株式会社地球Laboは、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社が事業主体を務める地域共創プロジェクト「食とわ」が2026年度グッドデザイン賞を受賞したと発表した。主催は公益財団法人日本デザイン振興会だ。2026年10月31日から11月4日に開催される「GOOD DESIGN EXHIBITION 2026」で展示される。
「食とわ」は大阪・兵庫で展開するプロジェクトで、食を入口に、資源がめぐる「環」、人がつながる「輪」、食を語り合う「話」の3つの「わ」を地域に育てることを目的としている。食品ロスや資源循環の課題に、地域の生活者とともに取り組む内容だ。
このプロジェクトで押さえておきたいのが、参加の入口の置き方だ。知識や意識の高さを前提とせず、「楽しそう」という気持ちから参加してもらうことを重視している。食品ロスの削減は、食との関係が深まった結果として生まれるものと位置づけている。
審査委員の評価でも、この点が挙げられている。食品ロスや資源循環を掲げながら、課題に正面から向き合う姿勢を意図的に避け、「楽しそう」を入口にした設計が評価されたとしている。
課題を前面に出さない構成は、参加する層の幅に関わってくる。環境の取り組みを「正しさ」で訴える形であれば、既に関心のある人には伝わる一方、そうでない人には届きにくい。入口を楽しさに置けば、関心の有無を問わず参加の余地が生まれる。売場での環境訴求にも同じ構造があり、表示を増やしても手に取る理由にならない場面がある。
地球Laboの上野晴人代表はコメントのなかで、「環境のために、何かを我慢する」のではなく、「なんだか楽しそう」という気持ちから自然に行動が生まれることを大切にしていると述べている。
プロジェクトは3つの柱で構成されている。「食とわコンポストチャレンジ」は家庭の生ごみを約3週間かけて堆肥にする体験型プログラム、「食とわクッキング」は家庭や店で余った食材を持ち寄ってその場で即興調理する体験、「食とわパーク」はいつもの食を別の視点で見直す「まなび」と「あそび」の場だ。
実績も示されている。コンポストチャレンジは2022年10月から2026年4月までに計11回実施し、延べ約800世帯・約2,300人が参加した。生ごみの累計堆肥化量は約2.8tだ(いずれもH2O調べ)。
数字を割り算で見ると、約800世帯で約2,300人のため1世帯あたり約2.9人になる。堆肥化量2.8tを800世帯で割れば1世帯あたり約3.5kgで、11回で800世帯のため1回あたり約73世帯の計算だ。実施の間隔は、約3年半で11回のため平均して約4か月に1回となる。
1世帯あたり3.5kgという数量は、約3週間のプログラムで出る生ごみの範囲にあたる。一度に大量を処理する形ではなく、家庭で出る分を回す構成になる。
堆肥の活用先も具体的に挙げられている。五月山動物園(池田市)の野菜、能勢電鉄・絹延橋駅ホームの在来種野菜、宝塚市のイチゴ栽培に使われている。
できた堆肥の行き先を示す形は、循環が閉じていることを確認できる構成だ。生ごみを堆肥にする段階で終われば、その後どうなったかは参加者に分からない。使われた場所が示されれば、自分が出した分がどこに回ったかが追える。鉄道の駅のホームや動物園という場所であれば、参加者が実際に見に行ける範囲にもなる。
参画する団体は、自治体、鉄道会社、農家、大学など21団体(2026年10月時点)だ。前身となる地域実践は、環境省「食品廃棄ゼロエリア創出モデル事業」に2022年から4年連続で採択されている。
各社の役割も分かれている。H2Oが事業主体として場と仕組みをつくり、地域パートナーとの連携を担う。地球Laboがコンポストチャレンジの企画・運営、資源循環の実践、コミュニティづくりを手がける。honshokuがコンセプト設計、編集、クリエイティブディレクションを担当し、フードサルベージが持ち寄り食材で料理する場づくりを行う。
役割を分けて組む構成は、小売企業が単独で担う形との違いになる。場と仕組みは事業主体が用意する一方、運営やコンセプトの設計は専門の事業者が担う。審査委員は、企画にとどまらず多様な地域関係者や組織を巻き込み、参加者の主体的な動きが生まれている点、主客の関係ではなく共創という円環の関係を目指している点も評価したとしている。