居酒屋・バーを開業・運営するときは、保健所の飲食店営業許可に加えて、深夜0時以降にお酒を出すなら警察への「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要になり、客の隣に座って談笑するような「接待」をするなら風営法の許可が別に必要です。どの手続きが必要かは「何時まで」「何を出すか」「どう接客するか」で決まります。

この記事は、これから居酒屋・バー・スナック形態の店を開く方や、営業時間の延長や業態変更を考えている経営者の方に向けたものです。すでに営業している店で、ルールを一度整理しておきたい店長の方にも役立つ内容です。

営業許可と届出の区分、風営法の「接待」の考え方、20歳未満への酒類提供の禁止、受動喫煙、酒類の持ち帰り販売、飲酒運転への関与、深夜割増などの労務まで、居酒屋・バーにかかわる主な法律を順に説明します。

居酒屋・バーに必要な許可・届出の全体像

まず押さえたいのは、「許可」と「届出」は窓口も性質も違うという点です。飲食店営業許可は保健所、深夜酒類提供飲食店営業の届出と風俗営業の許可は警察署が窓口です。

手続き必要になる場面窓口ポイント
飲食店営業許可店内で調理・飲食をさせるすべての店保健所施設基準を満たし、食品衛生責任者を置く
深夜における酒類提供飲食店営業の届出深夜(午前0時〜午前6時)に、主食を常態として出さずに酒類を提供する店営業所を管轄する警察署(公安委員会あて)営業開始日の10日前までに届出。住居系の地域では営業できない
風俗営業(1号営業)の許可客の「接待」をして飲食させる店営業所を管轄する警察署(公安委員会あて)許可制。原則として深夜(0時〜6時)は営業できない
酒類販売業免許酒類を持ち帰り用に販売する場合所轄の税務署店内で飲ませる提供とは別の扱い

深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業(接待をする営業)は、同じ店で同時に行うことはできない関係にあると整理されることが多いため、どちらで営業するかを開業前に決めておくことが大切です。具体的な判断は所轄警察署の生活安全課に相談してください。

深夜0時以降にお酒を出すなら「深夜酒類提供飲食店営業」の届出

対象になる店

警視庁の業種一覧では、深夜における酒類提供飲食店営業を「バー、酒場等、深夜(午前0時から午前6時)において、設備を設けて客に酒類を提供して営む飲食店営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)」と説明しています。0時を過ぎても営業するバーや居酒屋は、多くがこれに当たります。

「主食を出しているから届出は不要」と考える店もありますが、判断は厳格です。警察庁の解釈運用基準(令和8年7月1日付け通達)では、営業時間中は常に主食を提供していることや、客が飲食している時間の大部分で主食を提供していることが必要とされ、最後に茶漬けを出す程度では該当しないとしています。主食の例として、米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、めん類、ピザパイ、お好み焼きなどが挙げられています。

届出の期限・書類・場所の制限

愛知県警察の案内では、営業を開始しようとする日の10日前までに、営業所を管轄する警察署へ営業開始届出書を出すとしています。添付書類は、営業の方法を記載した書面、営業所の平面図、住民票の写し(本籍または国籍の記載があるもの)、法人の場合は定款・登記事項証明書・役員の住民票の写しなどです。

また、同じ案内では第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域では営業できないとされています。物件を契約する前に、用途地域を必ず確認してください。

構造・営業方法のルール

高知県警察の届出の手引きでは、客室が複数ある場合は1室の床面積を9.5平方メートル以上とすること、客室に見通しを妨げる設備を置かないこと、営業所内の照度を20ルクス以下にしないことなどが示されています。深夜に客に遊興をさせないこと、従業者名簿を備えることも求められます。

「接待」をすると風営法の許可が必要

キャバクラなどに限らず、ガールズバーやスナックのような小規模な店でも、接客のしかたによっては風営法の「接待」に当たります。接待をして飲食させる営業は風俗営業(1号営業)となり、公安委員会の許可が必要です。

警察庁の解釈基準による「接待」の例

警察庁の解釈運用基準では、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。具体的な線引きは次のとおりです。

場面接待に当たる例接待に当たらない例
談笑・お酌特定少数の客の近くに継続してはべり、談笑の相手となるお酌や水割りを作ってすぐにその場を立ち去る
カウンターカウンター越しでも、特定の客と継続して談笑の相手をする場合は上の「談笑」に当たり得るため注意カウンター内で注文に応じて酒類を出すだけ
ショー・歌特定少数の客に、専用の客室などでショーや歌舞音曲を見せ、聴かせる不特定多数の客に同時に見せるディナーショー
遊戯・ゲーム特定少数の客と一緒に遊戯・ゲーム・競技を行う客一人、または客同士だけで遊ばせる

ガールズバーのようにカウンター越しの接客を基本とする店でも、特定の客と継続して談笑する営業実態があれば、無許可営業と判断されるおそれがあります。従業員への接客マニュアルで「してよいこと・いけないこと」を明確にしておきましょう。

風俗営業の主な制限

風俗営業は、原則として深夜(午前0時〜午前6時)の営業ができず、例外は都道府県の条例で定められます。また、18歳未満の者に客の接待をさせること、18歳未満の者を客として立ち入らせること、20歳未満の者に酒類やたばこを提供することなどが禁止されています。許可には人的な欠格事由や、病院・学校周辺などの場所の制限もあるため、物件選びの段階から確認が必要です。

20歳未満への酒類提供の禁止と年齢確認

二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律は、20歳未満の者が飲むことを知りながら酒類を販売・供与することを禁じています。さらに、酒類を販売・供与する営業者には「年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置」を講じることが求められています。

違反した場合は50万円以下の罰金が定められており、従業員が業務として違反したときは、行為者だけでなく事業者(法人・個人事業主)も同じく罰金の対象になります。「アルバイトがやったこと」では済まない点に注意してください。

店でできる年齢確認の方法

  • 若く見える客には、運転免許証・マイナンバーカードなど写真付きの公的書類で生年月日を確認する
  • グループ客は、お酒を注文する全員を確認対象にする(1人だけ確認して終わりにしない)
  • メニューや入口に「20歳未満の方への酒類提供はいたしません」と掲示する
  • 確認を断られたら提供しない、という店のルールを全員で共有する

受動喫煙・持ち帰り販売・飲酒運転・客引き

受動喫煙対策とシガーバー

改正健康増進法は2020年4月に全面施行され、飲食店は原則として屋内禁煙です。厚生労働省の受動喫煙対策サイトでは、たばこの対面販売(出張販売を含む)を行い、喫煙場所の提供を主な目的とするバー・スナック等は「喫煙目的施設」として、基準を満たした喫煙目的室を設けられるとしています。

ただし、喫煙目的室で提供できる飲食は主食を除くものに限られ、20歳未満の者は従業員であっても喫煙エリアに立ち入れません。喫煙できる施設は定められた標識の掲示が義務で、違反の内容により施設の管理権原者に最大50万円の過料が科されることがあります。

お酒の持ち帰り販売には免許が必要

店内で飲ませるための提供と、瓶や容器に入れて持ち帰り用に売る「販売」は扱いが異なります。国税庁は、一般酒類小売業免許を受けずに酒類を販売すると罰則の対象になると注意しています。テイクアウトでお酒を売りたい場合は、事前に所轄税務署の酒類指導官に相談してください。

飲酒運転を助長しない

道路交通法では、運転するおそれのある人に酒類を提供することも処罰の対象です。警視庁によると、酒類を提供した者の罰則は、運転者が酒酔い運転の場合で3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、酒気帯び運転の場合で2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。車で来た客には提供しない、ハンドルキーパーを確認するなどの運用を決めておきましょう。

客引きと条例

繁華街を中心に、多くの自治体が客引き行為を規制する条例を設けています。対象となる行為や区域、罰則は自治体ごとに異なるため、出店する地域の条例を確認し、外部の客引き業者に依頼しないことが基本です。

価格設定と労務:酒税一本化・深夜割増・カスハラ

2026年10月1日に、ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税が350ml換算で54.25円に一本化されました。仕入れ価格の変化を確認し、生ビールやハイボールなど主力メニューの原価率を見直すタイミングです。

深夜営業では人件費にも注意が必要です。労働基準法では、午後10時から午前5時までの労働に通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払う必要があり、アルバイトも対象です。また2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主の義務となっており、酔客による暴言・暴力への対応手順や相談窓口を整えておくことが求められます。

開業前・運営中のチェックリスト

  • □ 保健所の飲食店営業許可を取得し、食品衛生責任者を置いた
  • □ 0時以降に酒類を提供するか決め、必要なら開始10日前までに警察署へ届け出た
  • □ 物件の用途地域が深夜酒類提供飲食店営業のできる地域か確認した
  • □ 接客方法が「接待」に当たらないか、マニュアルで線引きした
  • □ 20歳未満への酒類提供を防ぐ年齢確認のルールを全従業員と共有した
  • □ 喫煙の可否を決め、必要な標識を掲示した
  • □ 持ち帰り販売をする場合は酒類販売業免許の要否を税務署に確認した
  • □ 車で来店した客への提供をしない運用を決めた
  • □ 深夜割増を含めた給与計算になっているか確認した
  • □ カスハラ対応の手順と相談窓口を整えた

よくある質問

Q. 居酒屋で0時以降も営業しますが、定食も出しています。届出は必要ですか?

A. 営業時間中は常に主食を出し、客の飲食時間の大部分で主食を提供している「営業の常態」がある場合は届出の対象外とされます。深夜帯は酒とつまみが中心になる店は届出が必要になる可能性が高いため、所轄警察署に相談してください。

Q. カウンター越しに常連客と話すのは「接待」になりますか?

A. カウンター内で注文に応じて酒を出すだけなら接待に当たらないとされています。一方、特定少数の客の近くに継続してはべり談笑の相手をする場合は接待に当たるとされており、実態で判断されます。

Q. 年齢確認を断られたらどうすればよいですか?

A. 確認できない場合は酒類を提供しないのが基本です。営業者には年齢確認などの措置を講じる義務があり、違反すれば事業者も罰金の対象になります。

Q. 深夜酒類提供飲食店の届出に手数料はかかりますか?

A. 届出の手続きや必要書類は都道府県警察ごとに案内されています。手数料の有無も含め、営業所を管轄する警察署で事前に確認してください。

まとめ

居酒屋・バーは、保健所の営業許可に加え、深夜0時以降の酒類提供なら警察への届出、接待をするなら風営法の許可が必要です。どちらで営業するかは、営業時間と接客方法で決まります。

20歳未満への提供禁止、受動喫煙、持ち帰り販売の免許、飲酒運転への関与は、違反すると店の存続にかかわります。開業前にチェックリストで確認し、迷ったら警察署・保健所・税務署に早めに相談しましょう。

出典