万円以下の人(退職後に年内に他から給与を受ける見込みがある人を除く)などは対象になります。
対象にならない人
- 1年間の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
- 2か所以上から給与を受けていて、他の勤務先に扶養控除等申告書を出している人(乙欄適用者)
- 年末調整までに扶養控除等申告書を提出していない人
- 非居住者、日雇労働者など丙欄が適用される人
- 年の途中で退職し、上記の例外に当たらない人
掛け持ちのアルバイトは、自店が「乙欄」なら自店では年末調整をしません。給与計算ソフトの税区分(甲欄・乙欄)と、申告書の提出状況が一致しているかを10月中に確認しておきます。
ステップ2:10〜11月に書類を配布・回収する
配布する申告書
| 書類名(令和8年分) | 対象者 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 全員(年初に提出済みなら異動の有無を確認) | 扶養親族の変更、所得要件改正で新たに対象となる親族の追加 |
| 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 | 基礎控除を受ける人(実務上ほぼ全員) | 本人の合計所得金額の見積額、配偶者・19〜22歳の親族の所得 |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料・地震保険料・国民年金保険料などを支払った人 | 控除証明書の添付 |
| 住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除の2年目以降の人 | 税務署から届いた申告書と金融機関の残高証明書 |
あわせて、2027年1月以後の給与計算に使う「令和9年分扶養控除等(異動)申告書」も回収します。国税庁の様式ページには令和9年分の様式と簡易対応様式が掲載されています。
回収のコツ
パート・アルバイトの多い店舗では、店長経由で配布し、締切を本部の締切より1週間ほど早めに設定すると回収漏れを減らせます。提出がないと年末調整ができず、本人が確定申告をする必要があることも配布時に伝えます。
国税庁の年調ソフトは、スマートフォンやパソコンで申告書を作成でき、マイナポータル連携で控除証明書のデータを取り込むこともできます。書面と電子を混在させる場合は、どちらで出すかを従業員ごとに一覧で管理します。
ステップ3:途中入社・退職者とパートの扱い
年の途中で入社した人
今年、前の勤務先から給与を受けていた人は、前職分の給与と源泉徴収税額も合算して年末調整します。入社時に前職の源泉徴収票を提出してもらい、届いていなければ11月中に催促します。
年の途中で退職した人
対象外の退職者には、退職日以後1か月以内に源泉徴収票を交付します。2026年中の給与が30万円以下の退職者は、給与支払報告書や税務署提出用の源泉徴収票の提出範囲から外れますが、本人への交付は必要です。
パート・アルバイト
扶養控除等申告書を出している甲欄の人は、短時間勤務でも年末調整の対象です。年収が少なく毎月の源泉徴収がゼロの人も、申告書の回収と年末調整の計算は同じように行います。
ステップ4:2026年の改正点を押さえて計算・精算する
2026年分の主な改正点
令和8年度税制改正により、基礎控除の引上げ(合計所得金額132万円以下で104万円など)、給与所得控除の最低保障額の引上げ(65万円から74万円)、扶養親族等の所得要件の引上げ(合計所得金額58万円以下から62万円以下)などが行われました。改正は2026年12月1日施行で、2026年分の所得税から適用されます。
11月までの毎月の源泉徴収には変更がなく、12月の年末調整で改正後の基礎控除と「令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年分を計算し、精算します。23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例も新しく設けられました。
なお、毎月の「源泉徴収税額表」の改正は2027年1月1日以後に支払う給与からです。給与ソフトの税額表を1月支給分から切り替える準備も必要です。
計算の手順
- 各申告書の控除額を源泉徴収簿に転記する
- 1年間の給与総額(年内に支給日が来た未払給与を含む)と源泉徴収税額、社会保険料を集計する
- 令和8年分の表で給与所得控除後の給与等の金額を求める
- 所得控除の合計を差し引き、課税給与所得金額(1,000円未満切捨て)を出す
- 速算表で算出所得税額を出し、住宅ローン控除を差し引いて102.1%を掛け、100円未満を切り捨てて年調年税額を出す
- 毎月源泉徴収した税額の合計と比べて過不足を出す
過不足の精算
精算は、年末調整を行う月(通常は12月)の給与で行います。取りすぎ(過納額)は、その月に納める源泉徴収税額から差し引いて本人に還付し、足りなければ翌月以降の納付分から順次充当します。
不足額はその月の給与から徴収し、引ききれない分は翌月以降の給与から徴収します。一定の条件を満たす場合は、翌年1月と2月に分けて徴収することもできます。12月1日より前に最後の給与を支払った人は改正後の控除で精算できないため、本人に確定申告が必要になる場合があると伝えます。
ステップ5:源泉徴収票と給与支払報告書を出す
年末調整が終わったら、源泉徴収簿をもとに源泉徴収票と給与支払報告書を作成します。源泉徴収票は2027年2月1日までに全受給者に交付し、給与支払報告書は同日までに従業員の住所地の市区町村へ提出します。
2027年1月1日以後に市区町村へ給与支払報告書を提出した場合、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされます(みなし提出の特例)。給与支払報告書をeLTAXで提出すると、各市区町村へ自動で振り分けられます。法定調書合計表の作り方は、関連記事「法定調書合計表と給与支払報告書の出し方」で詳しく解説しています。
年末調整で精算した税額は、2027年1月12日(納期の特例を受けている場合は1月20日)までに納付します。納付税額がゼロでも所得税徴収高計算書(納付書)の提出が必要です。
よくあるミスとチェックリスト
国税庁の「年末調整チェック表(源泉徴収義務者用)」には、誤りやすい点がまとめられています。2026年分で特に注意したいのは、改正前の表や控除額をそのまま使ってしまうミスです。
- □ 扶養控除等申告書の提出漏れ・異動申告漏れがないか
- □ 所得要件の改正で新たに扶養の対象となる親族を確認したか
- □ 基礎控除額を本人の合計所得金額に応じて改正後の金額で計算したか
- □ 配偶者や特定親族の給与所得を改正後の給与所得控除額で計算したか
- □ 改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使ったか
- □ 臨時給与や年内に支払が確定した未払給与を集計に含めたか
- □ 途中入社者の前職分の給与・税額を合算したか
- □ 生命保険料控除で、23歳未満の扶養親族の有無に応じた計算をしたか
- □ 課税給与所得金額の1,000円未満、年調年税額の100円未満を切り捨てたか
- □ 給与ソフトの源泉徴収税額表を2027年1月支給分から切り替える準備をしたか
よくある質問
Q. 11月中に年末調整の計算を済ませてもよいですか。
A. 申告書の提出は12月1日前から受け付けて差し支えないとされていますが、改正は12月1日施行のため、計算と精算は12月1日以後に支払う最後の給与で行います。国税庁の年調ソフトも12月1日以後の年末調整に対応したものです。
Q. 扶養控除等申告書を出していないアルバイトはどうなりますか。
A. 年末調整の対象外となり、本人が確定申告をして精算することになります。乙欄で源泉徴収した源泉徴収票を交付します。
Q. 掛け持ちのアルバイトはどちらで年末調整しますか。
A. 扶養控除等申告書を提出している勤務先(甲欄の勤務先)で年末調整を行います。もう一方の勤務先は乙欄となり、年末調整はしません。
Q. 年末調整の後、12月中に扶養親族が増えました。
A. 12月31日までに控除対象扶養親族が増減した場合は、年末調整をやり直せます。人数が増えた場合は、源泉徴収票を作成・交付する日までに扶養控除等(異動)申告書を提出してもらいます。やり直さない場合は、本人が確定申告をすれば還付を受けられます。
まとめ
年末調整は、10月に対象者を確定して申告書を配り、11月に回収・確認し、12月の最後の給与で精算、2027年2月1日までに源泉徴収票と給与支払報告書を出すという順で進めます。2026年分は基礎控除・給与所得控除の引上げと扶養親族等の所得要件の改正が12月に反映されるため、改正後の表と控除額を使うことが最大のポイントです。
改正の詳細は関連記事「2026年の年末調整はここが変わる」、提出書類の詳細は「法定調書合計表と給与支払報告書の出し方」もあわせて確認してください。
出典
- 年末調整がよくわかるページ(令和8年分)(国税庁)
- 令和8年分年末調整のしかた(手順などの説明)(国税庁)
- 源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和8年分)(国税庁)
- No.2665 年末調整の対象となる人(国税庁)
- 令和8年分 年末調整のしかた「年末調整とは」(国税庁)
- 令和8年分 年末調整のしかた「昨年と比べて変わった点」(国税庁)
- 令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A(国税庁)
- 各種様式・記載例(年末調整)(国税庁)
- 年末調整チェック表(源泉徴収義務者用)(国税庁)
- 年末調整手続の電子化に向けた取組について(国税庁)
- No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき(国税庁)
- 源泉徴収票のみなし提出の特例(国税庁)